JUDOsスタッフが町道場を訪ねる「Visit Dojo」。少しごぶさたしていましたが、事業は継続中です!ということで、第6回目となる今回は2026年9月12日、神奈川県立武道館を中心に活動するNPO法人JUDO YOKOHAMA 土曜柔道会 に、平沼大和(稽古参加担当)と川戸円(撮影担当)がおじゃましてきました。

神奈川県立武道館前にが練習拠点です

この日は練習が始まる前に、土曜柔道会代表の布田英嗣先生、副代表の冨田昌義先生、高橋緑先生から、道場の成り立ちや活動への思い、現在の取り組みについてお話を伺いました
誰もが柔道を続けられる場所を
土曜柔道会の歩みは、約50年前にさかのぼります。神奈川県出身の田畑晏孝先生が、柔道を愛する仲間たちに声をかけ、関内の横浜公園にあった旧神奈川県立武道館で活動を始めたのがその原点です。1982年、武道館が現在の岸根公園へ移転した後も、土曜柔道会は毎週末の稽古を途切れることなく続けてきました。
2020年7月には、現在代表を務める布田英嗣先生ら新たな世代が活動を引き継ぎました。「長年大切にされてきた柔道の場を、もっと『誰もが参加できる場所』として継続していきたい。そして、個人の力だけに頼るのではなく、しっかりとした基盤をつくり、活動を続けていきたい」。その思いを形にするため、2023年4月、土曜柔道会はNPO法人として新たな一歩を踏み出しました。
現在、メンバー登録をしている人は150名以上。練習参加は自由で、「都合のよいときに来てください」というスタイルで運営されています。年齢、性別、国籍、所属、経験を問わず、誰もが参加できる開かれた道場です。

礼の際には師範側には誰も座らず、指導者も参加者も全員が下座に並んで礼をします。これは田畑先生の時代から続いているそうです
実際に道場を見渡すと、柔道衣のゼッケンに書かれている所属先は「土曜柔道会」だけではありません。さまざまな道場や所属の柔道家が、それぞれの都合に合わせて土曜日に集まり、一緒に汗を流していました。
また、横浜という土地柄もあり、さまざまな国籍の人が参加していることも印象的でした。
社会人が参加しやすい土曜日の夜
練習は毎週土曜日の夜。仕事をしている大人たちが参加しやすいように、この時間帯に練習を行っているそうです。
学生時代に柔道をしていたものの、社会人になって練習する場所がなくなった人、平日は仕事で稽古に参加することが難しい人、久しぶりに柔道を再開したい方などにとって、「土曜日に行けば柔道ができる」という環境は、とても貴重です。
参加費は、大人が1回300円、6回分の回数券は1,500円、高校生以下は1回100円。毎週必ず参加する必要はなく、それぞれの生活やペースに合わせて柔道を続けられる仕組みがつくられています。
それぞれの目的に合わせて柔道を楽しむ
土曜柔道会が大切にしているのは、参加者一人ひとりの自主性と「安心安全にスポーツを楽しめること」です。
練習内容も一律ではなく、乱取りを行う人、形を練習する人など、それぞれが自分の目的や希望に合わせて練習しています。

IDの選手も練習に参加

形の練習をする人も
年齢や体力、柔道をする目的も人それぞれ。自分に合ったペースや内容で柔道を楽しめることも、さまざまな人が集まる土曜柔道会ならではの魅力です。
誰もが安心して稽古に参加できるよう、細やかな配慮もされています。
例えば、女子柔道家に対しては、男性側から乱取りなどの練習に誘うことは控え、女子柔道家が練習したい相手に自分から声を掛けるようにしているそうです。休憩も各自、取りたいときに無理せずにとることになっていて、心身に負担のない、安心して稽古できる環境づくりが行われています。
柔道を通じて広がるつながり
横浜で暮らすさまざまな国籍の柔道家に加え、海外から日本を訪れた柔道家も練習に参加しています。また、近隣の道場をはじめ、さまざまな形でつながりを持った道場との継続的な交流もあり、所属の垣根を越えて柔道家が集っています。JUDOsが訪れた日は、愛知・名古屋アジア大会のため来日していた台湾柔道チームのリウ・ウェンダン監督も、プライベートで練習に参加していました。
ホームページを通じて活動を知り、「日本を訪れるので練習に参加したい」と海外から直接連絡が届くこともあるそうです。ホームページには海外からの参加者向けに英語の申請フォームも用意されており、海外の柔道家を受け入れる環境も整えられています。
所属する道場も、年齢も、国籍もさまざま。それでも柔道衣を着て畳の上に上がれば、一緒に稽古を楽しむことができます。
こうしたつながりは、日々の稽古だけにとどまりません。土曜柔道会には、大阪の「修道館クラブ」、香港の「講友館」、上海の「龍心館」という兄弟道場があり、国内外の道場との交流を続けています。
また、丸の内柔道倶楽部、横浜税関、日本マスターズ柔道協会などとは、長年にわたり毎年必ず一回は合同稽古と懇親会を開催。所属の垣根を越え、柔道を通じた交流を深めています。
土曜柔道会では、柔道衣のリサイクルを通じて、カンボジア、スリランカ、ベトナムなどへの海外支援にも取り組んでいます。柔道を通じて生まれたつながりは、道場の外、そして海外へと広がっています。リサイクル柔道衣の活動では、JUDOsの柔道衣を海外へ運んでいただくなど、寄贈事業に継続的にご協力いただいている横浜国立大学の「柔友会」ともつながりがあることが分かり、思わぬところでJUDOsとのご縁を感じることとなりました。
「柔道をしたい」と思ったときに行ける場所
何歳になっても、仕事をしながらでも、所属する道場が違っても、「柔道をしたい」と思ったときに行ける場所がある。そこに行けば一緒に柔道を楽しめる仲間がいる。
土曜柔道会は、それぞれの生活に合わせながら柔道を続けたい人、もう一度柔道を始めたい人、そして日本で柔道を楽しみたい海外の柔道家など、多様な人たちを温かく受け入れる場所となっていました。
練習に参加したJUDOsスタッフ平沼大和の感想

練習後に布田先生(中央)と記念撮影(平沼は左)
今回、土曜柔道会を訪問してまず感じたのは、横浜という土地と、この柔道会の雰囲気が非常によく合っているということでした。
横浜は港町として、昔からさまざまな国の人や文化が入り、交わってきた場所です。実際に土曜柔道会の方々からお話を伺っていると、年齢や国籍、所属に関係なく柔道をしたい人を受け入れており、非常に国際色豊かなコミュニティが形成されていることが印象に残りました。SNSを通じて海外から直接参加を希望する柔道家も多く、柔道そのものが人と人をつなぐ共通言語になっているように感じました。
また、活動場所である神奈川県立武道館も非常に印象的でした。建物そのものに日本の武道文化を感じられる雰囲気があり、海外から柔道家を受け入れる場としても魅力があります。海外の方々が単に柔道の稽古をするだけではなく、日本の武道文化や道場の空気そのものを体験するという意味でも、JUDOsが主催している国際コーチングセミナーなどとの親和性が高い場所だと感じました。
土曜柔道会については、「柔道クラブ」というよりも「柔道コミュニティ」という表現の方が近いように思います。前身となる活動を長年続けてこられた田畑先生の理念を受け継ぎながら、現在も「柔道をしたい人が集まり、それぞれの目的やペースで柔道を続ける場所」が維持されています。「来る者は拒まず、去る者は追わず」という考え方や、参加者の自主性を尊重する運営にも、その姿勢が表れていました。
特に印象に残ったのが、参加者の年齢層の幅広さです。60代、70代、さらには80代の方々まで、柔道を見るだけではなく、実際に柔道衣を着て打ち込みや乱取りをしていました。その姿は、まさに「生涯柔道」を体現しているように感じました。競技として結果を追い求める柔道だけではなく、それぞれの年齢や体力に合わせながら、長く柔道と関わり続ける姿を実際に見ることができたことは、今回の訪問で最も印象に残ったことの一つです。
練習内容自体は非常にシンプルで、ウォーミングアップの後に寝技の乱取り、立ち技の打ち込み、そして乱取りという流れでした。しかし、そのシンプルさの中に、参加者が自分の体調や目的に合わせて無理なく参加できる余白がありました。「安全第一」という方針のもと、誰かに強制されて練習するのではなく、自分自身の意思で柔道を楽しむ環境がつくられていることが、この柔道会が長く続いている理由の一つなのではないかと思います。
また、国内外の道場との交流や、柔道衣のリサイクルを通じた海外支援など、活動が道場の中だけで完結していない点も興味深く感じました。柔道を「競技」としてだけ捉えるのではなく、人と人、地域と地域、そして国と国をつなぐものとして活用している点は、JUDOsが目指している活動とも共通する部分が多いように思います。
今回の訪問を通じて、「柔道を続けられる場所がある」ということ自体に大きな価値があることを改めて感じました。強くなることや大会で勝つことだけではなく、柔道をしたいと思った人が、年齢や国籍、所属に関係なく道場に来て、誰かと組み、汗を流し、交流する。そのような柔道のあり方も、日本の柔道が持つ大切な一つの姿なのだと思います。
練習前のお忙しい時間にもかかわらず、活動についてたくさんのお話を聞かせてくださった布田先生、冨田先生、高橋先生をはじめ、土曜柔道会の皆さま、ありがとうございました。
・道場名/特定非営利活動法人JUDO YOKOHAMA
・代表者/布田 英嗣
・練習場所/神奈川県立武道館
・ホームページ/https://doyojudo.net
・設立/2023年4月
・練習日/土曜日18:30 – 20:00
・参加費/ 大人:300円、高校生以下:100円
(2026年9月現在)

