JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。
東南アジアのインドシナ半島に位置するラオス人民民主共和国でJICA青年海外協力隊として活動をしている菊地友輝さんからの報告です。
サバイディー柔道物語!No.15
JUDOsのホームページをご覧の皆さん、サバイディー!(ラオス語で「こんにちは!」)
みなさん、JICA海外協力隊ラオス柔道チームコーチの菊地です。今回で サバイディ柔道物語も第15号になりました!ラオスは雨季も終わりを感じさせる気候になり、暑すぎず清々しい天気が続いています。旅行する時期にはもってこいの時期ですね。11月から1月頃までがベストで、おすすめです!
今回のサバイディ柔道物語は、約1ヶ月間にわたる「日本強化合宿」から「アジア競技大会」までの怒涛の日々を、ラオスチームの奮闘記としてお届けします!約2年と3か月振りの日本!正直、嬉しいよりも選手たちの引率に不安や心配の方が大きかった…。日本合宿での期待と不安、選手が初日にケガ!?そして大会の心境、ラオスにホームシック?といろいろと書かせていただきました。菊地ワールド全開なので?お気軽にこんな感じだったんだね~と読んでいただくと幸いです(笑)。
天理から神戸、そしてアジア大会へ!ラオス柔道チームの熱い夏
■ いざ天理へ!もみくちゃになりながら掴んだ手応え・・
今回の合宿のスタートは、柔道王国の聖地・奈良県の天理大学&天理高校! 約3週間、最高峰の環境で稽古をさせていただきました。天理大学さんの選手たちの圧倒的なスピード、技のキレ、そして練習量と……ラオスのみんなにとっては、見るもの触れるものすべてがカルチャーショックの連続です。私も驚いていたことはラオスの選手たちには内緒です…。
そこで、練習初日、学生さんから「選手がケガをしました」と。え?!しかも、今回、同じくアジア大会に向けて練習参加しているフィリピンチームも練習に参加していて、大会前の練習で、不運にも乱取り中に足を負傷してしまいました。私も現役の頃は何故か初日か最終日にケガをしやすく、柔道家あるある?なので事前に「気を付けてね」とゴリ推ししていましたが、乱取の2~3本目で負傷してしまいました。幸い、骨折などの大きなケガではなく、固定などの応急処置を行い、その日は安静にしました。次の日からは固定をして練習に参加したいとのことで励んでいました。大きなケガじゃなくて良かった。
他の選手たちも連日のハードな練習で、筋肉痛と疲労で全身ボロボロ(笑)。それから小さなケガや体調の変化もありましたが、「最後までやり抜くぞ!」とお互い声を掛け合いながら食らいついていきました。
特に成果を感じたのが「スタミナ」です。最初はレベルの高い練習量にヘロヘロだった選手たちが、合宿後半には練習やトレーニングに耐えられるようになり、声を掛け合いながら、自然と自信を深めていく姿が本当に頼もしかったです。
数々のオリンピック選手や日本代表選手を輩出している、そんな聖域のような場所で質の高い練習を経験できたことは、一生の思い出です(私も含めて笑)。しかし、ただの思い出としてならないように、これからも一生懸命に柔道に励むこと、そして、この経験を糧に自分たち、選手たちが主体となってラオス柔道の発展につなげていかなくてはなりません。今回の合宿で私も学ぶことがたくさんあって、選手たちにも伝えていきたいと思いました。

天理大学山本監督と。「アジア大会頑張ってください。」と激励をいただきました

フィリピンのCrashナショナルチームと
■ 神戸・あこう堂!柔道を超えた「格闘技の技術」に開眼・・
天理での激しい稽古を乗り越えたあとは、神戸の「あこう堂」へ拠点を移動しました。ここでは柔道だけでなく、ロシア流サンボの先生、柔術に特化した先生たちからの熱血指導や、投技・打撃・寝技が融合した空道(大道塾)の練習にも参加させていただきました。
さらには地元の彩星工科高校や、あの嘉納治五郎師範が創設した名門・灘中学校での出稽古まで! 「技の入り方」「崩し」「相手との距離感」「身体の使い方」 柔道とは一味違う格闘技の視点に触れることで、選手たちの目がキラキラ輝いていたのが印象的でした。ラオス国内の練習では絶対に味わえないこの刺激と経験、まさにプライスレス?ですね!格闘技好き、格闘技を経験したい方にはまさにこの場所はとても良い環境ですね。宣伝!?(笑)一味違う、異なった競技によっても、体験を経て何か収穫できると踏み今回の合宿に入れていただきました。

サンボの体験!サンボの先生、あこう堂関係者の皆さんと

山トレーニング!

彩星工科学校と地域の道場の皆さんと

灘中高一貫校へ
■ アジア大会本番!世界の壁は厚く、そして高かった…

迎えた、本番の愛知・名古屋アジア競技大会(Aichi-Nagoya Asian Games)。
結果からお伝えすると、全員初戦敗退という非常に悔しい結果になりました。勝たせてやれなかったコーチの責任です。
選手たちの試合を見ての感想としては
・組み手の立ち上がりは良かったものの、相手の確実な組手と展開の早さに押される。
・組み際の相手のスピードが2〜3倍速く、自分の柔道をさせてもらえなかった。直前の体調不良が悔やまれる…。
・元世界王者に挑戦!恐怖心ゼロで果敢に挑み、ラオスチームの中で一番「自分の柔道」を表現してくれました。ナイスファイト!
・相手の圧力に姿勢が崩れ、そのまま寝技へ持ち込まれる。
世界トップレベルの「初動の速さ」「組手の攻防」「展開力」を痛感させられた試合となりました。悔しいですが、これが今の私たちの現在地です。試合の中で、漫画の柔道部物語のような、組んだ瞬間相手が大きく感じたことでしょう。え?終わったの・・?という表情からは私も経験がありますので、気持ちが伝わるというか。
勝負の世界では勝ち負けというものが存在する限り、これは仕方のないことで終わってしまわないように、まず話す。選手と何が原因かどんな対策をすればいいかと話して、気持ちの整理もしていく。これで終わり―。ではないようにしたい。選手1人1人柔道スタイルも違えば性格も違います。この大会で感じたこと全部ではないですが、今まで大会のサポートや帯同、普段の生活を選手たちと一緒にしていたからこそ、選手たちには感謝しています。これからも選手の道筋を作れるような指導をしていきたいと再認識しました。

大会の様子

終了後のごはん
■ 最後に
今回の合宿およびアジア競技大会への参加を通じて、多くの課題と収穫を得ることができました。特に、国内で同じ相手とばかり練習することには限界があり、競技力向上のためには定期的な海外合宿や海外チームをラオスへ招いての合同練習が必要不可欠であることを改めて実感しました。
ラオス柔道は東南アジアの中でもまだ発展途上の段階にありますが、選手たちは私の提案する合宿や練習、トレーニングに最後まで取り組み、よくついてきてくれたと思います。技術面だけでなく、生活面や練習に向き合う姿勢にも成長が見られました。
また、私自身も今回の活動を通じて、柔道指導だけでなく、練習スケジュールの調整、学校や施設との連絡、電車やバスの手配、宿泊予約、金銭管理、選手のケガの対応や生活サポートなど、多くの業務を経験することができました。決して簡単な道のりではありませんでしたが、一つひとつやり切ることができたと感じています。

この経験は、私自身が今後コーチとして成長していく上で大きな財産になるはずです。そして、今回得られた経験と学びを次世代の選手たちへ繋げていきたいと思います。
私のラオスでの海外協力隊生活も残りわずかとなりました。限られた時間ではありますが、少しでも多くのことを選手たちに伝え、今後のラオス柔道の発展に貢献していければと思っています。
温かく迎え入れてくださった天理大学柔道部・天理高校柔道部の皆様、あこう堂の皆様、関係者の皆様、そして日頃より温かく見守り応援してくださっているNPO法人 JUDOsの皆様に心より感謝申し上げます。
私と同様に、日本合宿に参加した選手たちも、この経験を自分たちだけのものにするのではなく、次世代の選手たちへ伝承していくことが大切だと考えています。一歩ずつではありますが、これからも前へ進んでいきます。ラオス柔道チームの挑戦はまだまだこれからです。
引き続き、ラオス柔道への温かいご支援、ご声援をよろしくお願いいたします。
こぷちゃい。(ありがとうございました)
ぽっかんまい。(また会いましょう)
JUDOsでは海外で柔道指導をしている方々の活動記を紹介しています。興味のある方は事務局までご連絡ください。

