みなさん、こんにちは。平沼大和です。
「畳のソト。」も今回で第3回目となりました。
前回は、私とJUDOsとの出会いや、ミャンマーで活動していた頃に受けた支援、そしてオンラインカフェについて振り返りました。
今回は、最近の自分自身の変化と、JUDOsのスタッフとして参加した活動について書いてみたいと思います。
今年8月からJUDOsのメンバーとして活動を始め、全日本小学生育成プロジェクト、みんなでチャレンジアカデミー、そして「NPO法人JUDO YOKOHAMA 土曜柔道会」へのVisit Dojoと、いくつかの活動に参加させていただきました。
その活動を紹介する前に、少し今の自分と柔道との関わり方について触れたいと思います。
第1章 自分と柔道との距離
自分と柔道との距離
最近、柔道衣を着る機会がめっきり減りました。
以前は毎日のように道場へ行き、選手たちと一緒に柔道をしていました。練習メニューを考え、技術を教え、時には自分自身も選手と組み合う。柔道衣を着て畳の上で一日の大半を過ごすことが、当たり前の日常でした。
もちろん、柔道を教えることだけが仕事だったわけではありません。道場の運営や選手の生活、練習環境の整備など、畳の外で考えなければならないこともたくさんありました。それでも、毎日のように柔道衣を着て、選手たちと直接関わる時間がありました。
写真1 練習中の様子

しかし、日本に帰国してからは、そんな日常が大きく変わりました。
これまでのように選手と一緒に汗を流す時間よりも、資料を作成したり、情報を収集・分析したり、競技団体や大会運営に関わる方々と仕事をしたりする時間が増えました。同じように柔道やスポーツに関わっているとはいえ、自分自身が柔道衣を着て畳に上がる機会は、以前と比べてかなり少なくなったと思います。
その変化を特に実感するのが、久しぶりに柔道をしたときです。以前なら自然に反応できていた場面で、身体が一瞬遅れるような感覚があったり、相手の柔道衣を握ると指が痛くなったりします。自分ではそこまで変わっていないつもりでも、実際に柔道をしてみると、普段から畳に上がっているかどうかで身体の感覚はずいぶん違うものだと気づかされます。
正直なところ、少し寂しさもあります。ただ、現場から少し離れたことで、これまでとは違った視点から柔道やスポーツを考える機会が増えたことも事実です。
さまざまな競技に関わる中で感じるのは、同じスポーツでも、選手の育成環境や競技ごとの文化、組織の運営方法などがそれぞれ異なるということです。そうした違いを知ったうえで改めて柔道を見ると、これまで当たり前だと思っていたことが、必ずしもそうではないと気づくことがあります。柔道の良さを再確認することもあれば、もっと工夫できるのではないかと考えることもあり、今までとは少し違う角度から柔道を見るようになりました。
一方で、こうして畳の外から柔道を考える時間が増えるほど、現場から離れすぎてしまうことへの不安もあります。実際に柔道をしている人たちが何を感じ、何を考えているのか。自分自身が畳に立つ機会が減っていく中で、そうした現場の感覚を忘れたくないという思いもあります。
そんな中、JUDOsの活動を通じて、再び子どもたちや地域の柔道家の皆さんと直接関わる機会をいただきました。
ここからは、最近参加した3つの活動について紹介したいと思います。
写真2 愛知・名古屋アジア競技大会 柔道競技の会場
第2章 全日本小学生育成プロジェクト2026
横浜武道館で開催された「全日本小学生育成プロジェクト2026」に、JUDOsのサポートスタッフとして参加しました。
このプロジェクトは、全国の小学生を対象に、柔道を通じた交流や学びの機会をつくる取り組みです。当日は東海大学柔道部の学生やJUDOsのスタッフも参加し、私もその一員として運営のお手伝いをさせていただきました。
これまでの私は、選手として大会に出場したり、指導者として選手を大会に送り出したりすることがほとんどでした。そのため、今回のようにイベントを運営する側として参加するのは、これまでとはまた違った経験でした。
実際に運営に携わってみると、こうしたイベントは、畳の上で直接指導する方々だけでなく、会場の準備や進行、子どもたちのサポートなど、さまざまな役割を担う人たちによって成り立っていることを改めて感じました。
振り返ってみれば、ミャンマーで道場を運営していた頃も、自分一人ではできないことがたくさんあり、周囲の方々に支えていただく場面が何度もありました。立場や活動する場所は違っても、柔道をする機会や環境をつくり、それを継続していくためには、多くの人の協力が欠かせないのだと思います。
JUDOsのスタッフとしての活動はまだ始まったばかりで、慣れないこともありますが、今回のような経験を重ねながら、少しずつ自分にできることを増やしていければと思っています。
写真3 全日本小学生育成プロジェクト2026 
第3章 みんなでチャレンジアカデミー
続いて参加したのが、神奈川県厚木市の荻野運動公園で開催された「みんなでチャレンジアカデミー」です。
このイベントは、親子でさまざまなスポーツを楽しむことを目的としたもので、JUDOsからも東海大学柔道部の学生やスタッフが参加しました。柔道のプログラムでは、角田夏実さんや廣瀬順子さん、東海大学の学生の皆さんと一緒に活動させていただき、私は主に小学校低学年までの子どもたちを担当しました。
ミャンマーではナショナルチームの選手を中心に指導していましたが、現地で子どもたちに柔道を教える機会もありました。ただ、代表選手の競技力を高めることと、小さな子どもたちに柔道の楽しさを知ってもらうこととでは、当然ながら目的も関わり方も違います。
競技力を高めるためには技術を身につけることが大切ですが、今回のようなイベントでは、まず身体を動かすことや、友達と一緒に何かに挑戦することを楽しんでもらいたいと思いました。特に年齢の低い子どもたちには、技術を教えること以上に、どうすれば興味を持ってもらえるのか、どうすれば楽しんでもらえるのかを考えながら接することが大切なのだと感じました。
また、今回のイベントでは、大学時代に一緒に練習していた方と久しぶりに再会することもできました。当時はそれほど接点があったわけではありませんが、何年か経った今、こうして同じ柔道のイベントで再会できたことは、何だか嬉しい出来事でした。
大学時代には同じ畳の上で練習していた人たちが、今はそれぞれ違う場所で、違う立場から柔道に関わっている。柔道を続けていると、思いがけないところで人とのつながりを感じることがあります。
今回の活動は、子どもたちと一緒に柔道を楽しみながら、そうした人とのつながりも改めて感じられる、とても楽しい時間となりました。
写真4 みんなでチャレンジアカデミーの集合写真

写真5 角田夏実さん、廣瀬順子さん、東海大学の学生の皆さんと集合写真

第4章 Visit Dojo ~横浜土曜柔道会~
JUDOsの「Visit Dojo」の活動として、NPO法人JUDO YOKOHAMAが運営する土曜柔道会を訪問しました。
Visit Dojoは、JUDOsのスタッフが地域の道場を訪問し、それぞれの活動や特色を紹介する取り組みです。今回が企画としては6回目の訪問となりますが、私自身にとっては初めての参加でした。
土曜柔道会は、神奈川県立武道館を中心に活動している柔道団体で、年齢や性別、国籍、所属などに関係なく、誰もがそれぞれの目的やペースで柔道を楽しめる場所です。
実際に訪問して驚いたのは、参加されている方々の年齢層の広さでした。60代、70代、さらには80代の方まで柔道衣を着て、打ち込みや乱取りをされていました。参加する目的もさまざまで、大会で勝つことを目標にしている方もいれば、健康のために身体を動かしたい方、仕事の合間に週末の柔道を楽しみにしている方もいます。
これまでの私は、競技者として、またナショナルチームの指導者として、どうすれば強くなれるのか、どうすれば試合に勝てるのかということを中心に柔道と関わってきました。もちろん、柔道の楽しみ方はそれだけではないと分かっていたつもりですが、実際に幅広い年代の方々がそれぞれのペースで稽古を楽しんでいる姿を見ると、改めて柔道にはいろいろな関わり方があるのだと感じました。
特に、80代になっても柔道衣を着て畳に立ち、仲間と一緒に汗を流している姿は印象に残っています。年齢を重ねても、こうして柔道を楽しみ続けられるというのは、とても素敵なことだと思います。
また、さまざまな国籍の柔道家が一緒に稽古をしていたことも印象的でした。以前、カナダやミャンマーで柔道をしていたときにも感じたことですが、所属する道場や国籍、話す言葉が違っても、柔道という共通点があれば自然とつながることができます。今回も、そんな柔道の魅力を改めて感じる機会になりました。
そして、もう一つ考えさせられたのが、社会人になってからも柔道を続けられる環境についてです。
土曜柔道会では、平日に仕事をしている方々も参加しやすいように、土曜日の夜に稽古が行われています。学生や選手のように毎日練習することは難しくても、週に一度、柔道衣を持って道場へ行き、仲間と汗を流すことはできるかもしれません。最近は柔道衣を着る機会が減ったと冒頭で書きましたが、今回の訪問を通じて、今の自分にもこうした柔道との関わり方があるのだと気づかされました。
柔道を始めるきっかけをつくることはもちろん大切ですが、それと同じくらい、柔道を続けたいと思ったときに、いつでも戻ってこられる場所があることも大切なのではないでしょうか。
今回の土曜柔道会への訪問は、そんなことを改めて考える機会になりました。
写真6 横浜土曜柔道会での練習の様子

おわりに
今回は、最近の自分と柔道との距離について、そしてJUDOsのスタッフとして参加した3つの活動について振り返ってみました。
改めて考えてみると、今回の3つの活動は、どれも少しずつ違った形で柔道と関わるものでした。
全日本小学生育成プロジェクトでは、これからの柔道を担う子どもたちの活動を支えること。
みんなでチャレンジアカデミーでは、小さな子どもたちに柔道や身体を動かす楽しさを伝えること。
そしてVisit Dojoでは、年齢や国籍、所属を問わず、柔道を楽しみ続けている人たちと出会うことができました。
これまで自分が関わってきた競技者や指導者としての柔道とは、また少し違った柔道の姿を見ることができたように思います。
柔道衣を着る機会が減ったことには、今でも少し寂しさがあります。
だからといって、以前のように毎日道場に通う生活に戻りたいのかと言われると、必ずしもそういうわけではありません。
今は今で、柔道やスポーツをこれまでとは違う立場から見ることができ、学ぶこともたくさんあります。
ただ、今回の活動を通じて、改めて感じたのは、やはり自分自身も畳の上に立ち続けていたいということです。
柔道の外側から考えることと、実際に柔道衣を着て畳に立つこと。
どちらか一つではなく、これからはその両方を大切にしていきたいと思っています。
「畳のソト。」というタイトルで活動報告を書いていますが、畳のソトばかりにいるのではなく、時には畳のウチに戻って、自分自身も柔道を楽しむ。そんな関わり方を、これからも続けていければと思います。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
平沼大和(ひらぬまやまと)
1997年、北海道生まれ。中央大学商学部会計学科卒業。在学中は体育連盟柔道部に所属した。卒業後、実業団柔道選手としてスポーツひのまるキッズ協会に所属したのち、カナダ柔道連盟ナショナルチームのアシスタントコーチを務める。2023年から2025年まで、ミャンマー柔道連盟ナショナルチーム代表監督として、代表選手の強化と柔道の普及活動に取り組んだ。2026年より、認定NPO法人JUDOsのメンバーとして活動するとともに、日本オリンピック委員会の情報科学スタッフを務めている。

