岩本莉樹・海外からの指導便りNo.4【ホンジュラス🇭🇳】

JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。

今回は、2025年3月まで東海大学柔道部の国際交流担当としてJUDOsの活動に携わり、大学卒業後も「国際コーチングセミナー2025」のアシスタントコーチを務めてくださった岩本莉樹さんによる第4弾です。今回は、ホンジュラスをお届けします!


JUDOsホームページをご覧の皆様、ブエノスディアス(こんにちは)!

岩本莉樹です。

私は現在JICA海外協力隊2025年度3次隊として、バヌアツ共和国🇻🇺へ派遣されております。

今回は昨年の11月にJUDOsの指導者派遣事業として中村美里先生のアシスタントとして帯同させていただいた、中米のホンジュラスでの記録をお伝えいたします!

ホンジュラス柔道記🇭🇳

はじめに

ホンジュラス派遣のお話をいただいたのが2025年の7月末でバングラデシュで指導をしていた頃でした。ホンジュラスという国の名前を聞いて、聞き馴染みはなかったものの、当日中に「行かせてください」と返事をさせていただきました。

派遣のお話が進んで、ホンジュラスがどんな国なのかを少しずつ調べていくうちに、「世界一危険な国」という見出しの記事を発見したりと、治安の面でかなり不安を覚えました。当時、1年後にバヌアツ派遣が決まっていた私ですが、もともとのJICA協力隊の派遣希望先が中南米の国だったこともあり、不安よりも自分の興味の方が強かったため挑戦してみようという気持ちになりました。

ホンジュラスの概要

はじめにホンジュラスの概要について少し紹介します!

ホンジュラスは中米に位置しており、北はカリブ海、南は太平洋に面しています。人口は約1000万人で、首都はテグシガルパという都市です。言語はスペイン語が公用語となっています。

ホンジュラスの国旗です!

ホンジュラス国内では、麻薬取引や反社会的な犯罪グループの暗躍により、特に若年層においてマラス(Maras)と呼ばれるギャング集団による恐喝・麻薬取引が社会問題となっています。

2009年からJICAと国家警察の取り組みによって、殺人発生率は2011年のピーク時(10万人あたり86.5件)の半分以下まで現在は減少し、治安状況は改善傾向にあります。それでも、放課後行き場のない青少年がマラスと接触し犯罪に手を染めてしまうなどという状況は引き続き社会的な課題となっており、若者の健全な成長や犯罪防止の観点から、若年層に対する啓発は非常に重要なものです。

今回の派遣は「青少年の未来を拓く柔道普及」という名目で実施されたものであり、上記の社会的な課題の解決を目的とした要請内容でした!

活動

成田空港を出発し、約12時間のフライトを経て経由地であるアメリカのヒューストンで一泊し、そこからホンジュラスのテグシガルパへ約3時間かけて到着しました。

滞在期間中は治安状況を考慮し、徒歩移動は禁止、全てJICAホンジュラスの車での移動でした。

渡航期間11/4 ~ 11/14のうち、ホンジュラスでの8日間の滞在で、以下の7カ所での活動を行いました。

・小学校 2カ所
・警察大学
・農業学校
・ナショナルチーム
・ジャパンカップ
・日本文化紹介イベント

小学校

小学校では両校とも外(バスケットコート?)に畳を敷いて活動していました。

先生方のそれまでの素晴らしい指導もあり、子どもたちの運動能力が高く、柔道の動きなど基礎が想定以上にできていると感じました。基本的な技の指導を中村先生が行い、そのサポートを担当させていただきました。

指導が進み、子どもたちが上手くできた際にスペイン語での褒め言葉で(ムイ・ビエン(いいね!))と子どもたちに声をかけてあげると、とても嬉しそうな顔をしていたのがとても印象に残っています。

子どもたちの体格や技術的なレベルはそれぞれ個人差がありつつも、みんなが楽しく柔道に取り組んでいたことがとても嬉しい気持ちになりました。

休憩中やレッスンの前後で柔道をしていない学校の生徒らとも少し話す機会があり、「どこから来たの?」「その服かっこいい」など通訳を通してスペイン語でたくさん話しかけてきてくれました。

2カ所目に訪れた学校では新たな道場が建設されている最中で、ホンジュラスの柔道が前に進んでいる様子を身近に感じることができました。

警察大学

ここでは2時間のレッスンを日を分けて2回実施しました。基本的な技の指導に加えて身体のバランスや筋力を向上させる補強運動を中村先生が実施されていました。

これから警察官になる学生らはみんなとても真面目な印象を受けました。

初めて見る柔道の新しい技を習得しようと繰り返し打ち込み、動作を確認しているのを見て、前のめりな姿勢が素晴らしいと感じました。

この学校では畳はなく、ジョイントマットを敷いて稽古をしていました。屋根はあるものの風や日差しは中に入り込むためマットは劣化が進んでおり、足の裏が真っ青になりました。

今までにない体験だったので柔道ができる環境が整っていることは当たり前ではないことを改めて実感しました。

農業学校

こちらの学校では約2時間のレッスンが実施されました。

冒頭の式典では、まさか自分にマイクが回ってくるとは思っておらず、いきなりの出来事でとても緊張しました😅

技の指導のサポートに加えて、乱取り稽古にも参加させていただきました!

ここは以前まで道場がなく学校の敷地内の芝生の上で柔道をしていたというお話を聞き、衝撃を受けました。

この芝生の上で投げ込みもしていたそうです😮

現在は一面ほどの大きさのマットがあり、教室を利用して稽古をしていました。

柔道衣は昨年寄贈されたものがちらほら見受けられ、生徒らへ貸し出すような形で使用しているようでした。

学校の食堂で食事をしました。がっつり炭水化物でしたが美味しかったです!

ナショナルチーム

1時間半のレッスンの中で中村先生の技術指導があり、私も少しだけ技の披露と指導をさせていただきました。


内股の指導にも慣れて板についてきたと思います!

また、これまで様々な場所での指導はほとんど一人だったので、通訳のスタッフがついての指導は新鮮でとてもワクワクするものでした。

乱取り稽古にも参加し、代表選手らと汗を流しました!

参加していた選手は約40人で、キューバ人である監督のオスカル・ブライソン氏が指導をしています。聞くところによると、ほとんどの選手は仕事終わりに稽古に参加しており、柔道の選手としてだけで生活しているわけではありません。

若く優秀な選手であっても、経済的な理由でナショナルチームの練習に継続的に参加することができない選手もいました。

そんな中でも、選手らは貪欲に技術を身につけようと中村先生に釘付けな様子でした。

ジャパンカップ

滞在期間中には、男子3名・女子3名の各チーム計6名による混合団体戦が開催されました!

午前中は中村先生による技の講習会と、乱取り稽古中心の合同練習がありました。

午後からは団体戦があり、私はとあるチームの中量級枠として大会に参加させていただきました。

チームとしての結果は準優勝で、個人成績は2戦2勝でした!

日本人以外とチームを組むという初めての経験でしたが、チームの中での雰囲気がとても良くて参加して良かったなと思いました。


入賞したチームにはそれぞれメダルと副賞である柔道衣が贈られました!

この柔道衣はJUDOsからの寄付として準備されたものであり、手荷物での運搬となりました。

柔道衣の梱包作業は学生の頃から微力ながらお手伝いさせていただいていましたが、今回は自分自身の手で運び、贈呈するところまで初めて携わらせていただきました。

日本では実感しづらかった受け手の反応を目の前で見ることができ、改めてリサイクル柔道衣プロジェクトの素晴らしさを感じることができました。

今後も機会があればまたお手伝いして行きたいです!

日本文化紹介イベント

JICAホンジュラス主催の日本文化紹介イベント柔道部門で、デモンストレーションをさせていただきました!

礼法や受け身、投げ技などの柔道の魅力をホンジュラスの皆さんに感じてもらえたのではないかと思います。

柔道の他には折り紙、書道、空手、弓道など様々なワークショップが実施され、参加していたホンジュラス人もアニメのコスプレをしていたり、日本文化が地球の裏側まで届いていることにとても驚き嬉しい気持ちになりました!

終わりに

渡航前は「犯罪に巻き込まれたらどうしよう」「怖い人たちばかりなんじゃないか」など過去の殺人発生率のデータを見てとても心配をしていました。しかし渡航中はその心配がなかったかのように、危ない場面に出くわすことは一度もありませんでした。

マラス(ギャング集団)によって国内の平和が脅かされたり、抗争に巻き込まれ命を落とした人も多くいます。殺人発生率のデータとして治安が悪いことが示されていると、そこに住む人達まで悪い人たちなのではないかと心のどこかで思ってしまっていました。

しかしそれは大間違いで、ホンジュラスJICA関係者の皆さんはもちろん、柔道連盟関係者、ホンジュラスに住む一般市民のほとんどは当然、平和な社会を望んでいるし、誰もが安全に暮らしたいと願っているのだということを感じることができました。

滞在期間中に危険な目に遭わなかったのも、JICA関係者の皆さんのご協力の上であることは重々承知しています。おかげさまで、柔道以外にも食事や観光などの時間も安全に過ごすことができました。

 

夜も外を出歩けることや、柔道に全力で迷いなく取り組めること、また安心して取り組める環境があることは決して当たり前ではないのだな、と滞在している中で何度も感じました。

日本にいたら頭で分かってはいても、感じることができない「当たり前」を痛感しました。

今回ともにホンジュラスでの活動、柔道衣の運搬にご協力していただいた中村先生、この活動を企画し招待してくださったJICAホンジュラスの横尾さんをはじめとする関係者の皆様、大変貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。

10日間を通じて、これから2年間海外協力隊で国際協力で携わっていく準備として、これ以上ない体験をすることができました。

またこれからのホンジュラス柔道界の発展を心より願っております!