みなさん、こんにちは。平沼大和です。
以前から活動報告(めんでん柔道記)をご覧いただいていた方は、お久しぶりです。
私は2023年から2025年まで、ミャンマー柔道連盟ナショナルチームの代表監督を務めていました。そしてこのたび、2026年8月から認定特定非営利活動法人JUDOsのメンバーとして活動させていただくことになりました。
それに際して、ミャンマー滞在中に書いていた「めんでん柔道記」の続きのような形で、新たに「畳のソト。」というタイトルで、これからの活動や、その中で感じたことを文章として残していく機会をいただきました。
「めんでん柔道記」では、ミャンマーでの柔道指導や普及活動、現地での出来事、そして日々の活動を通して自分自身が感じたことや考えたことを発信してきました。
今回の「畳のソト。」も、単に活動したことを報告するだけではなく、その活動を通して何を感じ、何を考えたのかまで含めて、自分なりの言葉で残していければと思っています。
今回はその第1回目です。
まずは、なぜもう一度こうして文章を残していこうと思ったのか。そして、「畳のソト。」という名前にどのような意味を込めたのか。そこからお話ししていきたいと思います。

写真 1 ミャンマーの子供たちが相撲を取っている様子
第1章 なぜもう一度書くのか
ミャンマーで活動していた時には、その時々にどんなことがあったのか、柔道の普及・発展に向けてどんなことをしてきたのかを「めんでん柔道記」という形で自分の言葉にして残してきました。
今振り返ってみても、ミャンマーでやってきたことを文章として形に残しておいて、本当に良かったと思っています。
その理由の一つは、後から自分自身で振り返ることができるからです。
人の記憶というのは、どうしても時間が経つにつれて曖昧になっていきます。
でも文章として残しておけば、「こんなことがあったな」「あの時はこんなことを考えていたな」と、その時に感じていたことや考えていたことまで振り返ることができます。
出来事だけではなく、その時の自分の感情や考えを文字として残しておける。
これは、文章だからこそできることなのかなと思います。
そして、日本に帰ってきてから、もう一つ驚いた出来事がありました。
私は帰国後、父が経営しているコンビニの手伝いをすることがあります。
そこである日、常連のお客様から突然、
「めんでん柔道記、見ていますよ」
と声をかけていただきました。正直、とても驚きました。
その方は柔道とは全く関係のない方ですし、そもそも私がミャンマーで活動していたことを知っているのかどうかも分からないくらいの方でした。それでも、何かのきっかけで私の活動を調べて、文章を読んでくださっていたのだと思います。
自分が思っている以上に、発信したものは誰かに見てもらえているんだなと感じましたし、「書いていて良かったな」と思えた出来事でした。
さらに、その方が息子さんと一緒に来店されたことがありました。
「これからどこに行くんですか?」と聞くと、
「警察署でやっている夏休みの柔道教室に行きます」と教えてくれました。
これにも、とても驚きました。
もちろん、私の活動報告を読んだから柔道を始めたということではないと思いますし、そこを結びつけるのはおこがましいことだと思います。
ただ、自分が文章として発信したものが、自分では予想していなかった人に届いていて、その人の身近なところに柔道との接点があった。
そのことが、とても印象に残っています。
今回、JUDOsの活動についてもこうして文章として残していくことで、今は想像していないようなところで誰かとつながったり、新しい関係や活動が生まれたりすることもあるのかもしれません。
もちろん、まず一番の目的は、自分が取り組んだ活動を形として残していくことです。そして自分自身が後から振り返れるものをつくること。
そのうえで、それを読んだ誰かと新しいつながりが生まれたら、それもすごく良いことだなと思っています。
今回、その場所としていただいたのが、この「畳のソト。」です。
第2章 なぜ「畳のソト。なのか」

写真 3 全日本選手権の会場横から
私はこれまで、柔道の「現場」に立つことが多かったと思います。
学生時代には競技者として、「どうすれば自分が強くなれるのか」「どうすれば大会で結果を残せるのか」を考えてきました。
その後、指導者になってからは、「どうすれば選手を強くできるのか」「どうすれば選手が成長していけるのか」を考えるようになりました。
そしてミャンマーでは、ナショナルチームの強化だけでなく、「どうすれば道場をつくれるのか」「どうすれば柔道人口を増やせるのか」「どうすれば柔道を普及・発展させていけるのか」といったことにも取り組んできました。
どれも、まさに柔道の現場で考えてきたことだと思います。
柔道の試合場には「場内」と「場外」があります。
試合会場の周囲を赤い畳で囲み、その内側を「場内」、外側を「場外」としています。場外に出れば「待て」がかかり、一度試合を中断して、また中央に戻って試合を再開します。
そう考えた時に、私にとってこれまで取り組んできた活動の多くは、ある意味では「場内(現場)」の活動だったのかもしれません。
選手として戦うこと。指導者として選手を育てること。道場で柔道を教えること。
一方で、これからJUDOsで関わっていく活動には、それだけではないものがあります。
例えば、指導者を育成すること。指導者同士の関係をつくること。
柔道をするために必要な畳や柔道衣を届けること。
海外で柔道を続けていける環境をつくること。
さらに大きな視点で考えれば、「どうすれば柔道界そのものが発展していくのか」
「どうすればスポーツをより良い形で発展させていけるのか」ということも考えていく必要があります。
ミャンマーで活動していた時にも、現場で柔道を教えるだけでは解決できない問題をたくさん感じました。
組織をどのように運営するのか。人をどのようにつないでいくのか。
どのように意思決定をするのか。マネジメントやガバナンスをどうしていくのか。
柔道を普及・発展させていくためには、こうした「畳の外側」にある活動も必要不可欠なのだと思います。
だから今回の活動報告では、畳の上で起きていることだけではなく、その外側でどんな活動が行われているのか。そして、その活動を通して私自身が何を感じ、何を考えるのか。
そういったことも言葉にしていきたいと思い、「畳のソト。」というタイトルにしました。
図 1柔道場の場内と場外のイメージ

そして、なぜ「外」を漢字ではなく「ソト」とカタカナで書いたのか。
これは自分の中では少しこだわった部分です。
カタカナという文字は、外国語を表す時にも使われますし、専門用語や新しい概念を表す時にも使われます。
例えば、「テクニック」と「技術」、「ゲーム」と「試合」、「コンディショニング」と「調整」、「マネジメント」と「管理」。
似た意味を持っていても、完全に同じ意味ではないように感じますし、
「マネジメント」を単純に「管理」と訳してしまうと、少し意味が狭くなってしまうような感覚があります。
「柔道」と「JUDO」も、私は少し違うものとして感じています。
日本で行われている柔道もあれば、ヨーロッパの柔道もある。ジョージアをはじめとしたコーカサス地域の柔道もある。国や地域によって柔道の文化や考え方も違いがあって、どれか一つだけが柔道なのではなく、世界にはいろいろな「JUDO」がある。
そんな、一つの意味や一つの概念だけに収まりきらない感じを、私はカタカナという表記に感じています。
今回の「ソト」も同じです。
単純に畳の物理的な外側という意味だけではなく、道場のソト、競技のソト、日本のソト、そしてこれまで自分が見てきた柔道のソト。
そういった、もう少し広い意味を持たせたいと思いました。
一つの小さな概念に収まらず、柔道を取り巻くさまざまなことに触れ、考え、取り組んでいく。そんな思いを込めて、この活動報告を「畳のソト。」と名付けました。
おわりに
ここまで、「なぜもう一度文章を書くのか」そして、「畳のソト。」という名前に込めた思いについて書いてきました。
ただ、畳の「ソト」に目を向ければ向けるほど、それでいいのかという思いもあります。
外から柔道を見ることで見えてくることがある一方で、外に行きすぎると現場のことが分からなくなる。逆に、現場に入りすぎると、その外側で何が起きているのかが見えなくなる。これは柔道に限らず、いろいろな場面で起こることなのかなと思います。
実際、今の自分自身も、これからどんなことをしていきたいのか、まだはっきりと見えていない部分があります。もちろん、自分の力不足を感じることもたくさんあります。
それでも、これまでさまざまなご縁や偶然によって、思ってもいなかった場所で柔道に関わる機会をいただいてきました。これからどのような形で現場に関わっていくことになるのかは、まだ分かりません。
ただ、自分の中には、これからも柔道の現場にいたいという思いがあります。
だからこそ、「畳のソト。」という名前ではありますが、畳のソトだけを見るのではなく、畳のウチとソトを行き来しながら考えていきたいと思っています。
今の自分がいる場所では、これまでとは違った視点や視座から柔道やスポーツを見ることができます。さまざまな人と出会い、話を聞き、情報に触れることもできます。今だからこそできることもあると思うので、まずは目の前にあることを一つずつ大切にしながら、自分なりに考え、動いていきたいと思います。
少し長くなってしまいましたので、今回はこのあたりで終わりにしたいと思います。
次回は、私とJUDOsとの出会い、ミャンマーで活動していた時にどのような支援をいただいたのか、そしてJUDOsメンバーとして最初に参加した「オンラインカフェ」について書いていきたいと思います。
これから「畳のソト。」を通して、自分が見たこと、感じたこと、考えたことを少しずつ残していきます。今後とも、よろしくお願いいたします!

平沼大和(ひらぬまやまと)
1997年、北海道生まれ。中央大学商学部会計学科卒業。在学中は体育連盟柔道部に所属した。卒業後、実業団柔道選手としてスポーツひのまるキッズ協会に所属したのち、カナダ柔道連盟ナショナルチームのアシスタントコーチを務める。2023年から2025年まで、ミャンマー柔道連盟ナショナルチーム代表監督として、代表選手の強化と柔道の普及活動に取り組んだ。2026年より、認定NPO法人JUDOsのメンバーとして活動するとともに、日本オリンピック委員会の情報科学スタッフを務めている。


