ブータン🇧🇹より【カディンチェ柔道日記!No.9】

JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。

南アジアのブータン王国でJICA青年海外協力隊として活動をしている福井勇貴さんからの活動報告です!


カディンチェ柔道日記🇧🇹🥋

※Kadrin Chhe la(現地語 ゾンカ)ありがとう
ブータン柔道はこれまで多くの方々のご協力、支援があってここまで来ました。
そんな感謝の気持ちからタイトルコールはカディンチェとさせていただきました。

皆様、お世話になっております。

JICA海外協力隊としてブータンナショナルコーチをしています。福井 勇貴(ふくい ゆうき)です。

前回の初めにグランドスラムパリの大会についてお話をさせて頂きましたが、グランドスラムパリが終わり様々な国際大会がパリ五輪に向け進んでいますが、内定が出ていなかった男子-100kg級もついにウルフ・アロン選手に内定が出ました。パリ五輪でのウルフ選手の活躍が楽しみですね。私もブータンからオリンピックの観戦をしたいと思います。まだオリンピックまで約4ヶ月ありますが非常にワクワクします。

さて今回のテーマは前回の最後にお伝えしたように、2月11日から14日まで南アジア諸国(ブータン、インド、ネパール、バングラデシュ)と日本チームを招待したJita-Kiyoueiイベント、2nd Jita-Kiyouei Tournamentを開催しましたので、そちらについてお話しさせて頂きたいと思います。

ぜひ、最後まで読んでいただけると幸いです。

Welcome to Bhutan

今回のJita-Kiyoueiイベントには、兵庫県の甲南大学柔道部部長の山﨑俊輔先生、監督の曽我部晋哉先生、4回生5名の学生さんと武庫川女子大学柔道部の3回生2名と2回生1名の学生さんと国際柔道連盟審判員の樽谷先生と兵庫医療大学の加屋先生が日本から参加していただきました。

南アジアからの参加で、ネパール柔道、エベレスト柔道チーム、インド(西バンガロー)柔道チームバングラデシュ柔道協会と多くの方々が参加してくださいました。

今回の大会運営にはネパール柔道協会の多くのサポートがあって開催することができました。大会運営の機材の貸し出し、大会運営の補助などといった多くのことをしてくださいました。今回ネパール柔道協会の皆さんが私たちのサポートやバックアップをしてくださり、私たちブータン柔道にとって多くの学びの機会にすることができました。今回学ぶことができた内容を今後の私たちの大会運営に大きく役立てていきたいと思います。


一部参加者を除くブータン、日本、インド、ネパールの皆さんとの集合写真

 

Day1
(自他共栄セミナー、寝技補強運動、審判講習会、合同乱取り稽古)

イベント初日はまず初めに甲南大学柔道部部長の山﨑先生より自他共栄セミナーをして頂きました。柔道の創始者である嘉納治五郎先生の生い立ちからどのようにして柔道というものを始めたのか?嘉納先生の言葉にもあります「精力善用」「自他共栄」の意味を私たちに教えてくださいました。このセミナーでは、選手やコーチ陣が必死になってメモを取ったり、カメラで動画に収めたりしていて一生懸命セミナーに参加していた様子を伺うことができました。

2つ目のセクションでは、寝技の補強運動の練習を甲南大学柔道部監督の曽我部先生と学生の皆さんが参加者に指導してくださいました。こちらは甲南大学の柔道部の皆さんが普段から練習されている内容だそうで、選手たちもこれまでにやったことのない動きに苦戦しながらも、新鮮な眼差しでウキウキした様子で練習していた様子を伺うことができました。

午前中のセッションが終わり、柔道場のすぐ横の食堂で全員で昼食を取り参加者全員で交流をしながら食事を取りました。

その後午後1時から国際柔道連盟審判員の樽谷先生による国際柔道連盟に基づいた審判講習会をして頂きました。実際にどんなタイミングで指導を出すのか?どんな動きが審判にはあるのか?などといったことを重点的にご指導して頂きました。審判講習会が終了後には参加者全員で乱取り稽古を行いました。初日ということで3分×5本×2セットを自由乱取りで行いました。この乱取り稽古では、日本の学生さんも南アジアの参加選手たちと一緒になって汗を流してくれました。

選手たちが普段できない相手たちと切磋琢磨してる様子を見ることができて、コーチである私はものすごく嬉しく思いました。日本に留学をしていた2名の当協会の選手は久しぶりの日本の合宿感だと楽しそうに話してくれました。


自他共栄セミナーの様子


審判講習会の様子

寝技の講習会での様子 


甲南大学柔道部の学生さんたち


合同乱取り稽古の様子


乱取りの様子

Day2
体捌き講座、合同乱取り稽古、コーチングセミナー

二日目の午前中は山﨑先生による柔道における体捌き、体捌きを利用した柔道技に関しての講習会をして頂きました。講習会では、相手の技がきた時に体捌きを利用して、相手の技からの防御の仕方や、相手がかけてきた技から体捌きを利用して、カウンター技への入る方法などをご指導いただきました。そして次に、樽谷先生から釣り手の動かし方、釣り手の動かし方を利用したエクササイズ等を教えて頂きました。ブータンは選手も、釣り手の動かし方、いなし方というのがあまり上手ではない傾向です。その中で、樽谷先生にご指導いただきました釣り手のエクササイズは今後もブータン柔道の普段の稽古に取り入れていこうと思います。

前日同様午前中のセクションが終わり、柔道場のすぐ横の食堂で参加者全員で昼食を取りました。

午後の部は、参加者全員での合同練習を行いました。

全員でウォーミングアップをし、回転運動、打ち込み、移動打ち込み、乱取りを3分×6本×2セット、参加者の全員で自由稽古として行いました。参加者の皆さんは、ブータンの高地での稽古に苦しんでいましたが、ウキウキした様子で乱取りをしていた様子を伺うことができました。

午後の部終了後は、各国選手団が宿泊していますホテルのカンファレンスルームを使用して、兵庫医療大学の賀屋先生から各国コーチへ向けたコーチングセミナーをしていただきました。このセミナーでは、アスリートにおける成長と発展、トレーニングの原則について医学的、科学的な背景も含めながら詳しく説明をしていただきました。ブータン柔道では現在ブータン人コーチの育成にも力を入れて活動をしています。その中で、今回の賀屋先生のコーチングセミナーは今後コーチを目指す子供達にとってものすごく貴重な時間になったとともに、ナショナルアスリートとして現在活動している選手においても柔道の稽古、トレーニングを科学的、医学的な側面から考えることができた貴重な時間になったと思います。

 
山﨑先生による体捌きの指導の様子


講習中の選手たちの様子

ネパールの選手と練習しているブータン選手

樽谷先生による釣り手の動かし方のエクササイズ

乱取り稽古の様子

1セット終了後の休憩の様子(疲れ切ってます…☺️)

Day3
足技講習、コンディショニングトレーニング講座、乱取り稽古、代表者会議

三日目午前は山﨑先生による前日の体捌きの復習と、体捌きを利用した足技の講習をしていただきました。この講習では、前日の体捌きで相手の技から防御した状態で足払いで相手を投げるという連絡技を指導していただきました。前日にうまく体捌きができなかった選手もこの日には少しづつできるようになって上手な連絡技がかけられるようになっていました。

連絡技の講習の後は、日本から来てくださった学生の皆さんによる得意技の紹介と内股、背負い投げの技講習をしていただきました。日本の選手の技を間近で見ていた選手たちは感動の目と憧れのような眼差しで見ていたように私は感じることができました。やはり日本で柔道をやられている皆さんはすごいんだなと私も感心していました。

午前最後は全員での2分×5本×2セットの乱取りで締めくくりました。翌日が大会で減量をしていた選手もいたので、自由稽古という形をとり乱取り稽古を行いました。

乱取り稽古後は昼食を取り、午後のセッションに向け休憩しました。

午後の部は甲南大学柔道部監督の曽我部先生によるコンディショニングトレーニング講座をしていただきました。この講座では、柔道の動きを利用したコンディショニングトレーニングの紹介と実技をしていただきました。選手たちは、柔道の動きを使った色々なエクササイズ、ゲームを物凄く楽しそうに行っていました。

午後の部最後は乱取り稽古を行いました。この乱取り稽古の後に翌日の大会の非公式計量と公式計量があったので、2分×4本×2セットを自由乱取りで行いました。

この乱取りの時間には、別会場にて翌日の大会の代表者会議が行われました。

この代表者会議では、今大会審判長である樽谷先生からルールの説明、当ブータン柔道協会会長から大会についての話、大会抽選を行いました。また、今回の大会では当協会の会長のアイディアで全個人戦の日程が終了した後に全チームミックスで抽選による男女混合団体戦についての発案の協議を行いました。この団体戦の目的としては、南アジアの選手たちが国の垣根を越えて力を合わせて試合をするという意味で発案しました。代表者による協議の結果、団体戦のチームコーチは日本から来てくれている学生の皆さんがなり、各チーム6人制で女性が二人、男性が4人の団体戦を行うことがこの代表者会議で決定しました。

選手たちの乱取りが終了後、団体戦の説明と選手たちによる団体戦のくじ引きを行いました。ラッキードローの結果で決まった団体チーム、メンバーに選手たちはワクワクした様子で作戦を話していました。

ラッキードローが終了後は大会の非公式計量、公式計量を行いました。


連絡技の講習の様子

学生の皆さんによる得意技紹介の様子

武庫川女子柔道部の皆さん

コンディショニングトレーニングの実践の様子

Day4
2nd Jita-kiyouei Tournament

イベント最終日の4日目は2nd Jita-Kiyouei Tournamentを開催しました。

この大会はブータン柔道では、初めてとなるIJF(国際柔道連盟)の規定に沿った国際大会の開催として、南アジア諸国の選手たちを招待し開催いたしました。今回はネパール柔道連盟の甚大なサポートによって無事大会を開催することができました。

男子4階級(-55kg級、-60kg級、-66kg級、+66kg級)女子4階級(-44kg級、-48kg級、-52kg級、-57kg級)の合計8階級で個人戦を開催しました。

その中で各国の選手たちは日頃の自国での練習の成果を発揮すべく大会に挑んでいました。

ブータン柔道は、2人の優勝(女子-52kg級、男子-66kg級)と2名の2位(女子-44kg級、男子+66kg級)、4名の3位(男子-55kg級、-60kg級)という大会結果でした。ホームでの大会で色々な不安がある中で自分の持っている力を精一杯出し切った選手たちをとても誇らしく感じました。

また、上記にも記載させていただきましたが、ブータンでは初の正式な国際大会の運営でした。初めてで色々な不安や問題がありましたが、多くの方々の助けをいただいて私たちは物凄く貴重な経験ができたとともに、今回の経験を次の大会運営に役立てていきたいと思いました。

個人戦が終了後は全員でランチをとり、午後からは昨日決めた全チームミックスでくじ引きによる男女混合団体戦を開催しました。当初はこの団体戦を行うのにも、色々な協議を重ねて、試行錯誤をしての開催になりました。正直、どうなることかと思った団体戦でしたが、参加国の垣根を越えて全ての選手たちが、違う国の同じチームの選手たちを必死に応援している素敵な様子を見ることが出来ました。

この団体戦の様子を見て私はこれこそ「自他共栄」だなと強く感じました。国が違ったり、これまでの背景が違うなかで、柔道という同じ競技を通じて仲間になり、切磋琢磨し合い、本気で応援する。ものすごく素敵なことだなと感じることが出来ました。




大会の様子

審判をしている様子

団体戦の様子 

大会運営の様子

表彰式の様子(女子-52kg級)   

表彰式の様子(男子-66kg級)

団体戦表彰式の様子(チームAkashimaru) 

団体戦表彰式後に団体メンバーでバンザイ🙌

試合後対戦相手へのリスペクトと感謝のハグ

Farewell dinner thank you all participants

大会が終了したその夜に参加者全員でお疲れ様会を行いました。このFarewell Partyでは、今回のイベントの参加者全員で一堂に介して食事をとり、色々な話をしたり、柔道を通じた交流というのを目的として行いました。

参加者の皆さんは思い思いにいろんな国やチームの先生、選手たちと交流をしていて物凄く楽しそうな様子を見ることが出来ました。

また、このFarewell Partyの冒頭ではブータン柔道に長年多くのサポートをしてくださっていて、今年で甲南大学柔道部部長を勇退される山﨑俊輔先生の勇退式をさせていただきました。

ブータン柔道の始まりは以前私のこのカディンチェ柔道日記No.1にて書かせていただきましたが、かねてよりご交流がありブータンでシニアJICAボランティアとして活躍されていらっしゃった故渋谷ご夫婦のご紹介で神戸ブータン友好協会さんと繋がり、山﨑先生をご紹介していただき、山﨑先生が想いを汲んで、ご子息の山﨑道洋先生をブータン柔道初代コーチとして送ってくださって今のブータン柔道があります。

そんなブータン柔道に日頃から大きなサポートと、ブータン柔道の始まりを築いてくださった山﨑先生に少しばかりですが、ブータン柔道からケーキと少しのギフトをご用意させていただきました。ブータンでは祝い事や何かのイベントの時にはケーキを用意して、その主役の方が全員の前でケーキカットをするという習慣があります。そのブータン方式で山﨑俊輔先生とご子息で初代コーチの山﨑道洋先生で共同ケーキカットをしていただきました。

ケーキカット後の山﨑先生のスピーチでは、「今回この多くの国の先生、選手の方が参加してくれましたが、ぜひ今後もこの皆さんで柔道を通じた素敵な関係を築いて行ってください。そして、みんなで互いに助け合って切磋琢磨して稽古に今後も励んでいってください。私もみなさんの頑張りをみてさらにがんばります。」と素敵なお話をいただきました。

今回多くの方々のサポートを受けこのように国際大会が開催できたこと、そして新たな柔道を通じた仲間達ができたことはとても素晴らしいと思うとともに、山﨑先生のスピーチにもあったように、この新たにできた仲間たちと国は違っても互いに切磋琢磨しあって柔道に励んで行けたらと私も思いました。


ケーキカットの様子

食事会の様子



オフショット of BJA

前回から始まりました。オフショットをお届けするこのコーナー。今回も何枚かの写真をみなさんにみていただけたらと思います。

ブータンチーム!!いぇーい!! 


休憩後みんなで交流

記念品もらいました〜(日本チーム)

お疲れ様!!頑張ったね〜

日本の学生の皆さんがお菓子を用意してくれました

先生方と記念撮影

さいごに

今回は2月11日から14日まで開催しましたJita-Kiyoueiイベントと2nd Jita-Kiyouei Tournament についてお話しさせていただきました。

まず、イベントについてですが、日本からの先生方、学生の皆さん、各国の参加者の方々と共に素敵な時間を過ごすことができたとともに、選手、コーチにとってもとても貴重な時間を過ごすことができたことと思います。そして、今回の講習を通じてとても多くの事を学ぶことができたと思います。私も非常に多くのことを学ぶことができました。

今回の講習で先生方に教えていただいたことを今後の稽古、トレーニング、生活に皆で活かしていきたいと思います。

次に2nd Jita-Kiyouei Tournamentについてですが、上記にも記載させていただいたとおりブータンでは初めてとなるIJFの規定に沿った国際大会の開催でした。今回の大会開催に向けて様々な試行錯誤し多くの方々からのサポートを受けて無事に素敵な大会を開催することができました。選手のみなさんも自国での稽古の成果を発揮すべく試合に取り組んでいた様子、大会を楽しんでいる様子を見ることができて運営のひとりとして非常に嬉しくなりました、また、コーチとしての立場では、ブータンの選手たちの課題も見つけることができた大会になったと思います。この見つかった課題を日本の先生方から教わったことも踏まえて今後の稽古やトレーニングで活かしていきたいと思いました。

そして、大会の最後に行いました全チームがくじ引きによる抽選で決まる男女混合団体戦ですが、試合前には色々な協議をしたりとかなり不安の大きいものでしたが、いざ開催してみると、選手の皆さんが国を超えて同じチームの仲間を応援している様子を見ることができてこれこそ「自他共栄」だなと感じることができました。

また、今回の一連のイベントを通じて南アジアのオフィシャル、コーチ、選手の方々と良い関係を作ることができた共に、南アジアの柔道について熱く話し合うことができたと思います。

「今後南アジアの柔道がどうしていかないといけない」「どうやって盛り上げていくか」などについて良い話し合いもできたと思います。今回の一連のことを通じて今後南アジア各国で協力して南アジアの柔道の発展と更なる成長を目標に手を取り合っていきたいと思います。

今回のイベントを開催する上で多くの方々のご協力とご協賛をいただき無事イベントを終了することができました。ブータン柔道を代表して心より御礼申し上げます。今回のイベント、大会を通じて経験することができたことを今後のブータンでの国際大会運営等に活かして更なる発展に役立てていきたいと思います。参加者の皆様ありがとうございました。

次回について

次回は3月16日に行われるJICA Bhutan Volunteer Dayについてお話しさせていただきます。ブータン柔道協会も、このイベントに参加します。

このイベントはブータンで活動しているJICA Volunteerの活動の紹介、プロモーションを行うイベントになります。私たちブータン柔道協会もこのイベントで柔道を少しでも知ってもらえるような企画を色々考えています。実際にそのイベントのその様子等についてお話しさせていただこうと思います。

このレポートの最後にこちらのイベントのパンフレットを添付させていただきます。次回の投稿も楽しみして待っていただけたら嬉しいです。

少しでもこの記事を見てブータン柔道について興味を持っていただいたり、応援してくださったりすると嬉しいです。

何かブータン柔道などについてご質問等がございましたら下記の私のインスタグラムへご連絡ください。

今回も最後までご覧いただきいただきありがとうございます。

Kadrin Chhe la(現地語ゾンカ)ありがとうございました。
Lok jae ge la(現地語ゾンカ)また会いましょう☺️

各種SNS

☆Bhutan Judo Association official Facebook
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