ブータン🇧🇹より【カディンチェ柔道日記!No.5】

JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。

南アジアのブータン王国でJICA青年海外協力隊として活動をしている福井勇貴さんからの活動報告です!


カディンチェ柔道日記🇧🇹🥋 No.5

作成日:2023/11/15
作成者:福井 勇貴

 

※Kadrin Chhe la(現地語 ゾンカ)ありがとう
ブータン柔道はこれまで多くの方々のご協力、支援があってここまで来ました。そんな感謝の気持ちからタイトルコールはカディンチェとさせていただきました。

皆様、お世話になっております。JICA海外協力隊としてブータンナショナルコーチをしています。福井 勇貴(ふくい ゆうき)です。

さて、今回のテーマは前回の最後にお伝えしたように、10月27日にJICA. Bhutan 隊員派遣35周年を記念する式典があり、その式典で私たちブータン柔道協会が実施させていただいた柔道デモンストレーションです。また、翌日の28日にはブータンで毎年開催されている日本週間イベントで、同様柔道デモンストレーションをさせていただきました。そして、日本週間イベントでは、JUDOsさんからこの度ご寄付いただきました柔道衣の贈呈式も執り行われましたのでそちらの様子などをお話させていただきたいと思います。

是非、最後まで読んでいただけると幸いです。

JICA Bhutan 35周年記念式典

今年2023年がブータン王国への海外協力隊派遣35周年にあたることを記念して、10月27日にブータン・日本両国関係者を招いた記念式典が開催されました。

実際に式典には、現在ブータンで派遣中の海外協力隊隊員28名が参加しました。ブータン王国からは、ジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王陛下、ロテ・ツェリン首相、他4名の閣僚などが列席されました。総勢約140名の来賓が一堂に会し対ブータン海外協力隊派遣の歴史と成果を振り返る機会となりました。

記念式典では、現在派遣されている隊員28名と国王陛下、首相などと記念写真を撮っていただきました。

私にとっても、大変貴重な体験をすることができたとともに、この35周年という素晴らしい節目の年に派遣させていただけていること、記念式典に参加できたことにとても喜びを感じます。

記念式典のプログラム後半では、隊員の活動紹介の1つとして私たちブータン柔道協会メンバーで柔道デモンストレーションをさせていただきました。その様子は次の章に記載します。

柔道デモンストレーションin 35th JICA Bhutan ceremony

上記に記載のように今年2023年はJICA Bhutan隊員派遣が35周年を迎えました。そこで、隊員の活動紹介の一つとして、私たちブータン柔道協会はデモンストレーションの機会を得る事ができました。

この話を私のボランティア調整員から伺った時ものすごく嬉しい気持ちになったとともに、この大事な機会を素晴らしいものにしたいと強く感じました。

9月末にアジア大会を終えてブータンに帰国してから、毎日当協会のアシスタントコーチ、シニア選手陣と話し合いを重ねて、内容作成、練習を行いました。セレモニーの前日、当日も入念なリハーサルを行い、本番を迎えることができました。その結果本番では多くのゲスト方々の前で私たちは素晴らしいデモンストレーションを披露することができました。

実際に私たちが行った内容はシンプルなもので、見るほとんどの方々が柔道を知らない人が多いと感じたため、大きく3つのパートを作り、演舞の始まりと終わりには立礼をし柔道における「尊敬、感謝」というところをきちんと伝えたかったのでそのようにしました。礼が終わり、1つめの内容は受け身を行いました。私たちの各演舞の前に当協会会長のKarma L Dorjiから受け身とは何か?なぜ柔道で受け身が必要なのか?などを説明した後、前受け身、後ろ受け身、横受け身、前回り受け身を行いました。2つ目のパートとして行ったのは、柔道において有名な7つの技紹介です。ここでも、会長から簡単に技の説明等をしてもらい技の演舞を行いました。この技の演舞では、まず2回打ち込みをしたのちにシンプルに技を一回と連絡技を一回行いました。

内股、肩車、体落とし、巴投、大外刈、一本背負い投げ、足払い、背負い投げを行いました。

そして、最後の3つ目のパートはセルフディフェンスを取り入れました。

当協会の所属の12歳の選手が大柄のシニア選手に対してセルフディフェンスをするという内容です。この背景として、柔よく剛を制すという言葉がありますが、柔道の技を習得、精神を習うことで、どんなに体格差があっても投げることもできるということを私は観客の方々に伝えたいと思い取り入れることにしました。その結果各パート各技ごとに観客の方々は歓喜してくださいました。

そして、最後の礼を終えた後に多くの拍手と歓声をいただくことができたとともに、退場した後に、式典の場に戻った際には多くの方々から「素晴らしかった」「やってみたい」「うちの学校でもやってほしい」等の多くの声をいただくことができました。

この日まで、多くの打ち合わせ、練習を行なって臨んだ本番でしたが、大成功を収めることができて私としてもものすごく嬉しかったです。


受け身パートの様子


投げ技パートの様子


参加メンバーでの記念撮影

 

Japan Week in Bhutan 2023

ブータンでは毎年10月ごろに日本国大使館が主催するJapan weekイベントが行われています。

今年も10月28日に首都Thimphuのメイン広場、Clock Towerにて開催されました。

このJapan Weekイベントでは、日本文化を紹介するイベントに加えて、JICAの職員や隊員、専門家等が出店のようにお店を出店したり、無料で日本食を提供したりもしています。

私も柔道の時間がない午前中には、JICAの隊員が無料で配布していた芋煮の手伝いをしていました。

これは余談ですが、実はブータンでは里芋が作られており、私たち隊員のなかで芋煮は面白そうだねといことで今回芋煮を作って無料で配布いました。具材は、醤油ベースのスープにマッシュルーム里芋、にんじん、玉葱等を入れたベジタブル芋煮を提供しました。最初はブータン人の口に合うかどうかわかりませんでしたが、用意していた約400食分がすぐになくなり、追加で里芋を購入するという人気ぶりでした。

他にも、浴衣の着付け、特別支援学校の生徒が作成した物品の販売や習字でブータン人の名前を漢字で当て字にして配ったりと、今年は去年をさらに上回る大盛況だったと思います。

また、今回はブータン柔道協会の新たな試みとして、シニアの選手で手作りクッキーを作成し、出店エリアで、販売するということをしました。

この背景には、柔道以外にもこの日本週間イベントを通じて当協会のメンバーに何か新たな学びにしてほしいというのがありました。

ここで少し話はずれるのですが、実は私の趣味は料理でブータンでも基本的には毎日自炊をしていて、時間がある日には、クッキーなどのお菓子を焼いたり、パンを作ったりとストレス発散の方法として趣味を謳歌しています。

協会メンバーで話した時に、今回の日本週間イベントで何かお菓子を作成して販売をみんなでやってみたら面白いかもしれないねということで、今回新たにこのような挑戦をしました。

選手たち皆でクッキーを作っていたときも、皆キラキラしながら興味津々に作業をしていました。

焼き上がった後も、「今度、家でも作ってみます」などとものすごく好評でした。

そして、本番の日本週間イベントでは約40袋用意したクッキーはおおよそ30分程度ですぐに完売という大盛況で、作った選手たちもその様子を見ながら、嬉しそうにしていました。


作成したクッキーを来賓の方々に渡している様子

柔道デモンストレーション in Japan Week Bhutan 2023

前日の35周年イベントに引き続き、翌日の28日にも柔道デモンストレーションを行いました。

この日本週間でのデモンストレーションは例年参加させていただいており、メインイベントの一つとしてやらせていただいております。

前日のデモンストレーションとは違いこの日本週間では、当協会の初心者からシニアの選手、コーチ総勢30名が参加しました。このデモンストレーションでは、アシスタントコーチが主導となり、内容作成、練習、調整を行い、初心者グループ、ジュニアグループ、シニアグループに分け、柔道の基本的な運動(回転運動や受け身)、アクロバティックな回転運動、ピラミッド飛び込み受け身、基本的な技紹介、セルフディフェンス、スローモーション、リモートコントロール柔道などを行いました。

上記に記載のように、アシスタントコーチが担当となり内容作成、練習を行いましたが、もちろん私も彼らのサポートとして動いていました。その中で、実際にこのデモンストレーションのメンバー決めをしているときに重要視していたのが、多くの子どもたちに機会を与えたいということでした。

この日本週間イベントというのは、ブータンの子どもたちにおいて大きなイベントの一つです。

その中で、柔道協会メンバーを代表して演舞をしたら何かしら彼らにとって良いモチベーションや機会になると感じていたので、初心者、ジュニア、シニアの選手垣根をこえて多くの子どもたちに機会を与えたいと思い選考しました。

そして、決して満足といえないデモンストレーションの練習でしたが、本番では見事大成功を収めることができました。


ジュニア選手がシニアの選手相手に投げ技をかけている様子


スローモーションな動きで大内刈りをかけている様子

寄付柔道衣 贈呈式

これまで当ブータン協会へ多くのサポートをしてくださっていて、私がHPで活動紹介をさせていただいていますJUDOsさんから今年の7月ごろに柔道衣のご寄付をいただきました。

100着もの多くの柔道衣をご寄付いただき、ブータンには船便で9月ごろに到着しました。

そこで、この日本週間イベントでJUDOs、全日本柔道連盟、日本大使館とのコラボということで、贈呈式が執り行われました。

その贈呈式の冒頭では、JUDOsで代表をされている井上康生先生のビデオメッセージをスクリーンにて上映させていただきました。

ビデオレターで井上先生は「柔道というのは、ただのスポーツだけではなくいかに自分自身を磨き上げ、そしてその磨きあげた自分によって社会に貢献できるかが柔道の最大の目的である。」とお話しいただきました。この井上先生のお言葉を聞いて私自身ものすごく心に響いたとともに、もう一度この言葉を胸に「教育としての柔道」に重きをおいているブータン柔道での指導に役立てていきたいと思いました。

私自身「柔道」を通じてJICA海外協力隊としてブータンで柔道指導を行うことができています。そして、嘉納治五郎先生の言葉に、「精力善用自他共栄」(柔道で培った精神力、身体的力を世のため人のために貢献する)がありますように、私もJICA海外協力隊を目指した理由は、自分が日本で柔道を通じて学んだことを今度は途上国で指導者として、世のために何かしたいという気持ちからでした。そんなことを私の任期が終わる時までブータンの人々に少しでも伝えていくことができたらなと思います。


贈呈式での記念撮影


(左)ブータン柔道協会会長Karma L Dorji,(右)鈴木大使、ジュニア選手(下2名)

 

さいごに

今回このように二日間続けて素晴らしいイベントに参加することができ、ブータンの人々に少しでも「柔道」というものを知ってもらういいチャンスを頂けたと思いますし、この二つのイベントを無事に大成功という結果に収めることができて私自身ものすごくうれしく感じます。

しかし、ブータンにおいて今後も草の根の柔道普及活動というのは非常に重要だと私は感じます。なので、私の任期が終わるその時まで、継続的に草の根柔道普及活動を行なっていきたいと思います。そして、その中で始めた選手が将来ブータンからオリンピックや大きな大会に出場できる選手に繋がればなと感じます。

また、今回の日本週間イベントでは私たちの柔道デモンストレーションに加えJUDOsさんからご寄付いただきました柔道衣の贈呈式が行われました。

このように普段から私たちブータン柔道にご支援、ご協力いただいておりますJUDOsさんをはじめとする多くの方々へ感謝の気持ちを忘れず、そして、その感謝の気持ちという大事なことを今後も子どもたちに伝え続けながらともに精進していきたいと思います。

引き続き応援のほどどうぞよろしくお願いいたします。


柔道場内のギャラリーにてJUDOsさんのフラッグの掲示

次回について

次回は11月25日から香港で行われるAsian Open Champion Ships Hong kong2023に当協会から2名の選手が出場いたしましたので、そちらの様子についてお話しさせていただきたいと思います。

少しでもこの記事を見てブータン柔道について興味を持っていただいたり、応援してくださったりすると嬉しいです。

さいごまでご覧いただきいただきありがとうございます。

Kadrin Chhe la(現地語ゾンカ)ありがとうございました。Lok jae ge la(現地語ゾンカ)また会いましょう☺️

各種SNS
☆Bhutan Judo Association official Facebook
https://www.facebook.com/BhutanJudoAssociation?mibextid=LQQJ4d

☆福井勇貴 活動アップロード Instagram
https://instagram.com/jocv_fukui_yuki?igshid=MjEwN2IyYWYwYw==


JUDOsでは海外で柔道指導をしている方々の活動記を紹介しています。自分の活動を発表したいという方は事務局までご連絡ください。