JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。
今回は、2025年3月まで東海大学柔道部の国際交流担当としてJUDOsの活動に携わり、大学卒業後も「国際コーチングセミナー2025」のアシスタントコーチを務めてくださった岩本莉樹さんによる第三弾です。
今回は、フランス編後半をお届けします!
JUDOsホームページをご覧の皆さま、ボンジュール(こんにちは)!岩本莉樹です。
私はJICA海外協力隊2025年3次隊として、バヌアツ共和国🇻🇺への派遣されます。語学訓練所入所までの期間、NPO法人JUDOsの指導者派遣として前回のバングラデシュ指導に引き続き、フランス指導へ行っておりました。
《前編》に引き続いて今回は《後編》をお届けいたします!
フランス柔道記🇫🇷《後編》
CVL 《Orléans, Tours》(オルレアン、トゥール)
4泊5日(ホテルステイ、ホームステイ)
ブレティニー=シュル=オルジュから車で1時間半ほどかけて少し南にあるオルレアンという都市に移動してきました!
午前中はCVLの9月の指導者講習会があり、そこで1時間ほど技講習をさせていただいた。全体でのストレッチ、エクササイズをした後に、大内刈と内股のデモンストレーションをしました!高段者の指導者の先生方を相手にした場所だったのでかなり緊張したが、定まってきた自分の指導スタイルでなんとか乗り切れました。指導者に向けての技講習だったため、デモンストレーションをしながら「技を返される時」「技を透かされる時」のパターンなどを、より細かく理論立てて説明することを心がけていました。
午後からは別の体育館へ移動し参加者らとの昼食を済ませた後に、8面ほどもある大きな体育館でフランス柔道連盟が主催しているStage National de Rentrée(全国柔道研修会)にて約185名の指導者を対象に講習をさせていただきました。

午後の第一部ではウォーミングアップから、大内刈と内股のデモンストレーションをしました。いずれの技も喧嘩四つの組み方での入り方として紹介しました!
その後は「形」や「柔術」「視覚障害者柔道」などについての講座が続きました。
午後の第二部では寝技ワークショップのなかで「帯通し」のデモンストレーションを行いました。技講習をしていく中で「相手に足を絡まれた場合は?」「相手が手を伸ばして踏ん張った場合は?」など質問が次々と飛び交い、それぞれに対応した技術を見せました。その後は個別に「俺の技を見てくれ!どこを修正すればいい?」「捨身技は得意?見せてほしい!」と沢山リクエストがあり、個別の質問コーナーのような感じでした〜。
稽古が終わった後に技の研究をしていた学生時代を思い出すと同時に、知らない技や戦術についての会話をするのはやっぱりどこでしても楽しいなと感じた瞬間でした。
夕食はパトリック先生の自宅で骨付きステーキやワイン、チーズ、サラミ、スイーツなどを振る舞っていただきました。

その後、先生らと歩いてCathédrale Sainte-Croix d’Orléans(サント=クロワ大聖堂)を訪れました。ちょうど夜間のプロジェクションマッピング中で期間限定の様子を見ることができました!

写真はかなり酔っ払っていますが笑
翌日朝からは、前日に知り合ったピエールさんに改めて大聖堂や街中の観光へ連れて行っていただきました。明るくなってから改めて街を見ると、立派なジャンヌ・ダルクの騎馬像が街の中心に印象的でした。大聖堂まで一直線に伸びる通りも分かりやすく、美しさと分かりやすさが両立しているのが面白かったです。

昼食後は別の2面ほどある道場で約30名ほどの指導者へ向けて、この日リクエストがあった足技を中心に技講習をしました。出足払や小外刈、小内刈、足車などを披露し、自分の得意な分野ではなくて、これまで使うのを避けてきた分とても苦労しました。今後は、指導者として苦手分野をなくしておかなければならないと感じ(私は左組ですが)左右のどちらの技も、お手本ができるレベルまで習得しておくべきだと強く思いました。

その後、すぐにピエールさんと別の体育館へ行き、夕方のクラブチームの練習に参加した。約80名ほどの参加者がおり、途中参加であったにも関わらず大内刈と内股のデモンストレーションと技術指導をさせていただきました。その後、前日から約束していたピエールさんとの真剣勝負をしてきました!(とてもハラハラして楽しかった〜!)
翌日昼から車で2時間ほどかけてオルレアンの西にあるトゥールという街に来ました。この日からはコーチのポールさんの家に2日間ホームステイとなりました。夕食には手作りのリゾットを振る舞っていただきました!

とてもおいしかった〜!
翌朝からはトゥールの街を少し観光して昼食を済ませた後、UJTM37の道場で約25名ほどの小学生の生徒らの練習に参加してきました。1時間半の練習の全てを任されたため、ストレッチ、ウォーミングアップをした後に、組み手と背負落のデモンストレーションと技術指導を行いました。最後に何本か乱取り稽古にも参加し、若いコーチらとも乱取りをしていい汗をかくことができました。練習後に柔道衣を交換したいとのことだったので、私のボロボロの柔道衣と新品の柔道衣を交換してくれました!さらには、UJTM37のジャージとTシャツまでプレゼントをしてくださりました!その後コーチらに夕食をご馳走になりました!

鴨ステーキがとてもコクのある濃厚な味わいで美味しかったです
Occitanie(オクシタニー地方)
《Tarn, Toulouse, Mèze, Montpellier》(タルン県、トゥールーズ、メーズ、モンペリエ)
6泊7日(ホームステイ、ホテルステイ)
早朝6時からオルレアンを出発し、電車と車で約6時間ほどかけて南フランスにあるタルンという田舎の街へやって来ました!
現地ではアレックス先生が出迎えてくださり、彼の道場での稽古に参加しました。道場には沢山の日本語のポスターが掲示されており、なんと昨年私が撮影に参加した「技名称100」のポスターが目立つところに飾られていました。話を伺うと、どうやら2025年春に東海大学へ研修に来られていた際にもらったようでした。

サインを求められたのでちゃっかりサインをしてきました〜。ここしかスペースがなかっただけです!

この日ここで行う自分の講習の予告のポスターも飾られていました。なんだか嬉しくて照れくさい気分でした。
ここの道場では夕方から1時間ほど子ども向けの護身術のクラスがあり、生徒らは投技や当身技の練習をしたりサーキットトレーニングをして楽しく汗をかきました。柔道競技からスタートせず、護身目的や運動目的でこういった感覚で柔道に慣れ親しむ子供たちも多いそう。

日本にももっと気軽にスタートできる道場が増えたらいいのになぁ
そのあと1時間半の小学生以下と大人向け柔道のクラスがそれぞれあり、ストレッチ、ウォーミングアップに加えて、大内刈と寝技の技講習をしました。これまで訪れた道場でも質問が多くあったポイントである「細かな釣手の位置」や「ケンケンで追いかける角度」などを明確に伝えるようにしました。
極論ではありますが、柔道の勝負においては投げて「一本」を取れさえすれば勝ちとなるのです。大雑把で、強引な技であろうが、タイミングがバラバラであろうが、投げさえすればいいわけです。しかし、フランスではどこへ指導へ行っても技に関する細かな質問が多くあったように感じます。私(岩本)の技を全て学びたいと思われているようにも感じました。日本だと「ある程度合ってれば大丈夫」と曖昧にしたりすることが多いです。しかしながら、正しい技を知ることこそが、「効率良く最小限の力で最大限のパフォーマンスを発揮すること(=精力最善活用)に繋がる」とわかっているのだなと、ここまでフランス巡回指導のなかで身をもって感じました。
稽古後は道場横のスペースでチップスやチーズなど軽食を食べながらお酒を楽しみました!
この日の夜は、アレックス先生の自宅にホームステイでした。シャワーを済ませようとすると、気を遣ってバスタブにお湯を張っていただけたので、3ヶ月ぶりに湯船に浸かることができて最高でした〜!

お礼に一筆書かせて頂いたところ、額縁に入れて飾ってくださりました
翌日は昼からアレックスさんにCordes-sur-Ciel(コルド=シュル=シエル)という丘の上にある中世の街で、霧の日は空に浮かんでいるように見えることで有名な観光地へ連れて行っていただきました!石造りの街並みと高台の立地が印象的で、映画の世界のような雰囲気を感じました。

中世の景観がそのまま残っており、現実とは思えないような空間でした!
夕方からは車で1時間ほどかけてトゥールーズという隣の街に来ました。8面もある大きな体育館で約1時間の70名のジュニア・カデの生徒へ大内刈のワークショップをしました。その後、シニアの参加者も含めた全体で約120人での練習会があり、立技と寝技の乱取り稽古に参加。また、柔道の合同練習なのに柔術の選手らも参加しており、自由で間口の広さを感じました。

夕食は寿司レストランへ行きましたが、ここでも寿司プレートに白米が付いてきました笑
翌日朝からは、同じ体育館で2日間にかけて開催されたオクシタニー柔道連盟と、オート=ガロンヌ県柔道連盟の共同主催の新学期全国合宿に参加しました。「道場の認定式」「新任指導者の紹介」「指導者・高段者へ向けたの研修」が主なプログラムでした。
約250人が参加するこの合宿で、2日間で計2時間半も、私の講習会のための持ち時間を作っていただきました。1日目の午後のみ、マスタークラスとの稽古が実施されていました。
また、講習のテーマは「技術向上・攻撃システム改善」だと事前に伝えられており、大内刈と内股の技講習を実施しました。打ち込みから投げ込み、乱取りや試合での実践的な組み手からの攻撃方法などデモンストレーションを行いました。

フォトセッションを終えた後に、連盟の方々から記念品やお菓子をいただきました〜。
セミナー終了後、車でトゥールーズから南東へ約3時間ほどかけてメーズという港町に移動し、この日はホテルにチェックインをして早めの就寝となりました。

翌朝、メーズ港周辺を自由に散策して少しゆっくりすることができ、その後は昼食を参加者の先生方と共に済ませました。
この日は、オクシタニー柔道連盟のみが主催しており「初心者への受け身の指導」「新ルールの解説」「道具を使った効果的なトレーニング」などのプログラムが実施されました。
その後に、私の持ち時間を1時間半とっていただけたので内股と寝技(帯とおし)の技術指導を行いました。

終了後に約140人の参加者の先生方と記念撮影をし、メーズから車で40分ほどかけて東にあるモンペリエという大きな都市に来ました。
翌日、午前はオフだったのでホテルからすぐにあるモンペリエのコメディ広場や、ペイルー広場の観光をしました。

コメディ広場は人も多くて活気があり、天気が良かったことも相まって、南フランスらしい明るい雰囲気となっていました。

ペイルー広場は一気に落ち着いていて、景色もよくてゆっくりできる場所で、同じ街なのに空気感が全然違って面白かったです!
そのあとLycée Jean Mermozのチームの練習に参加しました。道場は3面ほどの広さで、2部制で実施されました。16時から18時は強化選手向け技術指導の技術指導は大内刈、寝技(送襟絞)を行い、18時から20時は一般参加可能な練習会でした。そこでも、1時間かけて技術指導(内股)を行いました。後半は乱取り稽古が1時間あり、男女カデ以上の選手らと汗を流しました。

フランスの軽量級の代表クラスの選手も参加しており、とてもレベルが高かったです!
夕食はVéroniqueコーチにラクレットをご馳走していただきました!

少し肌寒い9月末のフランスでの温かいラクレットはとても沁みた〜。
Le Creusot(ル・クルーゾ)
2泊3日(ホテルステイ)
モンペリエから電車と車で4時間ほどかけてフランス中部にあるル・クルーゾという街にやって来ました!実は来る途中で降りる駅を間違えてしまい、チケットを買い直してルート変更となりました。しかも本来、コーチのジョーさんに拾っていただくはずだった駅とは違う別の駅まで来ていただきました。終盤で、1ヶ月の巡回指導での疲れがついに出てしまいました。
ル・クルーゾに着いて昼食を済ませ、やって来たのは2面ほどの広さの町道場。

またポスターがありました!ジョーさんも昨春東海大学へ研修に来られてたようです!
近隣の小学校と道場が直接連携して、小学生の子どもたちを対象にした柔道教室をしていました。
この日は約40分×4クラスほどを担当していました。1クラスは約25人で、元気いっぱいな子どもたちに、礼法を教えていたり、すり足(体捌き)で追いかけっこをしたり、受け身をしたり、体落での投げ方を教えたり、とても楽しく充実したクラスでした!

その後、夕方からは小中学生の白帯から黒帯の約40人の練習生の稽古に参加しました。この日の練習では内股の技講習を少しだけ行い、乱取り稽古にも参加しました。
翌日土曜日は、昼から幼年から低学年のクラスがあり、そこではジョーさんが子どもたちに日本の文化の紹介を少しいていただきました。「日本の柔道をしている子どもたちは静かに話を聞けるんだよ〜!」「お返事も大きい声でできるかな?」という言葉を、子どもたちはびっくりした顔や、興味津々な様子で聞いていました。フランスの指導者が日本の柔道指導をリスペクトしていることがとても伝わってきました。
また、私もジョーさんが練習生の子どもたちへの指導している姿勢やプログラムをみて、とても勉強になる部分が多くありました。子どもたちへの指導する雰囲気づくりがとても素晴らしく、みんなが柔道を楽しめるような工夫が感じられました!
午後は高学年から中学生のクラスでした。約2時間の練習を全て任せていただき「日本式の練習メニューをしてくれ」とのことでした。

ウォーミングアップ、補強運動、打ち込み、投げ込み、乱取りという流のシンプルなメニューを実施しました。
フランス式でのユニークな練習メニューに慣れている練習生には退屈に感じるのではないかという懸念がありました。しかし、日本式のメニューをただやらせるのではなくて「今やっているメニューに、どういった意味があるのか」を明確ひとつずつわかるように伝えました。
例えば打ち込み練習も、ただ軽く身体を動かすだけではなくて「力強い、一本ずつ試合で出せるレベルの精度」が必要だということを。「悪い技」と「良い技」の例を比較して見せたり、今の私にできる最大限の指導をしてきました。
練習後半では、ル・クルーゾの市長が練習を見に来てくれました。

なんと地元紙で掲載されちゃいました✌️
松前重義先生の「柔道・友情・平和」をしっかりと体現してきました。
夜の部では、練習生の保護者のみんなと道場で1時間ほどのエクササイズのレッスンがありました!家族みんなで道場で通い、一緒に汗を流していて、素晴らしい道場だなと感激しました!

最高齢の参加者のなかには70歳を越える方もおり、道場が子供からお年寄りまで家族の居場所となっているような印象を受けました。すごい…。
Amiens(アミアン)
1泊2日 (ホテルステイ)
ル・クルーゾから電車で北へ約4時間ほどかけて、フランス巡回指導の最後の都市アミアンにやって来ました!
お昼に到着後、こちらではフレデリック先生がアミアン大聖堂へ案内してくれました。

フランス最大級の高さと奥行きのスケールに圧倒されました!
夜からは多数の武道を教えている道場での指導でした。約20名の高校生以上の大人へ向けた柔道のクラスで2時間の指導をしました。

大人の方でも楽しめて、汗をかけるようなメニューを意識しました!また、大外刈と内股のデモンストレーションと技講習もさせていただきました。

大人が気軽に、仕事後に汗を流せるような道場で、初心者も熟練者も共に楽しめる雰囲気が素晴らしかったです!

たくさん素敵な写真を撮っていただきました!
終わりに
この巡回指導を通して特に、「真っ直ぐな柔道」を意識していました。本来の自分の柔道スタイルは変則的なものであり、で片手の技や捨身技など多用することもあります。しかし、日本の指導者として、しっかりと組み合って、姿勢良く技を繋げて、崩して投げる柔道スタイルを見せるよう心がけていました。理由として、できる限り日本の「正統派」と呼ばれるスタイルで柔道をすることこそが、美しい日本柔道の魅力の発信につながるのではないかと感じたからです。1ヶ月の巡回指導を通して、これははっきりと証明され、綺麗に技が決まると見ている選手らが「Très bien!(上手!)」や「Ippon!(一本!)」と言ってくれて喜んでくれました。
私は国際大会で活躍した選手では無く、有名な指導者であるわけでもないので、たくさんの人達から歓迎されることに少し戸惑ったり、不思議な気持ちになる感覚がありました。
実際に、力不足であると感じる場面もありましたが、それでも皆が真剣に日本の技術を習得しようとしてくれるし、技術面についての質問も細かくて鋭いものが多いと感じました。「目標にしている柔道家はいるのか」「柔道の魅力を伝えるにはどうすればいいのか」など私の自身の経歴に興味を持ち、「なぜこの歳で単身でフランスに来たのか」とたくさん質問をしてくれました。
フランスで柔道が人気のスポーツであるのは事実です。しかし、柔道の競技人口がただ多いだけではなく、それ以上に柔道に対する熱量が物凄く、皆の柔道を見る目が肥えているようにも感じました。日本よりもはるかに柔道人口が多いフランスには、それだけの理由が確かにあるのだと感じました。
なお、岩本さんは本日(2026年5月)よりバヌアツへ派遣予定です🇻🇺
世界各地で活躍される姿を、JUDOsとしても大変嬉しく思っています!
気を付けていってらっしゃい!

