JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。
中央アメリカの中央に位置するエルサルバドルでJICA青年海外協力隊として活動をしている深井龍河さんからの活動報告です!
¡Hola! Judosのブログをご覧の皆さんこんにちは。
2024年オリンピックイヤーを迎えましたね。私たちチームエルサルバドルも、今年開催される大会に向けて日々稽古を行なっています。世界中の柔道家がパリオリンピックに注目を寄せています。それはもちろんエルサルバドルでも。中でも日本柔道は彼らにとっても魅力なようで、ほとんどの選手が、投げ技が華やかである選手や寝技では相手を逃さず勝つ選手のような「一本を取る柔道」についての印象について語っていて日本人としてとても嬉しく思います。
さて、今回はサルバドール日記第2号ということで前回予告した通り、中米カリブオリンピックについて書いていこうと思います。
Los Juegos Centroamericanos y del Caribe 2023
(中米カリブオリンピック)
初めて開催されたのは1926年のメキシコ大会。私の任国エルサルバドルでは前回2002年に開催され、今回2023年に再び開催が実現しました。参加国は35カ国そして37の競技で盛り上がりました。中米カリブとは言いつつも、上はメキシコから下はコロンビア、ベネズエラまで、世間では南米のくくりにされている国や、カリブ海に浮かぶオランダ領の島なども参加していました。私たちエルサルバドル代表は開催国なので開催枠が適用され、多くの選手が出場することができました。
選手村の壁に描かれた参加国の国旗
中米カリブオリンピックに向けたこれまでの取り組み
私が赴任した当初からこの中米カリブオリンピックに向けての取り組みが期待されていました。当初は練習の雰囲気も良いと言えるものではなく、個人の気分で練習に来ない日があり、継続した練習ができておらず実力を高められず、練習に来ても乱取りを半分以上やらないことやコーチもどう指導すればいいかわからないと相談をするほど指導のアプローチができていないようでした。まずは練習を継続するための基盤作りからスタートしました。まずは状況の把握から始めて、限られた時間で練習内容を工夫しながら私自身も選手と共に汗を流し、毎回の練習で課題を設定(乱取りをする際の足技を積極的に使うことや組み手の徹底、最後まで投げ切る等)しながら選手個人の分析を行ってきました。また他国を招待した合宿や、国外対外試合(コスタリカとグアテマラ)に参加をし、試合に向けての経験値を高めていきました。
同時にキューバからもコーチを要請し、共に連携を図りチームの競技力向上に努めてきました。キューバのコーチはというと、judos理事長を務める井上康生さんやこれまで世界で大活躍をした有名日本人柔道家と何度も対戦を経験しているオスカルブライソン。彼の指導はエルサルバドルの選手が経験したことのない新しいもので、練習の充実度も高まっていました。彼とコーチングについてお話しさせて頂いた際、日本とキューバでは多くの違いがあり、キューバでは乱取りをほとんどやらず、基礎練習及びフィジカルトレーニングがメインだということを伺いました。コーチング方法に違いはあるものの、世界大会で実績を積み上げてきた国の指導方法はとても興味深く、新たな価値観として学ぶことができました。彼は日本にも稽古をしに行ったことがあるようで、日本にも関心を持ってくれていました。ちなみにかき玉スープが好きだったようです。
オスカルブライソンとの一枚
中米カリブオリンピック開催!
中米カリブオリンピックの期間、柔道競技は開会式の翌日から4日間行われました。私たちは前日入りしたため、開会式にも参加することができました。開会式にはエルサルバドル大統領そして世界的有名アーティストMarshmelloが訪れ、夜遅くまで盛り上がりを見せました。大統領のお話ではエルサルバドルを存分にアピールする部分があり、世界中にエルサルバドルが知られるきっかけとなったことでしょう。エルサルバドルチームからは男子7人、女子6人が参加しました。各国の代表が出場するハイレベルな戦いの中、各選手苦戦を強いられながらも大健闘し、惜しくも3位決定戦でメダルを逃してしまった選手もいましたがよく戦ってくれたと思います。その中でも男子100kg級で元81kg級リオオリンピックの選手であるディエゴトゥルシオス選手が、厳しい戦いの中敗者復活戦から見事銅メダルを獲得してくれました。この銅メダルはエルサルバドル第2号のメダルということで国全体に活気をもたらしてくれました。
開会式で選手と撮った一枚
長い間一つの目標に向かって準備してきたことにより徐々に高まる緊張感、中米カリブオリンピックという大舞台のプレッシャーはとても大きかったと思います。私自身も練習で苦しんで泣いて、それでも必死に食らいついてきた彼らを見てきたからこそ全力でサポートしようと思いました。メダル獲得が決まり試合後にありがとうと伝えてくれた瞬間は初めてコーチとしての最高の喜びを感じました。また国外のコーチからもおめでとうと伝えてくれてエルサルバドル代表の一員であるということを強く実感しました。
このオリンピックで柔道チームを支えてくださった全ての人々、そして日本人の私をエルサルバドルのチームの一員として迎えてくださったことに大変感謝しています。
表彰式の様子:右から2番目がトゥルシオス選手
表彰式後の一枚
終わりに
長年メダル獲得が低迷していると言われていた中、今回ディエゴ選手、その他奮闘した選手の活躍が現在担当しているジュニアの選手たちや、柔道を始めたばかりの方々のモチベーションにつながることを願いエルサルバドル柔道が更なる発展を遂げていければと思います。
赴任してから1年間、チーム一丸となって1つの目標に向かって進んでいく過程を過ごしていく中、海外だからこそ感じられることもたくさんあり、自分が成長できる機会だったと感じます。
次回は現在行なっているジュニア育成プロジェクトについてお伝えします!
それではみなさん、 ¡Hasta luego!(ではまた!)