ブータン🇧🇹より【カディンチェ柔道日記!No.8】

JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。

南アジアのブータン王国でJICA青年海外協力隊として活動をしている福井勇貴さんからの活動報告です!


カディンチェ柔道日記🇧🇹🥋

作成日:2023/2/1
作成者:福井 勇貴

 ※Kadrin Chhe la(現地語 ゾンカ)ありがとう
ブータン柔道はこれまで多くの方々のご協力、支援があってここまで来ました。
そんな感謝の気持ちからタイトルコールはカディンチェとさせていただきました。

皆様、お世話になっております。

JICA海外協力隊としてブータンナショナルコーチをしています。福井 勇貴(ふくい ゆうき)です。

早いもので、2024年が始まってもう1ヶ月が経ちましたね。ブータンは非常に平和な国でブータンの人々は日本の人々と比べても一日をものすごくゆっくり生活しているイメージですが、なぜか私だけは時間が経つのがものすごく早く感じます。ブータンでも私はやはり日本人なのでしょうか…😅

今年はパリ五輪が開催予定ですね。パリ五輪を控えた今つい最では、グランドスラムパリが開催していましたね。私もブータンから空き時間にJUDO TVで観戦していました。

個人的にはウルフ・アロン選手の優勝、厳しい戦いでの勝利への執念はものすごく感動しました。

昔から私は日本のビック大会や国際大会を観戦した直後はなんか自分が強くなった気分になって稽古してしまいます。これは私だけでしょうか…😅 皆さんにお聞きしたいです。

さて今回のテーマは前回の最後にお伝えしたように、1月20日にNational Winter Judo Championships 2024、1月31日にWinter Judo Color Belt Testを開催しましたので今回はその2つのイベントについてお話しさせて頂きたいと思います。

ぜひ、最後まで読んでいただけると幸いです。

National Winter Judo Championships 2024

1月20日(土)にNational Winter Judo Championships 2024を首都ティンプーにて開催しました。この大会は年に2回ある長期休暇(夏、冬)に行う柔道キャンプの締めくくり大会として開催しています。今大会は約60人の選手たちが出場し最多参加者数での国内大会となりました。

昨年の3月からゲレフというブータンの南にある地方で始まったゲレフ柔道クラブが参加し、合計3つの柔道クラブが一堂に介しました。多くの選手たちがこの大会での優勝を目標に普段の稽古やトレーニング、柔道キャンプに励んでいます。今大会は年齢、体重、技術等から分けた5つのカテゴリーによる個人戦と3つのチームによる男女混合団体戦を行いました。

団体戦については次の章でお話しさせて頂きたいと思います。

今回の大会は、上記に記載の通り地方チームの出場もあり普段は見ることのないにはないとても白熱した試合が多く、選手、コーチ、保護者もものすごく盛り上がった大会になりました。

今回の大会を通じて感じたのは、日頃から練習やトレーニングで培ってきたものをさまざまなチームと合同の試合をすることで、選手たちからより競争心や向上心が身につくと思ったとともに、少し懐かしくも感じました。当時自分が小、中学、高校生の時に出稽古や合同遠征に行き他学校チームと試合をしていた思い出が少し蘇りました。

初の試み 男女混合団体戦

今回の国内大会では、初めての試みとして3チームによる男女混合団体戦を行いました。試合方法は5人制で補欠3名を含めた計8人を1チームとし3チームによるリーグ戦を行いました。

各チームに2名のコーチがつき、事前選考を行い、期日までに団体選手を決め提出し、大会当日ではチームの戦略を考え、対戦相手に合わせた選手オーダーを決めるという正規の団体戦の大会のように行いました。今回私が男女混合団体戦を行った意図は2つの面からでした。

1つ目は選手です。これまでは個人戦でしか試合をしたことがない選手たちがほとんどでした。団体戦と個人戦では時として試合の仕方や雰囲気等全てが大きく違うときもあると私は思っています。チームの状況を考えて試合をする。(例えば、先鋒、次鋒が負けてきて中堅の選手に順番が回ってきたら後3人が勝たなければチームは負けてしまいます。)そんな状況での試合というものを今回の大会を通じて経験してほしいということと、勝ち負けということではなく、いつも練習しているチームの仲間たち皆で何か1つのことを成し遂げるということを経験してほしい思いからでした。

初めての団体戦、慣れていない状況ということでどうだろうと私は少し不安に思っていましたが、私の期待を大きく裏切ってくれて、チームのメンバーで仲間たちを応援したり、励ましたり、アドバイスをしている様子を見ることができました。そしてチームが勝利した時にはみんなで喜んでいた様子を見ていた私はとても胸が熱くなりました。

2つ目はコーチ陣に対してです。上記に記載のように個人戦と団体戦では場合によって大きく異なります。例えば、対戦相手によってどの選手を先鋒から大将に置くか?どう補欠選手を出場させて勝利に持っていくか?このように個人戦にはない戦略的な部分が多く含まれていると思います。そんな状況をコーチ陣に経験してほしいと思い実施しました。

実際の大会では、出場選手が当日に欠席し補欠合わせて4人しかいないチームがあったり、初めての団体戦ということで選手がものすごく緊張していた状況があった中、コーチ陣は常に冷静に選手たちへのアドバイスや激励を欠かさず、戦略を考えて試合を進めていたのを見ることができました。そんな様子を間近で見ていた私はものすごく嬉しく思いました。

また、今後コーチとして今以上にたくさんのことを経験し、コーチとしての実績をたくさん積んで今後のブータン柔道を発展していってほしいと思いました。

Pelkhil Judoチーム初代団体戦優勝おめでとう!!

Winter Judo Color Belt Test 2024

1月31日(水)に Winter Judo Color Belt Testを実施しました。

この昇級試験も国内大会同様に長期休暇の柔道キャンプの最後に締めくくりのイベントとして開催しています。昇級イベントでは、次の色帯を巻くための試験になります。

各色帯ごとに試験内容が異なり、試験当日は各帯の試験内容を審査員の前で披露するというものになります。内容は大きくに分けて5つあります。(受け身、立技の技、寝技の抑え込み技、寝技の技、乱取り)具体的な採点基準とボーダーポイントを設け、そのポイントに従って2名の審査員が適正な審査を行なっています。

現在、ブータン柔道の最上位段が参段で2名保持者がいるので、その2名と弐段所有者の2名が審査員となり、試験の審査を行なっています。実際に私たちが使用している昇級試験の用紙をサンプルとして載せますので、どんなものを試験内容としているか見ていただけたら嬉しいです。

もちろん、初心者、シニアクラス問わず技をきちんと身につけていないなど、基準点を下回った際には不合格となってしまします。実際に今回も3名の不合格者が出てしまいました。しかし、不合格者だからと言って次の夏の試験まで試験を受けられないということではなく、一週間後に再試験を行いそれで合格をすることができれば、次の色帯を巻くことができるというシステムで私達は昇級試験を運営しています。

自分の課題に向かって一生懸命に向き合って合格に向けて挑んでいる選手たちはとても誇らしく、かっこよかったです。

また、不合格になってしまった選手の中には悔しくて号泣している選手もいました。しかし、正直なところ私はそれでいいと思います。むしろそれが柔道、格闘技、スポーツの素晴らしさだと思います。

「思った結果が出なかった」、「一生懸命取り組んだけど、不合格になってしまった。」「悔しい、なんで?!」「次は絶対!!」そんな気持ちが選手たちを1回りも2回りも大きく成長させると思うので、ある意味選手にとって大きなチャンスだと私は考えています。

悔しくて泣いたり、挫折した数だけ成長できると思います。私もよく悔しくて一晩中泣いたり、悔しすぎて自宅から10キロほど離れた試合会場から家まで走って帰ったこともありました。懐かしいですね。あの経験をしていなかったら、今こうして私もコーチとして活動することもなかったかもしれないです。


黄色ベルト試験に挑んでいる選手の様子


緑帯試験に挑んでいる選手の様子


紫帯に挑んでいる選手の様子


審査員の様子

オフショットof ブータン柔道協会

今回から新シリーズとして章の最後にオフショットコーナーを設けさせて頂こうと思います。実はこれまでのNo1-7で使用してきた写真ほとんど私が一眼レフカメラで撮った写真を使用しています。

私は、ナショナルコーチとして通常選手たちを指導していますが、実はブータン柔道協会のカメラマンとして選手たちの写真、練習や活動の様子、柔道イベントでの撮影をしています😊たまに主がカメラマンかなって思う時もあるくらいです。(指導には120%で選手と向き合っています。)ブータンに来て約4-5000枚柔道の写真をとってきました。最近は、日本から一眼レフを持ってきてよかったなとものすごく思っています。

また、最近では少し選手たちが羨ましいほどに写真をイベントごとに撮っています…。そんなこれまで使われてこなかったオフショット等を毎回少しずつ載せさせていこうかなと思います。


上級シニアメンバーみんな仲良し


先生!!僕たちかっこいいですよね!?


守りたいこのまんまる笑顔


大会入賞記念にイェーイ

さいごに

今回は1月20日にブータンで開催しましたNational Winter Judo Championshipsと31日に開催しましたWinter Judo color belt Testについてお話しさせて頂きました。

まず、National Winter Judo Championshipsについてですが、新たな試みとして行った3チームによる男女混合団体戦がものすごく白熱した試合をしていて、選手、コーチたち一丸となって試合をしていたのを見て、私はものすごく嬉しかったと共に、今回からゲレフというブータンの南にある地方から出場した選手たちによってより多くの選手たちから「負けたくない」という気持ちが見れた素敵な大会になりました。結果はどうであれ今回の大会が出場した選手たちにとってこれまでWinter Campでの練習やトレーニングによって培ってきたものを実践するよい機会になれば、私としては大成功だと思います。また、この大会を通じて「悔しい」、「負けたくない」、「次は勝ちたい」「もっと柔道がしたい」「柔道ってこんなに楽しいんだ」っていう気持ちにつながり今後ブータン柔道の発展の立役者になってくれたら嬉しいですね。

次に、31日に行いましたWinter Judo Color belt Testですが、大会はもちろんですが、この昇級試験が選手たちの成長を一番に見られる素敵な機会だと私は思います。上級色帯になれば難易度が高くなり技術、精神面における「柔道」というものが非常に重要になります。また、昇級試験では、技の技術、受け身等はもちろんですが選手の礼法にも審査員は注視して見ています。今回も技は上手にできているけど、礼法が全くの選手がいました。

この昇級試験の閉会式に私は全員に対して「なぜ私たち柔道家は礼法をしなければいけないのか?」という話をしました。いろいろなこと背景はありますが、私がその時に伝えたことは、「どんな時でも対戦相手、先生、先輩や仲間たちに対してリスペクトを忘れてはいけない」。「柔道における礼法というものは相手への尊敬の意と感謝の気持ちである」と話しました。

また、私は柔道は決して一人では行うことができないと思っています。相手がいるからこそ打ち込みができ、乱取りができ、試合ができる。だからこそ柔道している私たちは礼法をきちんとして相手へのリスペクトを示す必要があると思っています。そして、彼らはこのことを次の世代の選手や後輩たちに伝えていき、次の世代の選手たちの手本となり練習に励む必要があると話しました。

今後も技術はもちろんですが、技術以上に「柔道家とは?」という部分などをきちんと彼らに伝えていき、彼らには真の強さをもつ柔道家になっていってもらいたいと思います。

また、2月14日には南アジア諸国(ネパール、インド、バングラデシュ、スリランカ)日本チームを招待したブータンで開催されます。この大会は日本の兵庫県神戸市で開催されている自他共栄トーナメントのブータン大会として昨年3月に第一回大会を開催しました。今年は、今後の更なる南アジアの柔道の発展等を目的として南アジアの柔道チーム、日本のチームを招待した国際大会として開催されます。14日の大会に先立って11日からは出場選手による合同練習、講習会等が予定しています。この素敵な機会にコーチである私も選手と共にたくさんのことを学びたいと思います。

また、この大会が無事、素敵な大会で終われるように協会メンバー、運営陣、コーチ陣で一丸となって全力で行なっていきたいと思います。

次回について

上記にも記載しましたが、2月14日にブータンで2nd 自他共栄トーナメント Bhutanが開催されます。この大会は南アジア諸国(ネパール、インド、バングラデシュ、スリランカ)、日本チームを招待したブータン柔道では初めての大きな国際大会開催となります。大会前日程の11日から13日では、出場選手による合同練習会、各講習会等を現在予定しています。次回は大会、合同練習会、講習会、運営裏側等についてお届けしたいと思います。

次回の投稿も楽しみして待っていただけたら嬉しいです。

少しでもこの記事を見てブータン柔道について興味を持っていただいたり、応援してくださったりすると嬉しいです。

何かブータン柔道などについてご質問等がございましたら下記の私のインスタグラムへご連絡ください。

今回も最後までご覧いただきいただきありがとうございます。

Kadrin Chhe la(現地語ゾンカ)ありがとうございました。
Lok jae ge la(現地語ゾンカ)また会いましょう☺️

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