エベレスト標高3790mのクムジュン村の学校で柔道場の建設が開始されました。エベレストの日にあわせて行われた竣工式に、ネパールで活動を行っている古屋祐輔さんが参加してくださいました。
エベレスト柔道はモンジョ村にも柔道場があります。どのようにして、エベレストに村に柔道がひろまったのか。古屋祐輔さんからのレポートです!
その1はこちら
【ネパール柔道連盟Deepak Bajracharya会長(左から一番目)、Forever Everest活動をしているエベレストオーストラリアの柔道家サブリナ・フィルツモザーさん(左から2番目)、古屋祐輔さん(右から一番目)】
エベレスト柔道のこれまで
エベレスト柔道のこれまでについて簡単に説明させてください。
エベレスト地域には現在二つの道場があります。
標高2850mのモンジョ村に一つと、今回竣工式典が行われている標高3790mのクムジュン村に一つです。
モンジョ村の柔道場は2016年に完成し、柔道が開始されました。道場はモンジョ学校の敷地内に建設され、モンジョ学校の生徒が柔道を始めました。カジ先生の指導の元、子供たちも柔道に熱心に取り組み、ネパールの国内大会で銀メダルを獲得する子供たちも出てきました。
しかしモンジョ学校は、日本でいう中学生の年齢までしかなく、モンジョ学校を卒業した子供たちは皆、高校生になるタイミングでクムジュン村にある学校で寮生活を始めてしまうのです。
なので、中学まで柔道を頑張っていたのに、高校生になって柔道部がなく柔道が続けられないという事態が起きていました。
【モンジョ村柔道場】
そして「柔道をしたいのに続けられない」という事情を知ったJUDOsが柔道の畳を3790mのクムジュン村に寄贈してくれたのです。2020年11月に畳は届いたのですが、その後コロナの影響により、柔道の練習は開始されず、畳が届いてからおよそ1年の月日が経ってようやく柔道の練習が開始されました。
(写真 クムジュン村の道場)
こちらの写真はクムジュン道場の初練習。こんなにも子供たちが柔道の練習を待ち侘びていたのです。想定以上の柔道の人気に急遽、柔道の部屋の数を二つにして対応しました。
今でこそ、こうしてこのクムジュン村で柔道が受け入れられるようになりましたが、エベレストで柔道を始めた2016年の当初は上手くいかないことも多くありました。
当初は村の人から「スポーツなんかにお金を使うよりも、村の設備だったり、観光客が増えるようなことに力を割いた方がいい」との反対の声も多くあったのです。
村の人の言い分もよくわかり、エベレスト地域は大会があって、コーチがいるような「スポーツ」と言うものは今まで一つもありませんでした。村の人たちの中では、スポーツというのはただの遊びで、暇つぶしのためのものとしか認識がなかったのです。
そんな中、エベレスト柔道のカジ先生は「柔道はスポーツだけでなくて、心を育てるものなんだ」ということを村の人たちに理解させるために奮闘しておりました。村人に口で伝えるだけでなく、日々の姿勢でも伝えるようしました。カジ先生は「柔道をするということは誰よりも礼儀よく、人に感謝することだ」ということを柔道家たちに言い聞かせておりました。
「礼儀」「勇気」「友情」「誠意」「道義心」「謙遜」「尊敬」「自制心」
こちらの柔道で教えられる8つの道徳についてはカジ先生の家にも、柔道場にも飾られているものです。
カジ先生の努力の結果、今では信じてくれないことも多いのですが、子供たちの中には柔道を始める前は、髪を金髪に染め、ピアスの穴をいくつも開けていた子供もいました。ですがそのような子供も、柔道を始めてから、人が変わったように礼節を重んじるようになったのです。
そして2018年に国内でのジュニアのネパール柔道大会に初めて出場した子供たちがメダルを持って帰ってきました。ようやく村人の柔道に対する風向きが変わりました。村人たちも柔道が飛躍するように後押ししてくれるようになったのです。
国際柔道連盟IJFのホームページでもカジ先生を取り上げております。(Nepal, Blog 8: Coach Kazi Sherpa)