2022年5月29日、エベレストの日にあわせて行われたクムジュン村での柔道場の竣工式に、ネパールで活動を行っている古屋祐輔さんが参加してくださいました。100名もの子供たちが柔道をするようになったエベレストの村に、柔道はこれからも広がっていきます。
古屋祐輔さんからのレポートです!
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【IJFの取材クルーと古屋さん(画面中段の右側)】
エベレスト柔道のこれから
現在ではモンジョ村とクムジュン村を合わせて、およそ100人の子供たちが柔道を学んでいます。そして柔道を通して変わったのは子供たちだけではありません。村の人たちも柔道を応援するようになり、この村の村長もこれからは柔道を通してこの村を発展させようと協力をしてくれるようになったのです。
畳を送ったと言うことだけで、これまで世界が変わることを誰が信じられたでしょうか?
実は、この式典が終わってから、クムジュン村の柔道場を設置したヒラリースクールが、柔道を学校の必修科目として取り入れて、子供たちに礼節を学ばせようと話し合っているんです。実現したら500名いる全校生徒が皆、柔道から様々なことを学ぶようになるんです。
近い将来「柔道の村」としてクムジュン村が名前を残すようになってももはや不思議ではありません。私も歴史が変わる瞬間に立ち会っているのではないか、なんて事も感じています。
他にもエベレスト柔道のこれからについて大きなプロジェクトが3つほどあります。そして、私の所見だけでなく、エベレスト柔道のコーチのカジ先生やエベレストの住民の人たちの想いを混ぜて書かせてください。
一つ目は、エベレスト柔道の良さを世界中の人が感じやすいように『エベレスト柔道ツアー』を作り、世界中の柔道家がエベレストに集い、柔道で交流ができるような場所にしたいと考えております。2022年7月現在、ヨーロッパからの柔道家が2名、エベレスト柔道クラブに行き、3週間滞在すると決まっております。このように世界中から柔道家が憧れの地として訪れるようになり、世界中の柔道の想いを集め、共有する場所になるようにしたいです。
二つ目は、エベレストに畳を敷き詰められる大きな武道館を作ることです。現在は学校のホールを利用させてもらい、そこに畳を敷き詰めているのですが、しっかりとした武道館を作ることで、より柔道する環境を整えることができればと考えています。
そして世界中の柔道家やアスリートたちが高地トレーニングの場所として利用するようになれば、エベレストの人たちにとってだけでなく、世界中の人たちに価値を提供できるようになると思っています。
実は標高3790mのクムジュン村ですと、アスリートが高地トレーニングをする場所としては高地過ぎてしまうという難点もあり、現在、場所や予算などを模索中です。
そして三つ目は世界一高い場所という地の利を活かして、標高3790mのクムジュン村を舞台にして『世界一高い柔道大会』を開きたいと考えております。
観光業がメインのネパールという国で新しく「スポーツツーリズム」という文化を根付かせたいです。登山のために山を登りにくるのでなく、柔道やトレーニングのために山を登りにくることで、今度は山だけでなく、エベレストで暮らす人々に光が当たるようにしたいと思っています。
もちろん、エベレストが舞台になった暁には、負けるつもりはありません。エベレストの子供たちが優勝してメダルを獲得するというのが私たちの大きな夢です。
最後に・・・
私もモンジョ村のエベレスト柔道の建設の初期からここまで携わらせてもらい、この「エベレスト柔道」というが一つの大きな登山なのだろうと思っています。
エベレスト道場の建設も、登山をするかのように、ゆっくりとゆっくりと時間をかけながらここまで登ってきました。もちろんこの活動をする上で疲れや困難などもあるのですが、やはり子供たちが柔道衣を着て、微笑んでいる姿、「将来は柔道の先生になるんだ」って語ってくれる子供たちの言葉、その一つ一つが私にとっては、山から眺める絶景で、これまで幾度となく壮大な景色を見てこられたのだと思っています。
今私が立っているところは、まだ頂上までの中腹くらいでしょうか。これからも登山のように急がず、ゆっくり登っていきたいです。
「山はこれ以上大きくならないが、私たちはもっと成長できる」
この言葉は世界で初めてエベレストに登頂したエドモンド・ヒラリー氏の言葉です。
私たちは今回クムジュン村のエベレスト柔道クラブの落成式典を5月29日に設定しました。
これはヒラリー氏が初めてエベレストに登頂した1953年5月29日を敬して、私たちも世界一の頂きに登ろうと想いを込めたものです。
「山はこれ以上大きくならないが、私たちはもっと成長できる」
ヒラリー氏がエベレストに登頂した日に、私たちもこの言葉を噛み締め、世界一高い場所から「柔道」を通して私たちはもっと成長していきます。