ブータン🇧🇹より【カディンチェ柔道日記!No.7】

JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。

南アジアのブータン王国でJICA青年海外協力隊として活動をしている福井勇貴さんからの活動報告です!


カディンチェ柔道日記🇧🇹🥋

作成日:2023/1/14
作成者:福井 勇貴

※Kadrin Chhe la(現地語 ゾンカ)ありがとう
ブータン柔道はこれまで多くの方々のご協力、支援があってここまで来ました。
そんな感謝の気持ちからタイトルコールはカディンチェとさせていただきました。

皆様、大変お世話になっております。

JICA海外協力隊としてブータンナショナルコーチをしています。福井 勇貴(ふくい ゆうき)です。皆様、新年のご挨拶が遅くなってしまい申し訳ありません。本年もどうぞブータン柔道と福井勇貴をどうぞよろしくお願いいたします。

また、新年早々に日本海側で発生しました大型の地震によって多くの方々が被災されたとブータンから日本のニュースを見て知りました。10日以上が過ぎた現在も連日の余震、多くの孤立状態の方々、避難所で生活されている方々が多くいらっしゃるとSNSやニュースでお見受けしています。

私自身、中学1年生の3月に東日本大震災を仙台市で経験しました。仙台市の中心部ではあったものの目を塞ぎたくなる状況、連日ラジオで流れる耳を塞ぎたくなる情報、日常が一瞬にして壊れたこと。13年を迎える今年も決して忘れたことはありません。

こうしている現在も今回の震災で苦しく、不安な生活をされている方々が多くいらっしゃると思います。被災された皆様に一日でも早く、心休まる日常が訪れますことブータンから心より祈っております。

誠に勝手なことではありますが、こんな時だからこそいつも通り私たちブータン柔道の活動をこのレポートを通じて紹介させていただき、皆様の何かの物事のきっかけやがんばろうと思う活力に繋がれば私自身ものすごく嬉しく思います。

さて今回のテーマは前回の最後にお伝えしたように、最近のブータン柔道の活動、Winter Judo Campの様子などをお話しさせていただきたいと思います。また上記の写真ですが、先日ブータン国内旅行に行った際に写真に収めることができましたオグロヅルです。日本では、鶴は縁起がいいものとされています。

そんなことから今回はこの挨拶の前に鶴の写真を添付させていただきました。

ぜひ、最後まで読んでいただけると幸いです。

クリスマスイベント in BJA

すでに少し前のことにはなりますが、クリスマスの前日の12月23日土曜日にブータン柔道のジュニアメンバー、シニアメンバーでクリスマスイベントを行いました。

ブータンにはあまりクリスマスを祝う習慣はありませんがこのクリスマスイベントで何か子供たちに得るものがあればいいなと思い当日の直前まで全員にサプライズで計画していました。

クリスマスイベントと言っても、午前中にみんなでレクレーションやトレーニングをして、ランチをみんなで食べて、柔道場の掃除をして、ケーキを食べながらみんなで雑談をするというものでした。

これを行った経緯としては、普段から一生懸命に頑張っている選手たちへ少しばかりのご褒美とこのように定期的なイベントや催し物を通じて、初心者からシニアの垣根を超えて柔道というコミュニティがさらに強くなればいいなと思い実施しました。

実際にケーキを食べている子供たちは、満面な笑顔でケーキを頬張っていたり、友達の顔に生クリームを塗ってふざけたりと、ものすごく楽しそうにしている様子を見て私もものすごく嬉しく思いました。


Feed Back International Tournament

12月末にシニアの選手たち皆で11月に国際大会に出場した選手たちのフィードバックを行いました。私たちは国際大会や国内試合を終えた後日シニアの選手全員でこのフィードバックを行なっています。

実際に行なっている内容を簡単にご説明しますと、全員で出場した選手のビデオを3回程度見て、その試合に関する意見(良かった点、改善点、反省点)をそれぞれノートに記入しその内容について全員で話し合って学びの場にして、今後の練習や試合に活かすというものです。

本来であれば、大会後すぐに行いたかったのですが、大会後立て続けに学校に通っているシニアの選手たちの全国共通試験が行われたり、建国記念日のブータンオリンピック委員会のイベント出たりとまともに人数が集まることができずここまできてしまいました。

以前もご説明をしたかと思いますが、日本ではシニアの選手といえば大学生の選手やそれ以上の選手、ナショナル選手がシニアと思い浮かぶかと思いますが、ブータンでは違いコーチ陣で話し合いを行い認められた14歳〜27歳の選手たちがシニア選手とされています。また、彼らは選ばれれば国際大会への出場もあります。

そんな14~27歳と様々な年齢の選手がシニアとして存在するブータン柔道だからこそこの試合後に皆で行うフィードバッグを私はものすごく大事にしています。

もちろん今ナショナル選手として活躍していて、国際大会へ選ばれる選手達はもちろんですが、今後ブータン柔道の更なる発展と活躍を目指すのは現在年年少として稽古やトレーニングに励んでいます次の世代の選手たちだと私は思っています。

そしてそんな彼らには今以上の発展を目指して欲しいと強く思っています。そんな次の世代の選手達と今第1線で活躍しているナショナル選手達が共に意見を交わして共に学び、成長の糧にする。そんな為にフィードバックを私は目指して行っています。

日本では、物事やるには計画をつくり、それに基づき経過、結果、そして反省が当たり前として行われていますが、ブータンではその部分があまり行われていないのが正直なところです。こちらに関しては

「柔道」という競技に限ったことではありません。というより、多くのブータン人がその方法を知らない、教わってきていないというのが、正解かもしれません。しかし、アスリートにおけるこのようなマネジメントというのは非常に重要ですし、時にそれによって大会などの結果を大きく変えることもあると私は思います。

そして、今回は去年から本格的にコーチとして活動をしている1人が代表になってフィードバックの会をまわしてくれました。そのフィードバックを見ていた私は、ものすごく嬉しい気持ちになったのともに、このフィードバックをきっかけに全員がなにか1つでも学びの種になればいいなと思いました。

そして、その会の終盤に私は「なぜ、このフィードバックをするのか?!」という話をしました。

コーチである私が自分で言うのはおかしい話ではありますが、学生時代の時はこのフィードバックをチームで行なっていた際に、正直、「別に面白いものじゃないし」「人の試合だし」「かったるいな」と思っていました。もちろん、自分の練習やトレーニングに対して、目標を設定し計画、経過、結果、反省ということはしていましたが、上記の意見が学生時代の私の本音でした。

しかし、当時そのようなことを経験して現在コーチという立場になったからこそ分かるのは、間違いなくあの場で多くのことを学んだということ。それは柔道における技術面はもちろん、共に同じ課題に向き合って意見を出し合う、そしてそれが習慣になればよりチーム力も上がり、チーム、個人として常に考えるという事が当たり前になり勝利へ近づくということです。当時学生時代、高校柔道部の恩師にはいつもこの話をされました。

「バカは絶対柔道強くなれない」

バカとは勉強がめちゃくちゃできるとか出来ないとかそう言うことではないと私は解釈しています。この場合における「バカ」とは、柔道の精神とは違う行動をしていたり、柔道をする上で何も考えることがなく、目標設定、反省等ができないことであると私は理解しています。

まさに、今このコーチという立場になってその言葉の意味がものすごくわかる気がします。実際にそのように活動をしてない人たちのことは一目でわかります。だからこそ、彼らには柔道をしている時には考えることを決してやめず、自分の目標に向かってどんなことでも突き詰められる選手になって欲しいと私は強く思います。そして、それは柔道が強くなる一番の近道だと私は思うからです。それが私がシニアの選手全員でフィードバックをしている大きな理由です。

今後もどんな試合もみんなでこのフィードバックを大事に継続していき、今後のブータン柔道の活躍に役立てていきたいと思います。


実際に課題点で見つかった寝技に関して実演をしながら説明をしているアシスタントコーチ


全員で出場選手のビデオを見ている様子

Winter Judo Camp 2023

前回のカディンチェ柔道日記No.6でも記載させていただきましたが、12月4日からWinter Judo Campを現在実施中です。

このJudo Campというのは日本の合宿のイメージとは少し違い、学校が冬休みになった子供達が午前中から柔道場に集まってみんなでトレーニングをして、学校の食堂を利用してみんなでランチを取って午後からまたみんなで柔道の練習をするというのがこのJudo campイベントです。

このイベントの趣旨として、まず選手個人の技術、能力の向上、課題の克服、成長、柔道というコミュニティ、仲間たちとの共闘、切磋琢磨を趣旨として年に2回長期休みの時期に行っています。このJudo Campの終わりには国内大会と昇級試験も組み込まれています。選手たちはキャンプの終わりに控えている国内大会での優勝を目標に頑張っています。上記の写真のように手前にはジュニアの選手たち奥にはシニアの選手たちが日本の少年柔道の打ち込みスタイルで列を作って打ち込みをしています。

本日は、先日実際にあったエピソードを1つ紹介させていただきます。

9歳のまだ身体は大きくないものの柔道に一生懸命取り組んでいる女の子がジュニアクラスにいます。彼女はこれまでは初心者クラスのシニアグループに属していましたが、今回のJudo Campの前に私は彼女を呼んで話をしました。「もし興味があるならジュニアクラスで練習したらどう?」と聞きました。その結果は「わかった。キャンプからジュニアで練習したい」と言いそれからはジュニアクラスで練習をしていました。彼女の性格もあり普段の練習を一生懸命取り組み、頑張っていました。もちろんジュニアクラスは14歳くらいの彼女からしたら結構身体の大きな選手たちもいます。そしてある日、普段通り彼女は一生懸命寝技の乱取りを立て続けに年長の選手に向かっていって頑張っていました。そしたら急に体育座りをして泣き出していました。

それに気がついて怪我をしたと思いすぐに駆け寄って「どうしたの?」と聞いたところ…。

なんとびっくり怪我とかではなく、どんなに頑張っても年長のお姉さんやお兄さんに勝てなくて悔しくて泣いていたそうです。それでもかなりの号泣で泣いていた彼女を見て私はもう一度聞きました。

「本当に怪我とかじゃないの?」そしたら「一生懸命向かって行ったけど全然勝てないし、悔しい…。」

と本人の口から出た言葉に私は、怪我がなかった安堵と9歳と幼い彼女ながらに柔道に関する熱い思いを聞いて微笑んでしまいました。正直、ブータンでこれまで約2年近く指導をさせていただいていますが、このような経験というものはあまりありませんでした。

そして、9歳のまだ身体も大きくないけど一生懸命柔道に取り組んでいる女の子がこんなにも正直に熱く熱心に柔道に向き合っていることに私はものすごく嬉しく思ったとともに、これまでの約2年間は決して彼らに対してできなかったことだけではなかったなと思い知りました。この時彼女の話を聞きながら、私はこのように柔道に真剣に取り組んでいる選手がもっとブータンで増えて欲しいと思ったと同時に、絶対にその悔しい気持ちを今後忘れないで欲しいと思いました。

このように今回のJudo Campは色々なことが日常で起こっていますが、選手たちと楽しく実のあるCampを行うことができています。また、Campの締めくくりになっているNational Judo Tournament 2023 Winterも20日(土)に開催が決定し、今回の大会では新たな試みで3チームによる男女混合団体戦を開催したり、過去最高参加人数を予定しています。また、その一週間半後にはWinter Color Belt Test2023も開催されます。残りのCamp期間を選手たちと濃く充実した時間にしていきたいと思います。


土曜日のジュニア、シニア選手合同によるエクササイズトレーニングの様子


午前中のトレーニング後にシニアの選手でランチを準備している様子

さいごに

今年は、私がブータンに来て3年目になります。この2年間で得た経験、知識を最大限に活用して、2024年はブータン柔道、福井勇貴個人としても去年をさらに上回る飛躍の年に両方の面でしていきたいと思います。今後もどうか温かい目で引き続き見ていただけると嬉しいです。

今回は最近のブータン柔道の様子としてクリスマスイベント、フィードバックの会、Winter Judo Campについてお話しさせていただきました。

Winter Judo Campの最後で載せさせていただきましたランチの様子の写真ですが、こちらはこれまでブータン柔道に興味を持っていただいてサポートいただいています。キン肉マンの作者のゆでたまご先生、Panasonic Indiaさんなどからこれまでにスポンサーとしてご支援していただいたもので選手たちのランチ、タンパク源(ゆで卵)を提供させていただいております。

ブータンは宗教的な面やさまざまな面でアスリートに必要な栄養源が日常から取れてない選手たちは多く存在します。

そんな状況を私たちは打破したいと考え、学校がなくシニアの選手として活動をしていて通常午前中あらトレーニングをしている選手たち、Summer Camp、Winter Campの2回の長期休暇に行われるCampの午前中からの参加者に関しては無償でランチを提供しています。

そのおかげあって、これまで体が細かった選手も普段の厳しいトレーニング、柔道の稽古、栄養満点のランチで体つきがどんどん変わってきた選手が多く存在します。

また、ただ体が大きくなっただけではなく、皆、着実に実力をつけてきている様子が普段の稽古の様子で伝わっています。このように私も含めブータン柔道が取り組むことができているのはこれまで多くのサポートしてくださる皆様があるからだと思います。

2024年もブータン柔道全員が多くの方々への感謝の気持ちを持って一生懸命にまた正直にブータンでの活動に取り組んでいきたいと思います。

また、今後1月20日には国内大会、31日には昇級試験を控えています。

そして、2月中旬には第二回自他共栄杯Bhutanを国際大会として南アジア諸国、日本チームを招待したカデ、プレカデの大会が開催されます。Camp最後まで気を抜かずブータン柔道一同精進していきたいと思います。

今年も引き続きブータン柔道の応援、ご指導をどうぞよろしくお願いいたします。

 次回について

次回は1月20日に開催のNational Judo Tournament 2023 Winterの様子とWinter Color Belt Test2023等の様子をお届けしていきたいと思います。

少しでもこの記事を見てブータン柔道について興味を持っていただいたり、応援してくださったりすると嬉しいです。

さいごまでご覧いただきいただきありがとうございます。

Kadrin Chhe la(現地語ゾンカ)ありがとうございました。
Lok jae ge la(現地語ゾンカ)また会いましょう☺️種SNS

☆Bhutan Judo Association official Facebook
https://www.facebook.com/BhutanJudoAssociation?mibextid=LQQJ4d

☆福井勇貴 活動アップロード Instagram
@jocv_fukui_yuki
https://instagram.com/jocv_fukui_yuki?igshid=MjEwN2IyYWYwYw==


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