ブータン🇧🇹より【カディンチェ柔道日記!No.13】

JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。

南アジアのブータン王国でJICA青年海外協力隊として活動をしている福井勇貴さんからの活動報告です!


カディンチェ柔道日記🇧🇹🥋

※Kadrin Chhe la(現地語 ゾンカ)ありがとう
ブータン柔道はこれまで多くの方々のご協力、支援があってここまで来ました。
そんな感謝の気持ちからタイトルコールはカディンチェとさせていただきました。

皆様、お世話になっております。

JICA海外協力隊としてブータンナショナルコーチをしています。福井 勇貴(ふくい ゆうき)です。

ブータンでは、5月半ばから雨季の季節になるのですが、今年全く雨が降らず、ものすごく晴れてその後、どんよりとした曇りといった天気が最近のブータンの気候です。

ブータンの雨季は雨季といっても一日中雨が降るというのではなく、午後から2時間程度スコールのような大雨が降るというのがブータンの雨季です。私がブータンに来た2022年の4月から8月ごろまでは、毎日16時くらいから2時間程度ものすごい量の雨が降って脛くらいまで水が浸かってしまうほどの雨季でしたが、これも地球温暖化の影響なのでしょうか…?!

さて今回のテーマは前回の最後にお伝えしたように、5月20日に4月に香港で開催されたAsian Judo Championshipss2024の大会フィードバックミーティングをシニアクラス全員で行いました。

また、アスリートミーティングをカテゴリーごとに実施しました。今回は2つのミーティングについてお話しさせていただきたいと思います。

Feedback of Asian Judo Championshis2024

5月20日に4月にブータン柔道協会から2名が出場しましたアジア選手権のフィードバックミーティングをシニアクラスに在籍する選手全員で実施しました。

以前にも少しお話しさせていただきましたが、私が大会の振り返りを出場した選手だけでやるのではなく、シニアクラスに在籍する全員で行っています。

それにはいくつかの理由があります。

1つ目としては、私たちは世界的に見ても決して大きな協会ではないです。そして、他国の協会に比べて、資金もたくさんあるわけではありません。限られた予算で国際大会出場や国際合宿へ参加させていただいています。

そんな状況も含めて、選手たちにはただ国際試合に出場して終わりにしてほしくないと思うからです。選手として活動をするのにあたって、目標設定、その目標に沿った計画、そして計画に基づいた稽古やトレーニング、大会等での実践、そしてその実践で見つけた課題の研究、反省というのが非常に重要だと私は感じます。

もちろん試合において技術等も需要ですが、それと同様もしくはそれよりもはるかに上記の内容が非常に重要だと感じます。実践における準備段階や反省・振り返りがいかに突き詰めてできるかが勝利への1つの鍵だと思うからです。

2つ目としては、上記に記載しましたがシニアクラスに在籍していると言っても資金的な面から全員が国際大会へ出場できる機会があるわけではありません。そのため、出場した選手の試合を他の選手も多角的、客観的に分析して、自分の練習や大会へ活かしてほしいというのが2つ目の狙いです。

3つ目としては、ブータンでコーチをして2年以上がたちますが、正直ブータンの人々は柔道に限らず、様々な場面において目標設定、それに基づいた計画、実施、反省などといった行動をとることがありません。その背景には幼少期などに学校や家庭などでこのような方法を学んだことがないからです。それは、やり方を知らなくて当然です。しかし、選手としては致命的だと私は感じます。このような背景から私は、5月から全シニアメンバーに新たなことを始めました。このことに関しては、次の章でお話しさせていただきたいと思います。

上記の面から私たちは国際大会等に出場した際は、全員でフィードバックミーティングを行っています。今回も、出場したナショナル選手2人、アシスタントコーチ2人、シニアメンバー14人が参加し、互いに意見交換を行い、今回の反省点を次戦までに改善できるようなミーティングをしました。

私は、いつもこのミーティングでは、多くの質問を全員にしています。

例えば出場した選手には、「自分が感じた今回の大会でのパフォーマンスについて」「どんな点が今回新たにチェレンジすることができて、どんな点が良かったか?また、どんな点を改善する必要があるか?」そして、出場していない選手にも、「今回出場した選手の大会を見てどんなことを感じるか?」「彼らが更に上のレベルに行くにはどんなことが必要なのか?」などといった質問、アドバイスを選手たちで話し合いができるようにマネジメントをしています。

また、実際に選手やコーチ間の中ででたアドバイスをただ話すのではなく、柔道衣を着て実際にアドバイスする側が動きながらコーチングをするということも同時にしています。

今回のフィードバックミーティングもとても活発な意見交換ができ、良いフィードバックの場になったと思います。今後もこのようなフィードバックの場を大事にしていき、国際大会での成績、次の世代に選手育成に役立てていきたいと考えています。

また、このようなことは私が離任した以降も選手たちが自発的に行えるように残りの期間伝え続けていきたいなと思います。


自分の感じた点をノートに収めている様子


試合のビデオを見て自身の考えをノートに収めている様子

ブータン柔道協会 アスリートミーティング

上記のフィードバックミーティングを実施した後にシニアメンバー、カテゴリーごとにアスリートミーティングを実施しました。

今回のこのミーティングを実行した背景としては、シニアメンバーの出席率の改善と選手たちのモチベーション維持のために実行しました。また、上記に記載しましたが、このミーティング後から新たなことを始めました。

それは、毎月自分の目標・ゴールシートを書いて壁に貼るというものです。

もっと詳しく説明をすると、自分の大きな目標と小さな目標を記載し、その自分で書いた小さな目標は毎月達成し、その目標を達成するために、どんなことが必要なのか?各自で記入して、その自分で記載した内容をその月に集中して取り組むという内容のシートです。

また、毎月この目標シートを選手たちが記載して終わりではなく、月末には、自分の記載した目標シートに対するフィードバックシートを用意して、自分の設定した目標、やらなければいけないことに対しての自分のパフォーマンスはどうなのか?その目標を実施してどんな成果を得たのか?等を各自で振り返り、翌月には前月のパフォーマンスから、どんなことを取り組むのか?等を記載し、そのフィードバックシートをコーチ陣が読んで、コーチからのアドバイスを1つの紙に記載して返却し、その紙を全ブータン柔道メンバー、保護者が見ることができる、柔道場の壁に貼るということを始めました。

このシートを実施した背景として、普段の練習でのモチベーションの維持、自分の目標を見失わなずに、効率よく選手間のパフォーマンスを向上するために実行しました。

ただ選手たちが目標シートを書くのではなく、コーチ陣と共同でこの紙を実行することで、コーチ陣がこの選手はどんなことを集中して今月練習に取り組んでいて、それのパフォーマンスはどうかというのが見える化できると思い実施しました。

始めて1ヶ月以上が経過しましたが、選手たち、コーチ陣にとってとても良い刺激になっていると思います。

日本では、PDCAサイクルのように、自分の目標を設定し、その目標に沿って計画をし、その計画に沿って実行し、フィードバックをし、反省をして、次のステップに繋げるというサイクルをする人が多いですし、そのようなサイクルが良いパフォーマンスが出すことができるとされていますが、ブータンの人々は、計画どころか、目標設定というものも学校や家庭で教わったことがない人がほとんどです。

実際に、高校生のシニアメンバーに「何が自分の目標?」と聞くと大体は、「強くなる」という返答です。同じ質問を日本の高校生にするときっと「インターハイ出場」「団体戦県大会優勝」などといった具体的な返答がくると思います。また、その具体的な目標と同時に、その目標を達成するために、何が必要なのか?どんなことをしなければいけないのか?というのが全て明確になっていると思います。しかし、このことはブータンの子供達が悪いとかそういうことではなく、そのような教えを受ける機会がなかったということだと思います。

高校生の選手だからといってすでに遅いということではなく、高校生というある程度、きちんと自分のことを考えることができる年代だからこそ、今回新たにこの取り組みを始めました。

きっとこのことが選手たちの習慣になるのは、ものすごく時間を要しますし、なかなか受け入れる事が難しいと思いますが、コーチ陣の私たちが協力してこの取り組みに力を入れていき、

ブータン柔道の成績向上への1つの取り組みになれば良いと思います。

また、このミーティングでは、私だけではなくコーチ陣やナショナルアスリートからも多くのことをシニアメンバーに話してもらいました。コーチやナショナルアスリートたちは、これまで多くの経験があります。国際大会への出場経験やどんな稽古をこれまでしてきたのか、日本へ4年間柔道留学に行っていた選手もいます。

そんな人たちからの貴重な意見は選手にとってもとても良い刺激になっていました。

ある意味私たちは恵まれていると思います。それは、国際大会に出場しているチームの中できっと世界で一番小さな柔道協会だと思いますが、ナショナル選手やシニア選手がいつも一緒に稽古やトレーニングをすることができていて、多くのことを彼らから学ぶことができ、その技術や方法を盗むことができる環境にあるということです。しかし、このことは決して当たり前ではなく、とても恵まれているということだと思います。

次の世代の選手たちには、目の前で一緒に稽古やトレーニングをしているナショナル選手やコーチ陣の背中を追いかけてひたむきに柔道に取り組んで行ってほしいと思います。

 

Other shot of BJA

今回も最近のブータン柔道協会のオフショットを少しばかりですが、載せさせていただきたいと思います。


ナショナル選手からシニアメンバーへアドバイスを


ナショナル選手からジュニアメンバーへアドバイスを


ナショナル選手のランニングトレーニングの様子 


ナショナル選手のロープ引きトレーニングの様子


初心者クラスの稽古の様子


初心者クラスの稽古の様子

おわりに

今回は、4月に香港で開催されましたアジア選手権のフィードバックミーティングをシニアメンバー全員で行いました。またカテゴリー別に行ったアスリートミーティングについてお話しさせていただきました。

まず、フィードバックミーティングについてですが、これまでの私のカディンチェ柔道日記を読んでくださっている方はご存じかと思いますが、私たちは、国際大会に出場した際に、出場した選手、出場していない選手に限らず、シニア選手全員で出場した選手のフィードバックを全員で行っています。このフィードバックミーティングを初めて一年以上が経過しますが、始めた頃に比べて全員が意欲的、積極的にこのミーティングに参加することができているなという印象があります。

出場した選手はもちろん大会での反省、次に活かす機会にし、出場していない選手も出場した選手から多くのことを学び、客観的に考えてほしいという意味を込めて実施しています。

次に、アスリートミーティングですが、今回から新たに自分の目標を明確にし、自分の成し遂げたいことを明確にするために目標シートとパフォーマンスフィードバックシートをシニアメンバー対象に毎月実行することを始めました。また、私以外の現地で活動しているアシスタントコーチやナショナルアスリートからこれまでの自分の経験や次の世代の選手たちの選手へ向けてのアドバイスを話す時間を設けて、様々な話をしてくれました。

日本ではなかなか代表選手や代表チームのコーチの話、アドバイスを聞く機会というのは、ないと思いますが、私たちは小さいチームだからこそ全員が一堂に介して、様々な話をするということができます。実際にコーチやナショナルアスリートの意見や考え、これまで自分がどのようなことをしてきたなどを聞いていた選手たちはとてもキラキラした目をしながら話を聞いていました。

正直、私はどんなに頑張っても現地のブータン人にはなれません。日本人のままです。

もちろん日本人、昔から柔道の国日本で柔道をしてきているからこそ伝えられることがあると思いますが、現地でこれまでどのように積み重ねてきたのか、ブータン柔道ができて最初のメンバーと言っていい彼らがどのようにして今ナショナルアスリートになったのかというのを、次の世代の選手たちに伝えていくというのは非常に重要だと考えますし、それらが彼らの使命で、さらにブータン柔道が大きく成長するには重要だと考えたので、今回アスリートミーティングで彼らから様々な話をしてもらいました。

また、今回から始めたシートの背景は、ブータンのシニア選手といっても多くはまだ学校に通っている高校2、3年生です。

そして、日本と違いブータンでは、中間考査、期末考査によって落第が決まってしまいます。試験結果によって落第になってしまえば、同じ学年を翌年も受けなければいけません。

なので、テスト前約2週間を含むテスト期間には柔道には来ないでテスト勉強に没頭するというのが文化的にあります。そのような様々な状況の中でも自分の柔道での目標、成し遂げたいものというものを見失わず、モチベーションを高く柔道を続けてほしいと思い今回新たに始めました。

このシートの準備、説明を選手たちにしている時に、自分も中学、高校生の時に似たようなことをして自分の部屋の壁にはっていたなと少し懐かしくなったとともに、このシートが自分の学生時代の柔道のモチベーションをどれだけ支えてくれたかと思い出しました。

私たちブータン柔道協会は世界的にものすごく小さな柔道協会ですが、その規模以上に大きなチャンスが様々な場面にあると私は感じています。そのチャンスというのは具体的に代表選手になることや国際大会への出場、勝利の可能性だと感じています。

なので、今回から始めた一連の活動を通じて選手たちが自分たちで考えて実行し、どんどん成長していってほしいと思いました。

もちろん柔道家としての技術の練習等は重要ですが、このように全員で話し合う時間や自分に向き合う時間というものを今後も大事にしていきたいと思います。

すでにもう準備を進めていますが、6月28日から約2週間の夏合宿が始まります。この夏合宿の初日の午後の練習の時間には、柔道の稽古ではなくPDCA サイクル(計画・実行・反省等の継続的行動改善を支援するサイクル)についての説明やアスリートにとって重要なことなどについてパワーポイントを使用して説明し、話し合う時間にして、始夏合宿をより充実したものにすべく実施したいと考えています。

次回では、上記で記載しました、6月28日から始まる約2週間の夏合宿の様子、選手たちの様子、初日に実施するPDCAサイクルについてのミーティング等についてお話しさせていただきたいと思います。

次回について

次回は上記に記載のように、28日から始まりました夏合宿に様子、合宿初日に実施しましたPDCAサイクルについて等のアスリートミーティングについてお話しさせていただきたいと思います。

次回の投稿も楽しみして待っていただけたら嬉しいです。

少しでもこの記事を見てブータン柔道について興味を持っていただいたり、応援してくださったりすると嬉しいです。

何かブータン柔道などについてご質問等がございましたら下記の私のインスタグラムへご連絡ください。

今回も最後までご覧いただきいただきありがとうございます。

Kadrin Chhe la(現地語ゾンカ)ありがとうございました。

Lok jae ge la(現地語ゾンカ)また会いましょう☺️

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