ミャンマー🇲🇲より【めんでん 柔道記 No.10】

JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。

ミャンマー🇲🇲・ネピドーで柔道指導を行っている平沼大和さんからの活動報告です!


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めんでん 柔道記
〜4,364km離れたミャンマーの地で🇲🇲vol.10〜

皆様こんにちは。ミャンマー柔道ナショナルチーム監督の平沼です。

いよいよ今月、フランスのパリでオリンピックが開催されます。私たちミャンマー柔道チームには、国際オリンピック委員会から「ホワイトカード」という特別出場権が与えられました。しかし、残念ながらミャンマースポーツ省の方針により、SEA Gamesで金メダルか銀メダルを獲得した選手でなければ出場を承諾しないため、今回のオリンピックには参加することができません。

この貴重な機会を逃すことは非常に残念ですが、今後のSEA Gamesで金メダルまたは銀メダルを獲得し、2028年のアメリカ・ロサンゼルスオリンピックを目指して努力してまいります。

さて、今回は5月に旧首都ヤンゴンで開催された柔道大会についてご報告させていただきます。

ヤンゴンで開催された柔道大会

今回の大会は、昨年参加したマレーシアでの大会からインスピレーションを受けてミャンマー柔道連盟が主催しました。目的は、JUDO IN SCHOOLや柔道クラブの若手選手たちに経験を与えることです。そのため、階級が非常に細かく分けられており、メダルが獲得しやすいシステムになっていました。私が道場長を務める平沼道場からは、男の子が6名、女の子が3名参加しました。道場を立ち上げて一年も経過していませんが、今回の大会は平沼道場としての初試合となり、大きな節目となりました。

また、今回の試合で使用された柔道畳や柔道衣は、昨年寄付していただいた物を使用させていただきました。寄付者の皆様に深く感謝申し上げます。


使用された試合会場(手前試合場の畳が昨年に寄付していただいた物)


JUDOsのTシャツを着て記念写真


JUDOsのフラッグを持っての記念写真

道場生たちの成長ぶりと試合結果

道場生たちの成長ぶりは素晴らしいものでした。教えてきた内容は基本中の基本です。柔道第一教の技と、二つ持って柔道をすること、そして怖がらずに大きな声を出すことを中心に、ミャンマー人コーチと協力しながら指導してきました。その成果が今回の良い結果に繋がりました。

最終結果は、参加した道場生全員がメダルを獲得し、15歳以下のカテゴリーで男女共に最優秀選手を獲得しました。さらに、チームとして総合優勝も達成しました。この驚くべき結果に感激しています。

特筆すべきは、教えたことのない技で勝利した選手がいたことです。具体的には、内股という技です。本来、内股は柔道五教の技で、第二教や第三教に分類される技であり、通常は2年から3年の稽古を積んでから取り組む技です。それにもかかわらず、その技を密かに練習して試合で成功させた選手がいました。

その選手は弱冠9歳の女の子ですが、おそらく動画やナショナルチームの練習を見て、自分で試していたのでしょう。改めて子供たちの可能性に衝撃と感動を感じました。私もまた、「やってみる」ということの素晴らしさを学ばせていただきました。


表彰式後の集合写真

黄色帯授与

大会での入賞及びこれまでの過程を評価して黄色帯を授与しました。その他にも色々な理由で大会に参加できなかった道場生にも試験を実施して黄色帯を授与しました。この昇級制度は成長を客観的にわかることだけでなく、道場生たちのやる気と達成感にも繋がる素晴らしい制度だと思います。黄色帯の次は緑帯を考えているので引き続き頑張ってもらいたいです。


ミャンマー人コーチから選手に黄色帯と証書を渡している様子

道場長としての感想及び今後について

再度になりますが、あまりにも出来すぎた結果に驚きを隠せません。柔道に限らずミャンマーでは競合が少なく、成長率が高いため、成果に結びつくのが早いです。しかし、長期的には競合相手がいなくなり、競争がなくなることで緊張感が欠けてしまう懸念があります。私たちが教えてきた内容は基本中の基本で、一年も経っていません。それでも勝ててしまうのは、厳しい意見ですが全体のレベルが低いことの証明でもあります。

具体的には、釣り手と引き手を二つ持って柔道ができない、柔道の技というよりも捻り倒すか、相撲の四つ組みのような体勢で勝利すること、寝技での攻防が皆無に近いことが問題です。

ミャンマー柔道界全体の発展を考えると、私たちだけが進歩しているのでは相互のためになりません。今後は、自他共栄の精神で、柔道ができる環境をさらに整え、広げていくことが重要です。つまり、自分たちだけでなく他の道場やクラブも含めて、全体で栄え発展していくことがテーマになります。

これには、カナダの中村浩之先生や他の先人が一国で柔道を広め発展させてきたように、短期間ではなく、何十年という長い時間がかかります。しかし、私は自分にできることを精一杯やるしかありません。これからも努力を続けていきます。

おわりに

今回の大会は親御さんやサポーターの皆さんのご支援があってこその成果です。特に、昨年寄付していただいた柔道畳や柔道衣が大いに役立ちました。皆様のご支援に心から感謝申し上げます。少しずつミャンマーの状況が悪化してきており難しいことも多々ありますが、これからも精一杯やっていくのでどうぞ応援のほどよろしくお願いいたします。

参考文献

1. Behind Each #WhiteCard, There is a Story. IJF Official Website
https://www.ijf.org/news/show/behind-each-whitecard-there-is-a-story
2024/07/06閲覧

2. World Olympian Association / World Olympic Association official website
 https://olympians.org/news/1100/join-the-whitecard-campaign-by-april-6/
 2024/07/06 閲覧

3. JUDO IN SCHOOL / International Judo federation Official website / https://schools.ijf.org / 2024/07/06閲覧

4. 公益財団法人 全日本柔道連盟公式サイト.その道は一本 ~柔道が世界をつなぐ~
 中村浩之さん.https://www.judo.or.jp/news/545/.2024/07/06閲覧

平沼大和(ひらぬまやまと)
1997年北海道生まれ、2023年からミャンマー柔道連盟ナショナルチーム代表監督。中央大学商学部会計学科卒業、体育連盟柔道部所属。柔道実業団選手としてスポーツひのまるキッズ協会に所属の後、カナダ柔道連盟ナショナルチームアシスタントコーチを経て現職。


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