ブータン🇧🇹より【カディンチェ柔道日記!No.4】

JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。

南アジアのブータン王国でJICA青年海外協力隊として活動をしている福井勇貴さんからの活動報告です!


カディンチェ柔道日記🇧🇹🥋 No.4

作成日:2023/10/25
作成者:福井 勇貴
※Kadrin Chhe la(現地語 ゾンカ)ありがとう

ブータン柔道はこれまで多くの方々のご協力、支援があってここまで来ました。
そんな感謝の気持ちからタイトルコールはカディンチェとさせていただきました。

皆様、お世話になっております。
JICA海外協力隊としてブータンナショナル柔道コーチをしています。福井 勇貴(ふくい ゆうき)です。
最近ブータンでは、すっかり秋が訪れました。ブータンの秋は日中太陽がさしている時間はポカポカしていて、日が沈むと一気に気温が落ち込みます。夜は大体5-7度と日中との寒暖差が大きいですが、健康には気をつけて活動して行きたいと思います。日本では、紅葉が綺麗な季節ですね。皆様も健康にはお気をつけてお過ごしください。

さて、今回のテーマは前回の最後にお伝えしたように、9月23日から中国(杭州)で行われたAsian Game  Hangzhou2022へブータン柔道から3名の選手が出場しましたので、その大会結果や様子、選手村についてお話しさせていただきたいと思います。

是非、最後まで読んでいただけると幸いです。

ブータンチームAsian Game Hangzhou 2022へ向かう

9月23日から中国(杭州)で行われたアジア選手権大会へブータン柔道から3名の選手が出場しました。
私たち柔道チームは競技日程が早いということと開会式に参加するということから、19日の夕方にブータンを発ちました。
ブータンから杭州はまず、ブータン-バンコクの直行便(約3時間半)とバンコクで約8時間の乗り継ぎを行ってバンコク-杭州の直行便(約4時間)の飛行機で杭州へ向かいました。
19日の夕方にブータンを飛び立ち、選手村に到着したのはおおよそ20日の朝9時ごろでした。正直選手村についた時の記憶は疲れすぎていてあまり覚えていないです…😅

Asian Game Hangzhou Opening ceremony

私たち柔道チームは競技日程が24日から開催とのことで、開会式にも参加させていただきました。
2人の選手が翌日に試合があったのですが、ブータン柔道として初めてのアジア大会出場、オリンピック規模の大舞台ということで、時間制限を設けて参加させていただきました。
私自身、オリンピック、アジア大会に参加することが今回は初めてだったので、実際に開会式に参加し、入場し観客が大歓声を上げている中の行進はものすごく心を躍らせました。
そして、日本人コーチとしてブータンチームとして歓迎してくれた、ブータンオリンピック委員会のエンバー、他競技コーチ、選手たちには感謝しています。
そして、このアジア大会という大舞台で、ブータンチームメンバーとして参加できたこと、伝統衣装「GHO」を着て、ブータン国旗を背負って行進することができたことは、私の人生においてものすごく素敵な時間を過ごすことができました。


開会式の行進の様子


開会式に参加したチームブータンメンバー🇧🇹

アジア大会柔道競技

上記に記載の通り私たちブータン柔道は今回初めてアジア大会に参加しました。
当ブータン柔道協会から以下の3名が出場しました。

60kg級 Ngawang Namgyel
66kg級 Kinley Tshering
73kg級 Tandin Wangchuk

大会結果はいずれの3選手も一回戦で敗退してしまいました。
このアジア大会の2023年開催決定から彼らはこの大会のために必死に準備してきました。
私が作成する過酷なトレーニング、柔道稽古にも、必死に3人で食らいついてきたこの約6ヶ月間でした。
一回戦敗退という結果に終わってしまいましたが、アジア大会というものすごい大きな舞台、格上選手相手に3人の選手は全力で戦いました。また、66kg級に出場したKinley Tsheringですが、レバノンから出場していた格上相手に技ありを取られて負けたものの、4分間フルで戦い自分の得意技を必死に繰り出し、最後の1秒まで逆転を狙って諦めませんでした。このことは彼だけではありません。他の2人も持っている自分の技をかけて必死に倒しに行く姿を見ることができました。

私自身、こんな若造で本当に彼らの為になっているのかといつも自問自答していますが、このアジア大会を通じて、必死にきついトレーニングや稽古に食らいつき、アジア大会では、厳しい対戦相手の中必死に戦っていた彼らを見てとても誇らしく感じました。

このアジア大会までの期間、アジア大会での経験というのは彼らにとってとても貴重な財産になったと私は強く思います。そしてまた、このアジア大会が彼らのゴールではありません。

むしろこれからが新たなスタートだと私は思います。
この大会でも多くの課題、改善点を見出すことができました。

その得た課題をまた、ブータンで改善に努め、また一歩ずつ彼らの成長に繋げて行きたいと思います。

彼らの次の大きな目標は来年開催予定の南アジア大会で3位以上の成績を残すことです。その目標を達成すべくまた、選手とともに励みたいと思います。

 

選手村での生活の様子

選手村での生活は普段ブータンで生活している私たちにとってものすごく新鮮なものでした。1競技チームにマンション一部屋相当の部屋を用意していただいて、そこで生活をしました。
その部屋にはトイレ、シャワーが二つとベランダ、洗濯機、洗濯干しが二つ完備していて、私たちは、毎日調整練習やトレーニングの柔道衣や衣類の洗濯を毎日して生活していました。また、食事はダイニングホールがあり、ダイニングホールでは、各国の食事のビュッフェ、KFC 、Pizza Hatなどがあり、それらの食事はすべてが無料でいただくことができました。
私たちは大会前期間は減量、コンディション調整という面からKFC、 Pizza Hatは大会終了までお預けしていましたが、すべての食事がとても美味しく快適な選手村生活を過ごすことができました。
選手たちが大会終了後の食事で真っ先にKFC 、Pizza Hatに向かう姿はとてもウキウキしていました。
また、選手村はいろいろなアクティビティなども多く、調整後の空き時間や大会終了後の時間で普段できないような様々なアクティビティに皆夢中になっていました。

また、オリンピック、アジア大会などの大会の代名詞の各国の様々な選手たちとのピンバッジ交換にもものすごく心を躍らせていました。

選手も私も多くの国と選手の方々とピンバッジを交換することができ、スポーツを通じて、競技の垣根を超えた国際交流をすることができ、私自身とても貴重な経験をすることができました。


大会期間前にアップ会場で調整練習を終えて更衣室に向かう3人


日中にトレーニングで使用した衣類を洗濯する選手たち


減量期間にKFCを横目に食事をしてる選手たち

アジア大会を終えて

本来2022に開催されるアジア大会がCovid-19の影響で今年開催され、私たちブータン柔道から初めて3名の選手が参加することができましたが、この背景にはこれまでブータン柔道を支え協力してくださった多くの方々、ブータンで選手たちの育成に励まれた歴代日本人コーチ方の存在があったからこそ、今回ブータン柔道から初めてのアジア大会を無事終了することができたと私は思います。

実際に大会内容についてですが、上記に記載のように参加選手3名が一回戦敗退という結果に終わってしまいましたが、その一回戦敗退という内容以上に大きな舞台での挑戦、世界トップクラスの選手との対戦という貴重な経験をすることができました。正直課題はまだまだたくさんあります。しかし、逆に考えれば、それだけ私たちには大きな伸び代を持っているということです。

アジア大会を終えた現在、またブータンの地で一から自分たちのやらなければならないことときちんと向き合って次の国際大会へ繋げられるように選手たちとともに私も日々精進して行きたいと思います。

そしてまた、その時には私はコーチとして帯同することが難しいと思いますが、次のアジア大会 2026年日本、愛知県開催の大会に彼らがまた参加できるように頑張って行きたいと思います。


試合前アップの様子

さいごに

これは私の内容にはなりますが、5歳の時に小さな街柔道で柔道を始めて、中学、高校、大学まで選手として続けることができました。今まで、約20年間柔道に携わることができていますが、選手時代は決してトップ選手と言われるところまでたどり着くことができませんでしたし、輝かしい結果を残すこともできませんでした。そんな中でも柔道が好きだという気持ちと自分が好きな柔道を海外でもっと広めたい、自分が経験してきたことを今度は指導者として活動して行きたいという気持ちで受けたJICA海外協力隊の試験。Covid-19の影響を受け様々な影響を受けながらもブータンに配属になり、一年半が経過した頃に本来昨年に開催されるアジア大会がCovid-19の影響を受けで延期されていた大会が今年開催されることになりました。これまで多くのブータンで活動をされてきた日本人コーチの先生方が紡いできたブータン柔道を継いで3人の選手と私はありがたいことにTeam Bhutan ブータン柔道チームの代表監督として帯同することができました。

そして、自分が小学生の頃からテレビで応援していてずっと憧れであり、現在ブータン柔道に多くのサポートをしてくださっているJUDOs代表の井上康生先生とも会場でお会いし、ご挨拶をすることができました。井上先生とは初日に私からご挨拶をさせていただき、大会最終日の混合団体戦の決勝までの空き時間に再度お話しさせていただきました。

その最終日に井上先生は「海外で柔道を指導されていてきっと色々大変なことがたくさんあると思いますが、素晴らしい活動をされていらっしゃると思いますよ。また、私に協力できることがあれば、いつでもご連絡してください。ブータンにも是非伺ってみたいです。」とありがたいお言葉をいただきました。

正直、私はブータンで活動していてふと1人の時間になった時にいつも「あの選択は合っていたのか?」「もっといい選択があったのではないか?」「自分がブータンに来て本当に良いことを選手たちに与えることができているのか」と自問自答することがほぼ毎日なのが正直なところです。しかし、そんな中でもこんな自分に信じてついてきてくれて必死に稽古を行い、トレーニングをしている選手たちを見ると「そんなことを考えるよりも彼らにとって最善だと思うことをもっと常に考える方が良い」といつも選手たちの様子を見て鼓舞されています。

私はブータンに来る前からモットーにしている1つの言葉があります。

それは「人生、鼻で笑われてからが勝負」という言葉です。この言葉は私が好きなアーティストがよく話す言葉で、私もこの言葉を聞いた時にものすごく心に残り、そこからこの言葉を自分のモットーにしています。この言葉の意味としては、何か新しいことを挑戦しようとしたり、周りが思っている常識には当てはまらないことをしようとすると、他人に鼻で笑われたりするかもしれないけど、それはあくまでも他人の気持ちであって、そんな中でも自分らしく正直に物事をしたらいくらでも道は開けるということです。

こんな一丁前なことを言っていますが、上記に記載したように毎日自問自答しています。

しかし、そんな時に大きく深呼吸をして、この言葉を思い出しています。

きっとこれからも毎日自問自答して、時には小さな壁、時にはなかなか壊すのにはしんどい壁にぶち当たると思います。

しかし、このモットーを胸に今後も自分らしく多くの人への感謝の気持ちを忘れずに正直に最後にブータンを離れるときに「よしやりきった。よくやった自分」って思えるようにこれからも日々精進して行きたいと思います。


大会会場で井上先生と写真を撮っていただいた時の様子

次回について

次回は今年JICA Bhutan 隊員派遣35周年です。
そこで、記念式典が10月27日に執り行われました。
そこで私たちブータン柔道協会はデモンストレーションをさせていただきました。
また、28日にはブータンで毎年開催されている日本週間イベントでも私たちは柔道デモンストレーションをさせていただいたので、その様子などをお伝えしたいと思います。

少しでもこの記事を見てブータン柔道について興味を持っていただいたり、応援してくださると嬉しいです。

最後までご覧いただきいただきありがとうございます。

Kadrin Chhe la(現地語ゾンカ)ありがとうございました。

Lok jae ge la(現地語ゾンカ)また会いましょう☺️

各種SNS

☆Bhutan Judo Association official Facebook
https://www.facebook.com/BhutanJudoAssociation?mibextid=LQQJ4d

☆福井勇貴 活動アップロード Instagram
https://instagram.com/jocv_fukui_yuki?igshid=MjEwN2IyYWYwYw==


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