JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。
今回は、2025年3月まで東海大学柔道部の国際交流担当としてJUDOsの活動に携わり、大学卒業後も「国際コーチングセミナー2025」のアシスタントコーチを務めてくださった岩本莉樹さんによる第二弾です。
第一弾では、南アジア・バングラデシュでの活動をご紹介しました。岩本さんは、そのバングラデシュでの指導を終えた後、日本へ帰国することなく、そのままフランスへ渡航し、現地で柔道指導を行いました。
今回は、そのフランスでの活動の様子をご報告いただきます!
JUDOsホームページをご覧の皆さま、ボンジュール(こんにちは)!岩本莉樹です。
私はJICA海外協力隊2025年3次隊として、バヌアツ共和国への派遣されます。語学訓練所入所までの期間、NPO法人JUDOsの指導者派遣として前回のバングラデシュ指導に引き続き、フランス指導へ行っておりました。
バヌアツ共和国は元、イギリスとフランスの共同統治領だったため、フランスと深い関係にあります。フランス柔道やフランス語の勉強のために、2025年9月4日から10月4日までの約1ヶ月間、JUDOsの活動でお付き合いがあったフランス人のリリアンさんから招待していただき、フランス巡回指導をさせていただいておりました。
今回は、1ヶ月で巡回した8地方(19都市)の記録を前編・後編に分けてお届けいたします!
フランス🇫🇷柔道記《前編》
西フランス Nantes(ナント)
3泊4日(道場練習生ファミリーの家にてホームステイ)
パリからナントへは約2時間半、電車での移動でした。
Kaizen judo club の稽古に4回参加し、そのうち3回メインでの指導を行ないました。
ここでのクラスは、幼年・低学年クラス(約30人)と中学生以上のシニアクラス→90名ほどでした。一般クラスは、10代から70代まで幅広く、目が見えない男性も同じ練習メニューに参加していました。ウォームアップをして技術指導と打ち込みをした後、乱取り稽古をメインで行ってほしいとリクエストをいただきました。技術指導では大内刈と内股のデモンストレーションを行いました。乱取り中は、シニアの練習生は端で世間話をしており、子供から大人まで、同じ道場、同じ空間で柔道を楽しんでいる印象でした!

22時に練習終了後、道場のすぐ外でカウンターに食材を並べて立ち飲みが始まりました!チップスやシードルと呼ばれるお酒を中心とした軽めの食事でとても楽しい時間を過ごせました。
選手強化が主な目的ではない町道場ではありましたが、練習生の数がかなり多く、技術レベルも高いように感じました。シニアの参加者はお酒のついでに柔道してるのでは?ってくらい楽しそうで、地域の生活に柔道が馴染んでいると感じました。(子供からお年寄りまで全世代の居場所になっていた感じ)
休日は、ホームステイ先のファミリーがビーチへ連れて行ってくれたので、まさかのフランスで人生で初めてのボディーボードに挑戦してきました!

その後ポルニックという海沿いの都市へ連れて行っていただきました。傾斜が急な地域に建てられた古い街並みは統一感があり美しかったです。ポルニックは、イチゴを使ったジェラートのLa Fraiseraie(ラ・フレーズレ)発祥の地で、北西部の地域は小麦が育ちにくい代わりにそば粉を使ったガレットが有名な地であり、ガレットとクレープを堪能しました。ポルニックは、苺のジェラートで知られる「La Fraiseraie(ラ・フレーズレ)」発祥の地だそうです。

小麦の栽培に適さない北西部特有の風土から生まれた、滋味豊かな蕎麦粉のガレットが名物です。この地ならではのガレットとクレープを、心ゆくまで堪能しました。
ナント市街地のの観光では、ブルターニュ公爵城、Les Machines de l’Île(レ・マシーン・ド・リル)、Passage Pommeraye(パッサージュ・ポムレ)に連れて行っていただきました。
お土産には、Muscadet(ミュスカデ)のワインとSt Michel(サン=ミッシェル)のナント名産の小麦で作られたクッキーなどナントのお土産をいただきました!

北フランス HDF《Béthune, Lille, Tourcoing》
(ベテューヌ、リール、トゥールコワン)
5泊6日(ホテルステイ)
ナントから電車と車で6時間ほどかけてベテューヌという北フランスの都市に来ました。世界遺産にもなっている鐘楼(ベフロワ)群の一部であるBeffroi de Béthune(ベフロワ・ド・ベテューヌ)が有名な街です。主な拠点となったのは、Béthune-Bruayという大きな体育館でした。メインアリーナには試合場が10面もあり、サブ道場、トレーニング場など立派な設備が完備されていました。

着いてすぐ始まった小学生クラスには30名以上の子どもたちが参加してくれました。広いスペースを使って子どもたちと走り回ったり、ゲーム形式で楽しくのびのびと柔道に触れることができました。

稽古後に写真撮影会やサイン会が始まったからスターにでもなった気分でした笑
中高生以上のクラスでも引き続きウォーミングアップから練習メニューを組みました。大内刈と肩車のデモンストレーションを行ないました。それぞれの選手のレベル差はあれど、私が伝えたポイントをしっかりと汲み取ってくれて、みんな習得が早いなと感じました。
生徒の中にはジョージア出身の選手もいて、日本よりも他国との交流が珍しくないのだなと感じ、日本よりも他国との交流が身近にあると感じました。地方都市ではありますが、強い選手だけでなく、多くの子どもたちも練習に励んでいて、柔道への熱意を強く感じた。

翌日、体育館のBARスペースで昼食のサンドイッチやジュースをご馳走になり、近隣の小学校から集まった約300人の児童と小学校教員を対象とした柔道体験教室へ参加しました。(学生の頃参加した「文京区わくわくスポーツまつり」の大規模版のような感じ)
Pôle France VERQUINのクラブチームと近隣の小学校が連携した課外授業のような形で、小学校教育の一環として柔道が採用されています。空手、ブレイクダンス、ポンプ(消防?)の4種類のクラスがあり、時間ごとに各スタッフが交代で子供たちに指導するシステムでした。柔道クラスの運営はPôle France VERQUINのジュニア選手・コーチらと共に行きました。各試合場ごとにスペースを分割して50分×4回の子ども達へ向けたレッスンを実施しました。みんなで手を繋いで走り回ったり、動物の動きを真似てみたり、寝転んでみたり、身体を楽しく仲間と動かすことにフォーカスしたレッスンでした。
参加している子供たちへは礼法の指導もあり、柔道の教育的な側面もしっかりと取り入れられている素晴らしい内容でした。クラスのラストでは、それぞれのクラスの担任の先生が柔道家を投げてみよう!というコーナーがあり、私を含め数名のPôle France VERQUINの選手らとデモンストレーションの相手をした。

児童らは、先生たちが大きな柔道家を投げ飛ばしているのをみて大喜びしていました!
参加してくれた子供たち全員に参加賞としてオリジナルのメダルがプレゼントされていました!こうしたイベントによって柔道人気がフランスでは保たれているのだなと感じた瞬間でした。

夕方には、トゥールコワンというベルギー国境付近まで車で1時間かけて向かい、現地の高校の練習に約3時間参加してきました。前半は大内刈と内股の指導をしました。ジュニア・カデの強化選手層が参加しており、学生の頃ぶりにバチバチとエキサイトするような乱取り稽古ができて最高でした!
翌日は丸一日オフをいただき、La Grand’PlaceやLille Cathedralなどリール周辺を観光しました。
Bethune最終日では、約200人の指導者が集まっての新シーズンの定期講習会が行われていました。

前半は柔術やMMAの講師を招き、音楽に合わせて体を動かすエクササイズ形式のレッスンでした。柔道にとらわれず、さまざまなスポーツの運動要素を取り入れている印象で、若い有段者からシニアの高段者まで、参加者全員が楽しそうに体を動かしている姿が印象的だった。後半では、私の持ちが時間1時間半あり、ストレッチとウォーミングアップから担当しました。脚を振り子のように振る内股のエクササイズは少しウケがいいように感じました。
少しずつ、その日与えられたレッスンの持ち時間の使い方や時間調整が上手くなってきている気がします!終了後には、HDFの記念品とワインやお菓子などをいただいて次の都市へ向かいました。
東フランス
BFC《Orgelet,Besançon,Dijon》(オルジュレ、ブザンソン、ディジョン)
2泊3日(合宿所ステイ)
ベテューヌから電車と車でリヨンを経由し6時間半ほどかけて東フランスのオルジュレにきました。山や湖など自然の中にある合宿所で、約160人の指導者を対象とした講習会でした!

ここの都市も大規模で驚きました!技術講習会に加え新ルールの講習会も兼ねており、定期的に近隣の指導者を集めて開催しているセミナーだったようです。持ち時間を1時間半与えられ、日本式の技術の立技と寝技をそれぞれ教えてほしいとのリクエストでした。大内刈と内股、寝技(帯通し)のデモンストレーションとレッスンをしてきました!参加していた方の中で2名、日本語が話せる方がいたため、私の技講習の際に技の受けと通訳をお願いしたところ、快く引き受けていただけまいした!フランスに来て初めて、日本語での指導ができたので英語に比べて細かなニュアンスや表現が伝わり、感心する反応が多くてとても嬉しかったです。同時に、改めて語学の壁の高さを痛感しました。
私の講習のほかに、投の形の講座や初心者への指導法講座など、地域の指導者の中での定期的な意見交換の場となっていました。合間の食事の際は、参加者らと同じテーブルで豆やサラダ、チーズ、パテ、スイーツなどを一緒に食べたり、お酒やお菓子を楽しんだりして親交を深めることが出来ました。日本語で通訳をしてくれた方の本職がワイン職人であったこともあり、手作りのブルゴーニュワインのボトルをいただきました。
翌日午後から、車で1時間ほどかけてブザンソンという街に移動してきました。
ブザンソンの古い要塞の観光を少しした後に、高校での柔道指導を行ないました。2時間半の練習メニューをウォーミングアップから組んで、大内刈と内股の技講習を行いました。日本の若い選手で流行っている技を紹介してほしいとのことだったので、立技に加え、昨日に引き続き寝技(帯通し)の披露をしました。初めてみる技だという生徒もいましたが、何度か手本を見せると、抑え方のポイントを理解するのがとても早いように感じました。生徒との乱取り稽古にも参加して沢山汗をかいたあと、夕食は日本食レストランへ連れて行っていただきました。サーモン寿司セットを注文して、お味噌汁とサラダ、寿司プレートが出てきた後、なぜかサイドに白飯が出てきてびっくりです。

大阪人がお好み焼きをおかずに白米を食べるように、フランス人は寿司をおかずに白米を食べるというのか…
クオリティは思っていたよりも高くて久しぶりのお寿司は美味しかったです。さすがフランス。
翌日朝からディジョンという街に車で1時間ほどかけて移動してきました。
Pôle Espoirs Dijonのジュニア・カデの選手に1時間半の技術指導を行った。(ウォーミングアップ含む)大内刈と寝技(帯通し)の技講習を行った。ここでの指導は、よくしがちなミスや実戦での応用を追加しながらデモンストレーションを行いました。同じ技の指導でも回を重ねていく度に、より良い指導になっていっているように感じました。

自分の指導の型が少しずつ確立しつつあるような感覚となってきました。フランス語が分からないなりに動きの例え方や表現の仕方を工夫していけている感じがしました。クラブのセドリック先生からパリ行きの電車のチケットを受け取り、お菓子やクロワッサンまでいただけた。
パリ圏 IDF
《Centre Louis Lumière, Châtenay-Malabry, Brétigny-sur-Orge, INSEP》(サントル・ルイ・リュミエール、シャトネ=マラブリー、ブレティニー=シュル=オルジュ、アンセップ)
5泊6日 (ホームステイ&ホテルステイ)
午前にディジョンでのを稽古を終えてすぐに、電車で2時間ほどかけてパリ東部まで来ました。数日おきに続く長距離移動。電車の乗り降りには慣れてきていたけれど、迎えに来てくれる人の名前も顔も知らされていないことが多く、駅のホームではいつも戸惑っていました笑
今回迎えに来てくれるリリアンさんも誰か知らず、「友達の道場の同僚が迎えに来る」ということだったので不安でした。迎えにきてくれた人は、耳が潰れていたり、指がゴツい人でもなかったので、ついて行ってもいいのかかなり怪しんでいた笑。
迎えに来てくれた方が英語を話せなかったため、その後の予定も分からぬまま、連れられるがままに到着した先は、大きなスポーツ施設のような場所でした。実際のところ、午後は移動だけでオフだろうと信じて疑わいませんでしたが、到着してすぐに、汗だくの道着を着替えることもできないまま、本日2回目、3回目のレッスンを連続で行うことになってました。

さてはフランスに来てからの1日の方が、学生時代の1日よりも柔道着を着ている時間が長いんじゃないか…?
第一部では1時間ほどの練習時間に6歳から8歳の子どもたち約25名ほどが稽古に参加していました。初めに「日本から来た柔道家だよ!」という紹介をしていただき、大内刈のデモンストレーションと技講習をしました。一面ないほどの小さな縦長の道場でしたが、走り回ったり、手を繋いで輪になったり、帯を使ったり、スペースを工夫して楽しくレッスンを行いました!
第二部は9歳から12歳の少し大きな子どもたちを対象としたレッスンで、15人ほど子ども達が参加していました。後半1時間もメニューを組んだが、一回目よりも少し大きな子たちだったので、難しい体の動きにも挑戦できる内容に微調整して、二回目の指導を終えました。
この日はそのままコーチらと夕食に行き、コーチのイゴルさん宅にホームステイすることになった。

宿泊先へ移動中にスーツケースのタイヤが壊れてしまい、残り2週間の移動が取手付きの箱を持ち運ぶ羽目に😅😅
翌日午前中は移動も柔道も予定がないということだったので、地下鉄を乗り継いで凱旋門やルーブル美術館の観光に行くことができました!

シャンゼリゼ通り周辺の美しくて統一された街並みを楽しむことができました。時間の都合上、混雑していてモナリザを見ることは出来ませんでしたが、迫力のある絵画の数々を見ることができて大満足でした!

午後からは電車を1時間ほど乗り継いで、パリ南西部のシャトネ=マラブリーに来ました。Pôle France judo IDFのカデのチームでの指導の予定でした。しかし、指定された位置情報に到着しても誰も迎えに来ず、担当のコーチに連絡するも繋がらず、1時間半ほど住宅街をウロウロ歩きながら待機していたところ、男子生徒が迎えに来てくれたため無事に道場がある施設に辿り着くことができました。コーチは練習中だったため電話に出られなかったとのことで、久しぶりに柔道をしない日となりました。
食事は学生らと同じ食堂でガッツリ食べさせていただき、この日は学校の来客用の宿泊施設に泊めさせていただきました。
翌日午前中から、男女それぞれの練習で1時間ずつのクラスを担当しました。大内刈と寝技(帯通し)のどちらの技も実践での相手との攻防を意識したデモンストレーションを披露しました。
その後も個別に日本の選手の試合をYoutubeで私に見せてきながら「この選手のこの技はどうやってやってるんだ?」というように、技の研究時間となった。自分にも理解できない技術も多くあったので、指導者として改めて自分の得意技以外も勉強しなければならないなと感じた。

生徒らと共に昼食を済ませた後、車で40分ほどの距離にあるブレティニー=シュル=オルジュにあるクラブチームに来ました。

体育館の門が鳥居っぽくて興味深いデザインでした!⛩️
本日三部目の練習は、ジュニア・カデの選手ら約80名に対して約3時間の練習メニューを組んだ指導を行いました。ウォーミングアップから三面のある縦長の道場を広く使い、柔道のワード(JudoやIpponなど)を用いながら柔道の動きを取り入れたエクササイズをしました。大内刈の技講習をした後、打ち込みや投げ込みをして乱取稽古にも参加しました。階級や男女関係なく乱取りでは当たりに来てくれてとてもいい稽古ができました!

翌日午前中は、セネガルからフランスへ遠征に来ていた選手らへの少人数の指導でした!フランスでセネガル人への指導?と少し訳のわからない状況ではありましたが、ウォーミングアップも含めて約1時間半かけて内股の指導を行いました。基本的な打ち込みのフォーム、引き出し打ち込み、投げ込み、連絡技、一人打ち込み(壁を使った足上げのトレーニング)などを指導しました。

午後からは、車で1時間のところにあるINSEPというナショナルトレーニングセンターの視察に来ました。この日は-73kg級のGABA選手の2025年世界選手権の優勝記念セレモニーがありました。

チャンピオンの証である赤ゼッケンのお披露目と、歴代世界チャンピオンが並ぶ壁にその名が刻まれ、フランス柔道界における功績が正式に称えられる形となっていました。

快くツーショットを撮らせていただけました📸
フランス柔道記《前編》は以上となります!
それでは、次回《後編》でお会いしましょう〜!
À bientôt!(またね〜👋)

