左より東海大学付属相模高等学校水落健太教諭、東海大学付属札幌高等学校佐藤優作教諭、山口輝義氏
NPO法人JUDOs(以下、本法人)では、2023年9月28日(金)~10月2日(月)にポーランド・グダニスクで開催された国際柔道キャンプCamp BOSEI(主催:グダニスク体育大学・Matsubara Judo Juku)を後援することを目的に、同キャンプに参加した東海大学付属高校柔道海外研修団の山口輝義(団長・学校法人東海大学職員)の派遣を支援しました。
Camp BOSEIは、昨年本法人が支援した第38回玄海旗中学生柔道大会に参加し日本で研修・交流を行ったポーランドの柔道関係者が、松前重義博士の思想と東海大学の活動に感化されて、キャンプの名称に「望星」を冠したもので、参加者がそれぞれの夢や目標に繋がりようにと「Camp for the Future」のサブタイトルも付けられました。
海外でBOSEIを冠した国際キャンプが開催されるのは、2015年のカナダ・トロントに続く2回目です。準備にあたり、主催者のAntoni Maciołowskiさん(Matsubara Judo Juku代表)は志を継承するためにトロントのDavid Miller氏(Bosei Judo Academy代表)とオンラインで打ち合わせを行い、テーマの設定や国際キャンプの運営方法などについて助言を受けました。
Camp BOSEI – Camp for the Future –
会場となったグダニスク体育大学(左側は体操競技体育館・右側の建物2階が柔道場)
グダニスク体育大学(The Academy of Physical Education and Sport in Gdansk)柔道場で行われたキャンプには、ポーランド各地からジュニア世代の選手を中心に約120名が参加し、互いの技を磨き合うとともに友情をはぐくみました。
©Matsubara Judo Juku
©Matsubara Judo Juku
©Matsubara Judo Juku
また、オックスフォード大学チームの一員として参加した同大学のPeter Petkoff教授が松前重義博士の活動と本キャンプの意味について約10分間講話を行いました。Petkoff教授は宗教学や法律学の専門家で、デンマークのニコライ・グルントヴィに関する論文から松前重義博士を知り、その生涯に感銘し、現在研究を進めているということです。松前博士が戦後の日本と国際社会で果たした役割やキャンプを通じて相互理解を深めて欲しいという話に、参加者からは大きな拍手が送られました。
オックスフォード大学ペトコフ教授による「松前重義博士とキャンプの意味」に関する講話 ©Matsubara Judo Juku
東海大学付属高校柔道海外研修は、柔道を通じて海外の若者たちと友好を深めることなどを目的に1980年から隔年単位で開催されているので、第21回目となる今回は、2019年度に続きポーランドが研修地となりました。研修団(引率者3名・高校生10名)はドイツ経由でポーランド入りした後、既述のCamp BOSEIに参加し、ポーランド、ウクライナ、イングランド、アイルランド、ジョージア、アメリカといった多様な国籍の人たちと一緒に畳に立ち、合同練習に励みました。午前はポーランドチーム、午後はオックスフォード大学チームというように、練習毎に準備体操を担当するチームが割り当てられ、東海チームも同様に担当することでチームの一体感が高まりました。練習の最後には、これも毎回担当が替わる得意技の説明があり、代表に選ばれた生徒たちは外国の選手に伝わるよう皆で相談しながら準備しました。自分の技を論理的に説明することや、外国選手の技を学ぶことは貴重な経験になりました。
各国から集まった同世代の若者たちと合同練習
現在ポーランドで活躍している佐々木浩太郎さん(東海大卒)にサポートしていただきました ©Matsubara Judo Juku
キャンプ後半、10月1日(日)夜は東海チーム対国際チームの親善試合を開催しました。コロナ禍で国内においても出稽古や合同練習が制限された世代にとって、各自が複数回国際試合を経験できたことは、今後の柔道人生にもつながると思います。
「東海大学チーム」対「国際チーム」の親善試合 ©Matsubara Judo Juku
キャンプが無事終わって
佐々木浩太郎さん、ニューヨークから参加したAli Bakerさん、オックスフォード大学チームと一緒に
柔道以外に、研修団はポーランドの歴史や文化を学ぶ時間を多くとりました。グダニスクにおいては、第二次世界大戦がはじまったヴェステルプラッテ岬と東西冷戦終結に繋がった労働者運動が起こったグダニスク造船所(旧レーニン造船所)に足を運び、現地の方々から当時の様子について話を聞きました。グダニスクから始まり東欧全域に拡がった民主化運動は「ソリダリティームーブメント」と呼ばれ、本法人の前身となった「柔道教育ソリダリティー」の名称の元にもなったものです。
船に乗ってヴェステルプラッテ岬に向かう
グダニスク・オリヴァ大聖堂の日曜礼拝
グダニスク旧市街にて
このほか、ホームスティを通じてグダニスクの方々と家族的な交流を経験したことや、グダニスク・オリヴァ大聖堂の日曜礼拝に参加しパイプオルガンの荘厳な演奏を耳にしたことも高校生には一生の思い出になりました。
キャンプ終了後に移動したワルシャワでは、世界遺産に認定されている旧市街、無名戦士の墓などを見学しました。第二次世界大戦末期の惨劇を伝えるワルシャワ蜂起博物館では、研修団のため特別に2時間のプログラムを行っていただきました。高校生にとっては、20世紀の戦争や現在の国際情勢をより身近に感じるとともに、平和や民主主義について真剣に考えるきっかけになりました。
ワルシャワの旧市街(王宮前)で記念写真
研修最終日には、宮島昭夫在ポーランド日本国駐箚特命全権大使を表敬訪問し、研修の報告をしました。宮島大使をはじめ、在ポーランド日本大使館の皆さまには昨年のポーランド・ウクライナチーム受け入れや、今年2月の畳・柔道衣贈呈など、本法人の活動に多大なご配慮、ご協力を頂いています。今回もご多忙の中、宮島大使には高校生に激励の言葉をいただきました。
今回のCamp BOSEI及び付属高校柔道海外研修は、ポーランド柔道関係者のほか、在ポーランド日本大使館、駐日ポーランド共和国大使館など多くの方々にご支援をいただき実施することができました。特にJUDOs会員の皆さまにこの場を借りて深く御礼申し上げます。ありがとうございました。
2023年度東海大学付属高校柔道海外研修団 団長
東海大学スポーツプロモーションセンター次長 山口輝義