ブータン🇧🇹より【カディンチェ柔道日記!No.1】

JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。

南アジアのブータン王国でJICA青年海外協力隊として活動をしている福井勇貴さんからの活動報告です!


カディンチェ柔道日記🇧🇹🥋 No.1

    作成日:2023/08/17
作成者:福井 勇貴

  

※Kadrin Chhe la(現地語ゾンカ語)でありがとう
ブータン柔道はこれまで多くの方々のご協力、支援があってここまで来ました。
そんな感謝の気持ちからタイトルコールはカディンチェとさせていただきました

自己紹介

はじめまして、みなさん。

私は現在26歳でJICA海外協力隊(JOCV)柔道コーチとして南アジアに位置する「ブータン王国」に派遣されている福井 勇貴(ふくい ゆうき)と申します。

ブータンでは、Bhutan Olympic Comity(ブータンオリンピック委員会)の傘下にあります、Bhutan Judo Association(ブータン柔道協会)に配属しており、ナショナルコーチとして活動をさせていただいております。

この度、JUDOs様からこのような素敵な機会をいただき、今後定期的に私のブータンでの活動報告をさせていただくこととなりましたのでブータンでの活動、生活、経験等を発信、共有させて頂こうと思います。
どうか温かい目で見ていただけると幸いです。

私の経歴を簡単に説明いたしますと、2020年3月に流通経済大学法学部(柔道部)を卒業後、海外協力隊(JOCV)柔道指導者としてコスタリカ共和国への派遣に向け訓練を待っていたところにCovid-19の世界的流行により、派遣予定の中止、約2年半の待機期間を経て「ブータン王国」へ任国を変更して2022年4月に派遣されました。

約2年半の待機期間ですが、母校の流通経済大学の非常勤職員として柔道部スタッフ、付属高校になります、流通経済大学付属柏高等学校柔道部外部指導者として指導させていただきました。コロナ禍もあり、あの約2年半の活動は私にとってものすごく貴重で、素敵な経験をすることができました。この2年半という期間での経験ですが、今の活動にものすごく生きていると日々実感しております。

ブータン柔道について

ブータン柔道の歴史について簡単に説明させていただきたいと思います。

ブータンでの柔道の歴史をお話しさせていただく前に、これまでの13年間は多くの方々からのご支援、ご協力なくしてブータン柔道はここまで続けることはおろか、始めることもできなかったそうです。改めて、皆さま方に御礼申し上げます。

さて、ブータン柔道は今年で13年目になります。ブータン人であり会長のKarma L Dorjiとその奥さんで日本人の片山理絵が「柔道を教育の観点からブータンに取り入れたい」という強い気持ちで始めたのが、ブータン柔道の始まりです。

しかし、会長は柔道未経験であったためブータンで柔道を指導してくれる指導者を探していましたが見つからないということがありました。そこでかねてより交流がありブータンでシニアJICAボランティアとして活躍されていらっしゃった故渋谷ご夫婦の紹介で神戸ブータン友好協会さんと繋がり、そこでご縁をいただき甲南大学柔道部部長山﨑俊輔先生をご紹介いただいたそうです。

山﨑先生が思いを汲んでくださり、ご子息である山﨑道洋さんをブータン柔道初代コーチとして送ってくださったことでブータン柔道が始まりました。開始当初柔道衣はおろか、畳、柔道をやろうとする人々すらもいませんでした。インドから輸入した体操用マット、連日道洋さんと片山さんで近隣学校を回って呼びかけを行い、警察や軍の関係者に会い柔道に教育的意義があり、それぞれの職に就く方々にとって友好なスポーツであるという事を説いて回ったそうです。それから月日が経ち少しづつ子供たちからの口コミが広がり子供たちが集まって来るようになりました。

多くの問題を抱えていても、乗り越えてブータンで柔道をはじめて5年目、2013年5月にブータン柔道協会は正式にブータンオリンピック委員会の傘下に入ることができました。そして、2016年8月リオオリンピック前夜に急遽国際柔道連盟理事会が開催され、国際柔道連盟への加盟が正式承認されました。

また、JICA(独立行政法人国際協力機構)もブータン柔道協会への柔道指導者派遣に協力してくださり、2015年に初めての青年海外協力隊柔道隊員として堀内芳洋さん、二代目内田美優さん、三代目歌代勇祐さんと短期隊員で2名、全日本柔道連盟が学生柔道家を海外に派遣する企画「Sports for Tomorrow」としてブータンにきた4期の学生コーチ、また上村春樹講道館館長をはじめとする講道館の先生方、日本を代表する古賀稔彦先生や平岡拓晃先生、杉本美香先生と多くの日本人指導者がブータンへ来て指導してくださいました。

そのおかげあって、2016年にはクラウドファンディングによって寄付していただいて、講道館ユース柔道教育キャンプ(柔道総本山講道館での練習等)を実施することができました。また、2019年南アジア大会に出場した3名が3位(60kg級ガワン・ナムゲル、66kg級キンレイ・ツェリン、73kg級タンディン・ワンチュク)、同年8月世界選手権東京にも3名がブータン柔道初の世界選手権大会への出場をはたしました。東京五輪2020にもワイルドカードとして60kg級ガワン・ナムゲルが出場することができました。

また、2019年4月からブータンオリンピック委員会を通して星槎グループ故宮澤会長、グループ傘下の世界こども財団の石田さんなど多くの方々からのご支援により、北海道にある星槎道都大学へ柔道協会メンバーのタンディン・ワンチュクとキンレイ・ツェリンの2名が2023年3月まで4年間の柔道留学に行っておりました。4代目JICA柔道隊員として私、福井勇貴が派遣されて約1年半が経ちますが、今後もブータン柔道のさらなる発展とこれまで多くの方々のブータン柔道への思いを胸に活動していきたいと思います。

現在のブータン柔道の活動について

現在おおよそ180名の選手が在籍しています。

ブータン柔道では3カテゴリーに分かれており(ビギナー、ジュニ、シニア)各カテゴリーが曜日ごとに約2時間程度の練習を行っています。

月、水、金、土曜日がシニアクラス(コーチ陣で試合や普段の練習、トレーニンングなどを見て選ばれた選手たち14-25歳程度約30名)

水、金、土曜日がジュニアクラス(8-16歳程度 約50名)

火、木曜日がビギナークラス(6-18歳程度 100名)となっています。

カテゴリーごとに私とアシスタントコーチたちで重点ポイントを決めて指導を行っています。例えば、シニアクラスは基礎的な技術練習、反復練習や試合や実践をイメージした応用的な練習、トレーニングを行っています。

ジュニアクラスでは基礎練習の徹底と基礎体力の向上。

ビギナークラスでは、「楽しい、教育としての柔道、柔道という新たなコミュニティ」をスローガンに礼法、基礎柔道運動、身体作り運動、基礎練習を行っています。

また、ナショナル選手・学校がない選手たちは週5日朝2時間のウエイトトレーニングやランニングトレーニング、外トレーニングなどを行っています。

また、上記に記載のようにブータン柔道では、教育としての柔道という面にも重きを置いて指導しています。

嘉納治五郎先生の言葉である「精力善用自他共栄:柔道で鍛えた、心と身体を自分だけではなく、世の為、人のために使う」この言葉は私たちが実際に指導する際に常に選手たちに伝え続けています。また、人やもの、全てに対してのリスペクトの気持ち、感謝というところも同時に伝えています。

ブータンでは柔道はあまりメジャーではありません。警察官や軍の訓練で取り入れられているのは空手やテコンドーが主流と言われています。

その中で私たちは年に数回柔道プロモーションイベント等を学校、市民ひろば、日本週間イベント等でさせていただいております。

現在柔道をしている約200名近くの選手たちは、そのプロモーションイベントを見たり、イベントをみた友人の紹介で興味を持って始めた子達がほとんどです。

ブータン柔道では、ナショナル選手、一部の選手を抜いた在籍している選手たちから、少額ですが月謝を毎月いただいて活動資金としています。月謝1ヶ月1人200Nu/ブータンの通貨ニュルタム(350円程度)、柔道衣代新品2000Nu(3500円)もしくはリサイクル柔道衣1000Nu(1800円、柔道衣に関しては初回のみ)をいただいていますが、実際に柔道に興味を持って始めた子の中には家が貧しく柔道衣を買うお金がない、月謝が払えないという子供も決して少なくありません。

そんな興味を持っているけど資金面が理由でやれないという子に対しては、協会の中できちんと話し合いをしてこれまでに日本からブータン柔道へ多くの寄付してくださった柔道衣を無償で提供し柔道を始める機会を与えています。そのため、初心者クラスから、シニアクラスまでの多くの選手たちは柔道衣に日本語の名前が入ったものを着ている子達がたくさんいます。

これまで多くの支援をしてくださった皆様があって、このように日々の活動ができるのだと思います。

常々、私たちブータン柔道協会はたくさんの方々からの支援を頂けて恵まれていると感じております。それと同時に、それらを全うする責任と協力、支援してくださった方々への感謝の気持ちを決して忘れてはいけないことだと感じます。

上記のように、ブータンでは柔道がしたくても金銭な問題、柔道ができる環境が少ない状況です。そういった諸問題を少しでも解決することにも今後取り組んでいこうと思います。

私たちは9月23日から中国(杭州)で開催されるアジア大会に当協会から3名が出場します。私もナショナルコーチとして帯同します。

現在、アジア大会へ向けて8月下旬から南インドへの合宿、タイオープン大会への参加を予定しています。アジア大会はオリンピックでも上位に上がってくる選手たちが多く厳しい戦いになるかと思いますが、できる準備を万全にしてチーム一丸となって残りの時間を過ごしていきたいと思います。

少しでも私たちの活動を応援してくださる方がおられましたら幸いです。

次回について

次回は今年3月に行われた昇段審査の結果と証書が今月にブータンに届き、先日行ったセレモニーを行った様子などをお話しさせていただきたいと思います。

最後までご覧いただきありがとうございます。

Kadrin Chhe la(現地語 ゾンカ)ありがとうございました。
Lok jae ge la(現地語 ゾンカ)また会いましょう☺️

各種SNS

☆Bhutan Judo Association official Facebook
https://www.facebook.com/BhutanJudoAssociation?mibextid=LQQJ4d

☆福井勇貴 活動アップロード Instagram
https://instagram.com/jocv_fukui_yuki?igshid=MjEwN2IyYWYwYw==


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