セネガル🇸🇳より【セネガルで指導者やってみた!! Part 3】

JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。

西アフリカでサハラ砂漠西南端の国、セネガル🇸🇳JICA青年海外協力隊として活動を行っている三浦啓瑚さんからの活動報告です!


セネガル🇸🇳で指導者やってみた!!  Part 3

皆さん、Assalaa maalekum(アッサラームアライクム)‼ Nangenn def(ナンゲーンデフ)? 

2024年度2次隊でセネガルに派遣されています三浦啓瑚です‼

今回は選手たちとのトレーニング風景について書いていこうと思います‼

セネガルの選手たちはどのような長所、短所があるのかということも書いていきます。

※私なりに見て感じたものとなっています。

 

先輩隊員と取り組むトレーニング指導

私の活動しているLamine Gueye(ラミンゲイ)中学校・高校には、「フィジカルアクティビティ」という職種でセネガルに赴任している先輩隊員が、木曜日と土曜日の毎週2日、私と共に活動してくれています。

先輩隊員は「オリンピック委員会」に配属されています。2026年に行われる「ユース五輪」に向けて様々な競技のトレーニング指導を行っているそうです。

先輩隊員が行うトレーニングは素晴らしいものばかりで、柔道を意識した動作、使用頻度の高い筋肉群を強化してくれています。コミュニケーション能力も高く、選手たちと私の距離を縮めるための支援もしていただきました。

先輩隊員の話はこれくらいにして・・・

選手たちがトレーニングしている時の様子を書かせていただきます‼

木曜日は道場、土曜日はトレーニングジムで選手たちはトレーニングを行っています。

選手たちの年代は中高生(約13〜18歳)だからなのか、トレーニングによって身体が大きくなること、選手同士で競い合うことがとても大好きです(特に男子💦)。

男子だけでなく、女子も選手同士で「私は○○kg持つことができるもん‼」などと言いながら高めあっています。中には身体は小さくとも、男子よりも重量を持ち上げることのできる選手もいます。

このような場面に遭遇すると、改めてセネガルの柔道家の中でも優れた能力を持つ選手が集まっているのだなと感じることができます。ここにいる選手たちがユース五輪のセネガル代表選手となってほしいです。

道場でのトレーニング

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな感じで選手たちはお互いに高めあいながら(おちょくりあいながら?)、トレーニングを行っています。

成長期真っ只中の年代であるため、柔道では体力差で実力に差が出てしまうこともあります。しかし、複雑な動きが少ないトレーニングは努力を積み重ねれば積み重ねた分だけ成長することができます。

そのため、選手の中では稽古よりもトレーニングを真剣に行う子もいます。

時々、「稽古の時もこれくらい楽しんで集中してくれたらいいのに…」とネガティブになることがありますが、トレーニングを真面目にやっているということをまず褒めてあげるということを心がけています。

ネガティブな発言よりも、ポジティブに取り組めるような言葉を投げかけてあげることで選手たちのモチベーションを高めることができればいいなと感じ、活動しています。

 

ジムでのトレーニング

 

余談ですが、フランスから指導に来ていた先生が「Ce n’est pas mal(悪くない).」という言葉を使っていました。それ以来、選手たちがうまくいかない時にはネガティブにさせないよう「Ce n’est pas mal.」と言うようにして、何を変えれば上達するかなどのアドバイスを行うようにしています。

フランス語圏に行こうと思っている方は是非使ってみてください。

体力測定〜2月〜

前回、紹介した「栄養新聞」と並行して取り組んでいる「体力測定」を2月末に初めて行いました。

監督や先輩隊員だけでなく、フランスから来ていた指導者にも協力していただきました。

体力測定を活動の一つにした理由としては、“生徒たちに成長を目に見える形で認識してほしい”という想いがあったからです。スポーツや武道といった、他人と戦うものには「勝ち負け」がついてきてしまいます。勝敗が決まる要素はたくさんありますが、どれだけ頑張ったと自分が思っていても負けることがあるのが勝負の世界というものです。日ごろの乱取を見ていると、小さい子は大きい子に勝てないと諦めたような行動をすることがあります。そこで、身体の大小や強さなど関係なく成長を感じることのできる体力測定を行おうと思ったのです。

「前回の数値から一つでも上がっていればいい。成長しているからいい」という風にモチベーションを保ってもらうようにするためです。

 

体力測定の種目は全部で6種類にしています。

・立ち幅跳び:下半身の一瞬のパワー発揮力

・体幹(前部:最高5m、左右:最高3m):体幹の持久力

・腕立て伏せ(最高100回):上半身持久力

・片足4方向飛び(左右):柔道のための下半身瞬発力&バランス力

・打ち込みシャトルラン:全身持久力&心肺機能

・30m走:瞬発力

体力測定:体幹の測定

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

選手たちは、このような測定をすることも初めてであり、私も測定する側は初めてのことだったので、説明は先輩隊員にお願いしました(笑)。

上手にできる選手もいれば、能力は高いはずなのに上手にできず数値が振るわない選手もいました。しかし、初めての体力測定だったので、次回の体力測定に期待です‼

 

体力測定や日頃の練習から、アカデミーの選手のみの結果ですが、セネガル人の身体的長所と短所について書かせていただきます。長所と短所共に2つずつ挙げたいと思います。

まず長所ですが、1つ目に“圧倒的な下半身のバネを持っている”ことです。今回の体力測定では「立ち幅跳び」の全体平均が214.5㎝と素晴らしい結果となりました。日本での立ち幅跳びの平均は197.07㎝(18歳男女)であり、大きく上回っています。アカデミー女子選手の平均だけでも198.4㎝と、ほぼ全員が2m近く飛んでいるという結果となりました。

2つ目に“流動的な動きが得意である”ことです。攻撃防禦の際、動きの中の流れを使って力を出すことを得意としています。例えば、技をかけるとき、その場で入るよりも相手が横に動いたりしている状況などに入る方が威力を出すことができます。

個人的な予想となってしまいますが、セネガルにはSabar(サバ―ル)という伝統的な踊りがあります。これは身体を全体的に大きく動かすような踊りであり、上手に見せるためには全身の可動域が重要になってきます。セネガル人の多くはこの踊りを遊びでも踊ったりするので、可動域が広いことから動きの流れに合わせることで、技などを掛ける際に威力を発揮できるのではないかと考えています。

次に短所についてです。

一つめの短所は“キープをする、筋持久力が必要になる種目が苦手である”ことです。今回の体力測定で行った体幹と腕立て伏せでは、多くの生徒がすぐにつぶれてしまう結果となってしまいました。重量級だけでなく軽量級であっても、時間や回数が最高の半分にも満たない選手が多かったです。

二つ目は、一つ目の短所が繋がってくるのですが“身体を固定する動きがとても苦手である”ことです。流動的な動きが得意な反面、相手の技を受けたりする際などに動きが封じられるとすぐに投げられてしまったり、つぶされてしまいます。

体力測定:立ち幅跳びの説明

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このようにアカデミーの選手から見るセネガル人の身体的特性としては“流れる動きは得意だが、止まることはできない”ということができます。これはたくさんの要素が絡み合っているのだと思いますが、理由を追及するのは難しいです💦

ですが、体力測定から理解することのできた身体的特性から練習メニューなどを考えていこうと思っています‼

 

初めてのラマダンを経験‼

最後に、イスラム教の行事であるラマダンを少しだけ経験してみて感じたことを書いていきます‼

まずラマダンについて簡単な説明を…

 

ラマダンはヒジュラ暦で9番目の月を表すもので、ラマダン月(今年は西暦で2025/2/28∼2025/3/29でした)の日の出(6:00頃)から日没(19:20頃)まで飲食を断ちます。これはイスラム教の五行(①信仰の告白②礼拝③喜捨④断食⑤巡礼)の一つです。行う理由としては、「神への信仰を示すとともに、貧しい人たちの状況を体験し、国民同士の連帯感を高めるため」などがあります。

そんなラマダン中にセネガル人はどのように練習を行っているのでしょうか…

ラマダン中は食事をしてから練習を始めます‼

食事ができる時間が19:20からなので練習の終わる時間はだいたい22:00過ぎになってしまいます。そして、練習後(23:00頃)にちゃんとした夜ご飯を、みんなで囲んで食べるのです。

断食をしてきて、食べ物の吸収が促進している身体にガッツリのセネガル飯、食べた後は油などで苦しくて、少し寝不足気味でした(笑)。

 

短い期間のラマダン経験でしたが、ラマダンにトライしているとセネガル人はとても喜んでくれます。文化を尊重し、経験してみることの大切さを学びました。

来年のラマダンは1か月間挑戦してみたいと思います。身体を壊さない程度に…

 

食事中の写真
ラマダン中の遠征での食事(チェブジェン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に

今回は選手たちのトレーニングの様子などを中心に書かせていただきましたが、

少しずつ意欲の強くなってきている生徒たちの試合をついに見ることができましたので、

次回は、「活動を開始して初めての試合観戦!」について書きたいと思います。楽しみにしていてください‼

それでは皆さん Jërëjëf(ジェルジュフ)!!  Ba beneen yoon(バベネヨーン)!!