ミャンマー🇲🇲より【めんでん 柔道記 No.4】

JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。

ミャンマー・ネピドーで柔道指導を行っている平沼大和さんからの活動報告です!


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めんでん柔道記
〜4,364km離れたミャンマーの地で🇲🇲vol.4〜

漢字表記でミャンマーのことを指す。旧ビルマ

日本にとって八月はインターハイや甲子園といった大会が開催される活気のある月。

柔道においては国士舘高校が安定の強さを証明し、甲子園においては慶應義塾高校が文武両道と新しい可能性を示し話題になりました。一方、ミャンマー柔道界ではJudo In School プロジェクト(IJF主催の12歳までの青少年を対象とした柔道教育プログラム)による裾野拡大活動など普及活動に向けて日々邁進しています。

その活動の中の一環としてナショナルチームの拠点となっているネピドーにおいても少年柔道クラスを開設しました。ゆくゆくは道場として活動できるように設立したものです。

今回の内容はこの新しい活動に関してご報告させていたただこうと思います。

少年柔道を始めた経緯と背景

ミャンマーにおいて柔道をすることは日本と比較した際に非常に困難です。柔道自体を認知されていない現状はもちろんのこと、そもそも柔道を始める機会が非常に限られています。日本においては武道必修化の流れがあり学校での授業や部活動、さらにはオリンピック競技の花形競技として年齢/性別に関係なく認知されています。

一方でミャンマーにおいては、そもそもスポーツを継続的に続けることは特権であり、更には柔道を始める最初の入り口はInternational Sports Physical Education*1(通称 : I.S.P.E)や限定的に開催されている地域柔道クラブで始めることが大半です。

もちろん全体を把握しきれていないため、あくまで個人の把握の範疇なのですが他国と比べてもハードルが高いことは自明でしょう。

筆者がミャンマーに滞在し活動する最大目的は「ミャンマー柔道の普及と発展」

目標の一つであるSEA GAMEs*2でメダルを獲得することも当然のことながら取り組むこととして、それと同時に年齢・レベル問わず柔道ができる環境を増やすということを考えた際に、やはり道場を設立することが最も効率的であり有効的あるという考えから活動が始まりました。


記念すべき第1回目の少年柔道の指導風景(2023/08/31撮影)

*1 ミャンマーにおける教育システムの一つ。日本の体育学校のようなもの。
*2 Southeast  Asian Games の略称。東南アジアにおいてのオリンピックを指す。

道場設立の地図

 「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし、故に、夢なき者に成功なし」出典は明らかではないことを先にお断りした上で、幕末の英雄を数多く輩出した松下村塾の吉田松陰が残した有名な言葉の一つです。(渋沢栄一の説もあり)

何かを思い描いたときに計画はやはり必要不可欠なものです。
計画なき取り組みは自己満足のそれ以上でもそれ以下でもない絵空事と一緒だと常に反省し、参加者が多い取り組みは尚更のこと、綿密な計画の上で実行し成果を目的の達成と結びつける。

もちろん新型コロナウィルスや災害、緊急事態等で計画通り行かないことが存在することを認知して、水が地形や器に合わせて形が変わるように、あらかじめ決められた計画を基に状況や環境に応じながら最善へと向かう。

「手段・目的アプローチ」と「情況・帰納アプローチ」を考慮した道場設立までの地図(計画)の一部をご紹介したいと思います。


2023/09/08現在の指導風景 現在は64名が参加している。

民間活動としての可能性を!

規制緩和や撤廃などで民間の取り組みを活発化させ、税金の使い方を考え直すことが全体にとって良い策だという言論の潮流が昨今存在します。もちろん公的機関だからこそ取り組むことができることが多くあることを承知の上で裾野である草の根活動は民間だからこそできることなのではないでしょうか。

昨今のブラジリアン柔術の発展は目まぐるしく、非常に参考になる点が数多くあります。民間だからこそできた一例として新型コロナウィルスの期間があげられるでしょう。

日本の柔道界は学校や警察といった公的機関が主であり、感染のリスクや世間体。国からの指示等で選手たちは稽古を積むことが出来ませんでした。

もちろん先生方も歯がゆい思いをされていたことは重々承知しております。

そんな中でブラジリアン柔術は民間が基盤であるため、リスク管理と各ジムの経営判断のもといち早く運営を再開させ試行錯誤しながら活動を続けていました。

公的機関が基盤だからこその利点として、柔道家は進学しやすく、就職しやすい。
柔道の競技歴、競技力を活かして公務員になれるというシステムが構築されているため競技に集中できていることは間違いのない事実です。

例えばカナダのナショナルチームで活動している選手たちはそういった道が少ないため競技を続けながら練習時間を削ってアルバイトをしたり、専門知識を学ばざるを得なく*3機会費用の原理上どうしても柔道競技が疎かになってしまう点があります。

また民間は営利団体なので、利益を上げることができなければ存続ができない上に公的機関よりも資金力で大きな差があるため、投資力や大きな事業に取り組むことは困難です。だからこそ公的機関と民間が同時に存在し、互いの不利点や不得意部分を補う形で取り組んでいけば更なる発展に繋がると強く思います。

ミャンマーにおいてはご存知の通り、軍のクーデター後軍政が続いており民間の活動が厳しい状況です。しかし私が代表監督として働くことができているのも公的機関がお給料を支払っていただき安全を確保していただけているからこそです。

しかしそれだけでは不利点、不得意部を補うことが難しいためミャンマー柔道の発展と普及という大義を胸に民間としてもできるだけ活動していく。そしてその可能性を模索していく。

筆者にはその権利と責任があり、公的機関での活動をしているからこそ出来ることを全力で模索しながら活動していくことが役割だと感じます。

*3 ある行動を選択した結果、他の選択肢を選んでいたら得られたはずの利益のこと。

おわりに

パナソニックグループを作り上げた松下幸之助も大切にした言葉の「三方よし*4」。
物事を長期的に多面的に根本的に考えた末に、改めて道場設立が最も効率的であり有効的あると思います。もちろん政情上、前途多難なことは確実でしょう。しかし諦めることなく出来ることを模索しながら取り組んでいく。

今後のミャンマー柔道の活動にご協力していただける方がいらっしゃれば幸いです。
畳と柔道衣のご提供や寄稿の機会をいただいたJUDOs様には改めて御礼を申し上げます。

ミャンマー柔道の更なる発展に期待を込めて、To Infinity and Beyond !!

*4 商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえる」という考え方


柔道場に向かっている途中の生徒

参考文献

Website

  1. IJF official website/ Judo in School / https://schools.ijf.org / 2023/09/01閲覧
  2. IJF official website/The Judo Values Reach Myanmar /https://schools.ijf.org/be-inspired/show/the-judo-values-reach-myanmar /2023/09/07閲覧
  3. Wikipedia/Ministry_of_Sports_and_Youth_Affairs_(Myanmar)/https://en.wikipedia.org/wiki
  4. CAMBODIA2023 32th SEA GAMES 12th ASEAN PARA GAMES official Website/https://cambodia2023.com/brand/2023/07/13
  5. 2023 Southeast Asian Games | Phnom Penh/https://olympics.com/en/sport-events/2023-southeast-asian-games-phnom-penh/2023/07/14
  6. Olympics Official Website Southeast Asian Games 2023 final medal table: Complete list/ https://olympics.com/en/news/southeast-asian-games-2023-medal-table-complete-list/2023/07/12
  7. Wikipedia SEA GAMES /https://en.wikipedia.org/wiki/SEA_Games/2023/07/14
  8. Wikipedia Judo at the 2023 SEA Games/ https://en.wikipedia.org/wiki/Judo_at_the_2023_SEA_Games#Mixed_combat/2023/07/14
  9. POSTE 東南アジア競技大会(SEA Games)とは?歴史とともに解説!/https://poste-vn.com/lifetips/sea-games-842/2023/07/12
  10. 一般社団法人 救国シンクタンク/  https://kyuukoku.com/ 2023/09/01閲覧
  11. 伊藤忠商事 近江商人と三方よし/伊藤忠商事/https://www.itochu.co.jp/ja/about/history /2023/08/25閲覧

YouTube

12. International Judo Federation/Judo in School – For a better world / https://youtu.be/TBffVvIfJgM?si=e-zOFAvPVrvBYqnp /2023/09/05閲覧

Books

13.留魂録/吉田松陰/青空文庫/1968年9月25日
14.[新釈]講孟余話 吉田松陰、kindle版/吉田松陰(著),松浦光修(翻訳)/PHP研究所/2014年12月18日
15.論語と算盤/渋沢栄一(著),守屋淳(翻訳)ちくま新書/2010年2月8日
16.救国シンクタンク叢書 なぜレジ袋は「有料化」されたのか/ 救国シンクタンク/渡瀬裕哉 , 内藤陽介2023年/2/13
17.物語 ビルマの歴史 王朝時代から現代まで/根本敬/中公新書/2014年1月24日
18.ミャンマー危機 選択を迫られる日本/永杉豊/扶桑社新書/2021年/7月2日
19.リーダーになる人に知っておいてほしいこと/松下幸之助(著), 松下政経塾 (編集)/PHP研究所/2009年3月4日
20.知略の本質 戦史に学ぶ逆転の勝利/ 野中郁次郎/戸部良一/河野仁/麻田雅文/日本経済新聞出版/2019/11/2
21.組織・チーム・ビジネスを勝ちに導く「作戦術」思考/小川清史/株式会社ワニブックス/2023年4月10日
22.戦略の本質 戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ/戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎/日本経済新聞出版/2008/8/01
23.失敗の本質 日本軍の組織論的研究 /戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎/ダイヤモンド社/1984/5/31
24.マンキュー入門経済学(第3版)/N・グレゴリー・マンキュー (著), 足立 英之, 石川 城太, 小川 英治, 地主 敏樹, 中馬 宏之, 柳川 隆 (翻訳)東洋経済新聞社2019/9/27

注釈 Webio辞書/緬甸/https://www.weblio.jp/content/2023/06/18

平沼大和(ひらぬまやまと)

1997年北海道生まれ、2023年ミャンマー柔道連盟ナショナルチーム代表監督。中央大学商学部会計学科卒業、体育連盟柔道部所属。柔道実業団選手としてスポーツひのまるキッズ協会に所属の後、カナダ柔道連盟ナショナルチームアシスタントコーチを経て現職。


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