JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。
ミャンマー・ネピドーで柔道指導を行っている平沼大和さんからの活動報告です!
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めんでん 柔道記
〜4,364km離れたミャンマーの地でvol.9〜
私が活動しているミャンマーでは乾期を終えて雨季に入りました。
乾期のの気温が40度以上が続いていたので、雨は煩わしいですが涼しく過ごしやすいです。またミャンマーでは西暦ではなく仏暦の習慣があります。
1月1日ではなく4月13日から4日間がお正月になるので年に2回お正月を祝う経験をさせていただきました。国によって「当たり前」が異なるのってとても面白いですし興味深いですね。
さて、今回は大きな行事や出来事ではなく、より日常的な事柄にフォーカスをして皆様にご報告したいと思います。
今回のテーマは、ナショナルチームのとある1日をご紹介します。
ナショナルチームの1日の流れ
私達ミャンマー柔道ナショナルチームは、シーズンによりますが基本的に週五回(午前が柔道、午後がウエイトトレーニング)の練習に取り組んでいます。それも選手が選手村に住み込みで生活しているからこそできることであり、設備や待遇等は満点とまではいきませんが充実した環境であることは間違いありません。
この写真は、立ち技の日に背負い投げのレクチャーをしている様子になります。
背負い投げのレクチャー中の様子
基本的に毎回の練習で選手からの質問や取り組みたい技を募集し、それらがない場合に ランダムで技のレクチャーの時間を設けています。このスタイルは以前、お世話になっていたパラエストラ東京の中井祐樹先生のスタイルを参考にさせていただきました。他にもブラジリアン柔術では、このスタイルが主流であると言うのが私の認識です。
この時間を設けることで、組織内での「暗黙知」とされていることを「形式知」化し最終的に「組織知」とするプロセスのためにも、毎回のレクチャーはとても有効的だと考えます。暗黙知とは、ある人が積み重ねて来た経験、勘、ノウハウや技術といったものを指します。しかしそういったものはとても漠然としていて、それが悪い方向へ進んでいくと「こんなの知っていて当たり前」といったモノになってしまいますので、それら漠然としたモノをを言語化し理論化することで 「形式知」となり人に伝えることができます。それをさらに組織ー全体で共有することができれば「組織知」となり組織内での意思疎通がスムーズになります。
トランプ理論
レクチャーの内容は立ち技(投げ技、組み手、体捌き)に限らず、寝技ももちろん取り組んでいます。そうなってくると技術は膨大になりますが、その際に気をつけていることは「選手自身が 取り組みたい/使ってみたいを選手自身が選んでもらうこと」です。身長、体重、性別に趣向。人によって柔道のスタイルは千差万別、十人十色。だからこそ私が持っている知識や経験といった手札を全て開示し選んでもらう。技術を共有している手前、どうしても全ての技をやってもらいたいという気持ちが出て来ますが、敢えて期待をせずに共有することにだけ専念することを意識しています。それを「トランプ理論」という名づけ取り組んでいます。
ただ英語ならまだしもミャンマー語で伝えなくてはいけないので、どうしても言語の壁を感じざるを得ません。伝わっているのかどうか心配な面が多々ありますし、その点でも母国で指導できる強みを海外にいるからこそ感じられています。
食事
練習が終わった後に食堂にて食事を摂ります。こちらも住み込みの寮母さんやお手伝いさん(若い男女が多い)がいらっしゃって食事を提供していただいております。
全競技合わせて何百人といるのでクウォリティーの部分では、どうしても難しいところはありますが3食しっかり食べれるのでまあ良いでしょう。
こちらの写真は男子選手が食事をしている様子です。
男子選手が食事を取っている様子
古今東西、体重が足りない選手が指導者から「食えっ!」と言われるのは恒例行事でしょう。ちなみに筆者は軽量級だったので、その経験は少ないですが…。筆者自身もミャンマー人と席を並べて一緒に食事をいただいています。やはり「同じ釡の飯を食う」ことで人種、言語は異なっても関係性を築くことができるなあと感じる今日この頃です。
自由時間
午後のトレーニングが終われば自由時間です。選手間の最近の流行りはモバイルゲームです。選手村内にちょっとした市場があるので、夜な夜なそこに集まってみんなでゲームをしています。
また音楽ができる者が意外と多くいて、みんなで集まってギターを演奏しながら歌を歌っているのも日常の光景です。
1日の終わりに選手と一緒に市場で食事をしている様子
一度豪雨の影響で配線の不具合が生じてしまい1週間の間、停電が続いた時がありました。部屋の中にいても何も見えないので外に出て月明かりの下でギター演奏をしているのをみた時に何か風情をとても感じたことを覚えています。そして10時になれば消灯時間となり1日を終えます。
おわりに
今回は以前とは少し異なり、日常にフォーカスをしてナショナルチームのとある一日をご紹介させていただきました。ご覧いただいたようにミャンマー柔道ナショナルチームも一生懸命柔道に取り組んでいます。どうしてもクーデターや社会情勢など大きな問題も現実として存在しておりインパクトが大きいです。しかしその世界の片隅にはこうやって懸命に取り組んでいる人間もいるということ少しでもお伝えすることができれば幸いです。
これからも定期的にこうした日常をお伝えさせていただきますので。どうぞよろしくお願いいたします。
それではまた次回‼
平沼大和(ひらぬまやまと)
1997年北海道生まれ、2023年からミャンマー柔道連盟ナショナルチーム代表監督。中央大学商学部会計学科卒業、体育連盟柔道部所属。柔道実業団選手としてスポーツひのまるキッズ協会に所属の後、カナダ柔道連盟ナショナルチームアシスタントコーチを経て現職。
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