ケニア 🇰🇪より【ハクナ・マタタ・ウタタン日記 No.3】

JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。

アフリカ東部のケニアで国際柔道連盟の柔道指導者として活動をしている歌代勇祐さんからの報告です。


ハクナ・マタタ・ウタタン日記🇰🇪 No.3

どうもこんにちは。ケニアで柔道指導をさせていただいております、歌代勇祐(うたしろゆうすけ)です。

初冬をお過ごしの日本の皆様、本格的な寒さが近づいてまいりました。風邪などひかれておりませんでしょうか。こちらでは寒さに弱いジャカランダが鮮やかに咲き誇っております。一年中暖かく過ごしやすい気候のナイロビから、半袖半ズボンでご挨拶申し上げます。

Dushanbe世界選手権

2024年10月2日から6日にかけて、タジキスタンのドゥシャンベで世界ジュニア柔道選手権が開催されました。私はケニア代表チームの監督として、この大会に参加してきました。

ケニア選手の健闘はもちろんのこと。日本代表チームや、世界各国で活躍する日本人の先生方とお会いしお話しさせていただき、私にとって大変有意義な時間となりました。

という報告“だけ”できれば良かったのですが…。

ケニアチームとしての初の国外遠征…色々ありました。はじめに、この大会でのトラブルの話を聞いてください…。

タジキスタンへの渡航

あれは9月28日。タジキスタンへの出発予定日2日前のことです。

ケニアの首都ナイロビで国内大会が開催されていました。普段指導をしている選手たちがどんな試合をするのかを見届けられる、すごく楽しみなイベントです。

少し緊張しながらも、ワクワクドキドキしながら。試合の開始を待っていたわけです。

出場選手たちに「How are you today?」なんてききながら。

ちびっ子たちにちょっとイタズラされながら。

すると柔道連盟の副会長が突然私の元へきて、言いました。

「3時間後に出国することに決まったから、準備しといてね。」

えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

国外渡航の3時間前に伝えられるなんて、とんでもないことです。国際線を使ったことがある方ならお分かりいただけるはず。

ここからは大忙しでした。選手も帯同スタッフも一度帰宅し、大慌てで荷造りをして空港へ。大雨の中、大荷物を担いで、大ダッシュで空港へ。なんとかなんとか、ぎりぎりで飛行機には乗れました。

事前に出国日と航空券の確認までしておけばよかったんですよね。彼らに任せ過ぎました。私の準備不足でした。大きく反省です。

しかししかし、この準備不足を本当に痛感したのはこの後だったんです。

結果を申しますと、経由地のドバイでの乗り継ぎに失敗しました。ケニア選手団10名全員。Oh my gosh!!

1時間半という、短い乗り継ぎ時間。映画一本も見られやしない。通常ならギリギリ間に合ったかもしれません。でも飛行機が50分間も遅延していたんです。ここは日本ではない、あるあるです。それに加えて、ドバイ国際空港の大きさ。これがさらに問題でした。

ご存知ですかね。ドバイ国際空港って、とんでもなく大きいです。みなさん、大きな空港を想像してみてください。その5倍は大きいです。マジです。大きすぎてひきます。ヒマラヤ山脈くらい大きいです。ごめんなさいさすがに言い過ぎました。

敷地は広く、3つあるそれぞれのターミナル間の移動には、バスで20分から30分かかります。

そんなことは知らず、走っては見たものの、もちろん全然間に合わず。代わりの航空券はなかなか手に入らず。深夜だからケニア側とは連絡が取れず。航空会社の窓口を行き来させられ。そんなこんなでなんだかんだ。空港内で3泊過ごしました。3泊4日って。それだけあればちょっとした海外旅行に行けちゃいます。

体重を落とす必要のある選手がいたので、一緒に空港内を歩きました。隅々まで歩き回りました。大きな空港だけど、空港内完全制覇です。詳しくもなりますよ。ドバイ国際空港についてはなんでも聞いてください。hehe。笑えない。

結局のところ、タジキスタンには試合の前日に到着しました。初日に出場予定の選手2名の公式計量には間に合いませんでした。事情を考慮し、今回彼らは試合当日の朝に計量をして大会に出場できることになりました。

本当に申し訳ないことをしました。ベストコンディションで出場させてあげられなかった。私たち柔道連盟の準備不足が問題です。事前に旅程をエージェントとスタッフの間で確認して、余裕を持って航空券を取っていればこんなことにはなりませんでした。

いつも突然決まって、十分な計画のないまま走り出してしまう。なあなあで済まされてしまっていた、大きな問題が明らかになった遠征でした。

大会結果

大会の結果はというと、出場選手7名全員が初戦敗退でした。世界の柔道とケニアの柔道との間にある高く厚い壁を目の当たりにしました。私としては現在の世界におけるケニア柔道の立ち位置を確認してきた、というだけの話です。全く落ち込んでいません。…めっちゃ強がっています。

ジュニア世代の若い選手たちが、今大会の結果をどう受け止めたのか。これが私にとって一番気になっていたところでした。でも心配無用でした。「自分たちには何が足りなかったのか」「超えるためにはどうすればいいのか」彼らはもう前を見ていました。

彼らは自分たちがこれからもっともっと伸びることを疑っていません。彼らは絶対にもっと強くなります。私は確信しています。

余談です

今回、Farasという会社がスポンサーをしてくださいました。FarasはUberのような配車アプリを運営するケニアの会社です。渡航にあたり、チームジャージを提供してくださいました。本当にありがたいことです。そのジャージがこちらです。

緑色と白色。チームジャージがあると、統一感があっていいですよね。配色だけ見るとパキスタンやナイジェリアと間違われそうですが。

でも、いいですよね、うん。こういう色も。いやいや全然、私個人としてはケニアカラーのジャージが欲しかった、なんてことは思っていませんよ、全然全然。私はいまだにケニアカラーのジャージを持っていませんけど。いえいえ全然気にしていません。ええ。

アフリカンオープンに向けて

来週11月21日から24日に、西アフリカにあるセネガルのダカールで、アフリカンオープン2024が開催されます。私たちは現在それに向けた強化練習中。ありがたいことに忙しくさせていただいております。

実はこの強化練習、私にとって念願なのでございます。

というのも、私は主にナショナル選手の強化を任されています。とは言いつつも、予算の問題や子どもたちの学校の関係で、選手を集めての練習がずっとできていませんでした。赴任してから今までの5ヶ月間。だから普段は限られた選手としか関われていなかったのです。

上記したタジキスタンでの世界選手権の直前にも、トレーニングキャンプを実施しました。しかしその時は、たった1週間しかできませんでした。あまりにも短過ぎました。

そんな状況だったのですが、今回は!学校が休みの時期ということもあり、多くの選手たちが集まって練習をしています。多いときは30名以上。代表候補の選手たちが集まります。それももう3週間ほど前からやっています!やっとです!やっとこさケニアのトップ選手たちが集まり、強化練習ができているんです!!今回出場する選手にとっても、次を狙う選手にとっても、すごくいい時間になっています。

そんなわけで私は今、超絶気合いが入っております!

気合いが入り過ぎて。私だけ鼻血出して、デコ擦りむいて、練習しています。

たとえ停電になっても練習します!そのためにライトを買いました。

後光が差していていい感じですね。…なにが?

かなりハードな練習をします。時には選手たちに厳しい声掛けもします。なんてったって私はナショナルコーチですから。

みんな真剣な表情で頑張っています。

おや?ちょっと口元が緩んでる子もいる?

なんだかずいぶん楽しそう。

おいおいそんな顔されると甘やかしているみたいじゃん、やめてよ。
まあたまには、遊びを混ぜたトレーニングも。にしても可愛いなおい。

柔道とは関係ないですが…

今回はケニアの宗教について、少し紹介させてください。
ケニア人の約80%がキリスト教を信仰していると言われています。
日曜日の午前中、多くのケニア人が礼拝に出かけます。

そのためケニアの至る所に教会があります。

私はキリスト教信者ではないので、教会に入ったことがありません。でも家の近所にもあるので、いつも様子を盗み見ています。

毎週日曜日、ここから音が聴こえます。

キリスト教の礼拝、厳かな雰囲気の中、聖書の朗読…
なんてのを想像していたのですが。
実際にはお祭り騒ぎです!

陽気な音楽とともに歌い声や手拍子が聴こえます。午前中ずーっと。
イメージとしては“天使にラブソングを”。まさにあんな感じです。
屋外ステージみたいなところでは毎週、踊りながら歌っています。

なんだかすごく楽しそう。
いつか行ってみたいです。

私の身近なところで言うと、練習やミーティングの後、みんなで祈りを捧げます。練習後はみんなで円を作って祈ります。

こんな感じ。そして最後に声を揃えていいます。“アーメン”

この“アーメン”のタイミング、慣れるまでは難しかったです。でも今やお手のもの。感謝や祈りを口にして最後に“アーメン”です。

僕は今までに日本以外でもいくつかの国で柔道の練習に参加させていただきました。でも他の場所ではこういったお祈りのようなものはありませんでした。また違う世界、違う文化です。

また、キリスト教徒にとって、クリスマスは大きな大きなイベントです。クリスマス前から年末にかけてはお休みになります。

僕もせっかくなので休暇をいただいて、日本に帰ることにしました。楽しみです。鰻、ホルモン、明太子、もつ鍋、蟹味噌、納豆。堪能してやります♪

さて、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

ご紹介したように、今までとは違った宗教や文化に触れられて、楽しいです。素敵な人生を歩ませていただいております。これからも前向きな教え子たちとともに、精進してまいります。何卒よろしくお願いします。アーメン。


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