ブータン🇧🇹より【カディンチェ柔道日記!No.21】

JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。

南アジアのブータン王国🇧🇹でJICA青年海外協力隊として活動をしている福井勇貴さんからの活動報告です!


カディンチェ柔道日記🇧🇹🥋

※Kadrin Chhe la(現地語 ゾンカ)ありがとう
ブータン柔道はこれまで多くの方々のご協力、支援があってここまで来ました。
そんな感謝の気持ちからタイトルコールはカディンチェとさせていただきました。

作成日:2025/02/24
作成者:福井 勇貴

皆様、お世話になっております。
JICA海外協力隊としてブータンナショナルコーチをしています。福井 勇貴(ふくい ゆうき)です。

先日アゼルバイジャンのバクーでグランドスラムが開催されていましたね。私も、キャンプ中ではありましたが、空き時間に試合結果などを見ていました。日本からも多くの選手が出場していましたが、中でも-100級の新井道大選手の優勝そしてあの決勝戦の出足払いには、感動しました。

また、先日丸山城志郎選手の引退が報道されていましたね。当協会の柔道選手でも丸山選手のファンが多く悲しんでいました。私の尊敬している柔道家の1人ですので国際大会等で見ることができないことに少し、寂しい気持ちです。

さて今回のテーマは前回の最後にお伝えしたように、2月8日から全日本柔道連盟からスポーツフォートゥモローとして3人の学生の方々が日本からブータンへ来てくださいました。9日から私たちは10日間の柔道キャンプを実施しましたので、その様子についてお話しさせていただきたいと思います。

Sports for tomorrow Volunteers come in Bhutan

上記にも記載しましたが、2月8日から19日までの10日間3名の学生さんたちが日本からスポーツフォートゥモローのプログラムでブータンへ来てくださいました。3人の学生さんを簡単に紹介させていただきます。田畑さん(東海大)、福田さん(山梨学院大)、Mai Vander Scheer(筑波大)さんの3名です。ブータンを派遣国に選んでくださった全日本柔道連盟の皆様、講道館の皆様、サポートをしてくださっているJUDOsの皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。

Day 1 of AJJF Judo Camp

上記に記載のように、私たちは10日から柔道キャンプを行いました。キャンプのスケジュールは、午前10時〜12時トレーニングor稽古、ランチを全員で取り、13時〜15時まで稽古を行いました。

初日の10日の午前中は3人の学生さんに自己紹介をしていただいて、その後全員で準備運動、柔道の動きを使ったエクササイズ等を行いました。

参加した選手たちは最初人見知りをしていましたが、3人の学生の方々と楽しそうにしていました。

その後、全員で学校の食堂でランチをとり、13時から午後の稽古を行いました。

午後の稽古では、準備運動、寝技の補強、寝技乱取り、打ち込み、移動打ち込み等をして乱取りを行いました。

午後の稽古では、3人の学生さんも選手たちに混ざって一緒に稽古をしてくれました。

選手たちもあまりない経験にウキウキしながら稽古をしていて、その様子を見ていた私も嬉しく思いました。

また、稽古の後当協会のスタッフ、コーチ陣、学生さんたちとWelcome dinnerを行いました。ブータンで有名な伝統的な建物で伝統的な料理を食べることができるレストランBabesa Village Restaurantというお店に行きました。学生さんたちも初めてのブータンの伝統的な料理に心を躍らせていました。ここで少し話はずれますが、実は2年前に講道館館長の上村先生、仮屋先生、谷本歩実先生、オーストリア柔道家のサブリナさんがブータンに来られた際にもこのレストランに行きました。その際もみなさん喜んで食事をしてくださっていました。ぜひブータンへお越しの際は立ち寄ってみてください😊

 

Day2 of AJJF Judo camp

キャンプ2日目からは1日目の稽古等で感じたことや日本から準備してきてくださったことを学生さんたちが中心となって子供達に指導してくださいました。

午前中はウォーミングアップ、足技の強化、俊敏さを図るステップトレーニングを行い、その後、帯の後ろに色帯をつけた尻尾とりゲームをしたり、全員での自重トレーニングを行いました。午前中のトレーニングが終わり1日目と同様学校の食堂で全員でランチをとりました。その後13時から柔道の稽古として、寝技の打ち込み、寝技の乱取り、打ち込み、移動打ち込み、引き出しのやり方を指導していただき全員で乱取りを2分×5本3セット行いました。普段人数の関係等もあり、あまり多くの乱取りの本数ができませんが、このキャンプでは総勢約50名程度の選手が参加したため元立ち乱取りで多くの乱取りをやることができました。また、学生さんたちもブータンの選手たちとたくさん汗を流して稽古してくれました。

 

Day 3 of AJJF Judo Camp

キャンプ3日目の午前中はキャンプ参加者全員の交流ということでフットサルを行いました。午後は参加者全員を初心者+ジュニア、シニアの2つのグループに分けて技術練習を行いました。初心者+ジュニアのクラスでは、引き出しや移動打ち込み、連絡技の移動打ち込みといった基礎的な練習を、シニアのクラスでは、応用的な移動打ち込みや連絡技、低い背負い投げの練習を指導してくださり、その後全員で前日同様2分×5本×3セットの乱取りを行い、その後寝技の一本取りを10分間(5本先取して上がり)を行いました。

選手たちも3日目ということでだんだんと緊張が解けてきて自ら学生さんたちに技を教わりに行ったり、稽古をお願いしに行っていました。

以前の私の活動報告でもお話をしたかと思いますが、ブータン人は子供、大人に限らずとてもシャイな性格なので数日経って少しずつ緊張が解けてきて自ら色々な話をしに行ったり、技を教わりに行ったり、稽古をお願いしに行く様子を陰ながら見ている私はどこか嬉しい気持ちでいつも見ています。

このように子どもたちの成長を一番近くで見ることができるのは、指導者の醍醐味ですね。

Day4 of AJJF Judo Camp

キャンプ4日目のこの日の午前中は、前日と同様2つのグループに分かれてジュニアグループは背負い投げの基礎練習と後周りさばきの背負い投げを指導してもらい、シニアグループは、低い背負い投げと背負い投げの応用的な動きを指導してもらい、午後は、約1時間打ち込みや持ち上げ打ち込み、移動打ち込みといった基礎的な練習に加えて、乱取り2分×5本2セット、寝技の乱取り10分(5本先取して上がり)を行いました。

 

Day5 of AJJF Judo Camp

キャンプ5日目のこの日の午前中は、柔道の稽古やトレーニングではなく、今年1月に新たに改定された国際柔道連盟試合審判規定についての説明を動画を用いて説明してくれました。以前にも私から改定された時に説明を子どもたちには説明をしましたが、きちんと身につけるためにも学生さんたちにお願いして詳しくきちんと説明していただきました。

有効が復活したことなどにより少し複雑化されている新ルールですが、子どもたちからもいくつかの疑問点を質問していてとても有意義な時間だったと思います。

また、10月に開催予定のAsian Youth Gameの柔道協会出場者候補の参考にするセレクションを翌日に控えていたので、午後は連日の稽古に比べて少しの量を減らして稽古をしました。ここで少し話しはそれますが、簡単にこのAsina Youth Gameへの出場に向けたブータンチームについて説明させていただきたいと思います。このAsian Youth Gameは10月にバーレーンにて開催が予定されていますが、まだブータン柔道協会から出場が可能か決定していません。ブータンオリンピック委員会からの通達では、現状どのスポーツを出場をさせるかは決定はしておらず、まず初めに各協会が出場者候補者を決め、その後ブータンオリンピック委員会によるミーティング、セレクションにてどの協会からどの選手を出場させるのかを決定するそうです。私たちにも現在詳しい情報が届いていないという状況もあり、手探りで進めている状況です。

話は少し外れてしまいましたが、これがこのAsian Youth Gameについてのブータンの現状です。そのようなこともあり、連日の選手たちの疲れ、翌日のセレクションということを踏まえて少し軽めの稽古を実施しました。

また、数人の選手が翌週から長期休みが終わり、学校のプログラムが始まり稽古に来れないため、午後の稽古終了後に、学生さんが日本から持ってきてくれた日本のお菓子を全員に配ってくれました。

日本のお菓子を手に取っていた子どもたちはとても嬉しそうに笑っていました。

アジアユースゲーム セレクション大会

上記にも記載したように、キャンプ6日目のこの日は、アジアユースゲームのブータン柔道協会からの出場者候補を決めるセレクション大会を実施しました。

このセレクションの大会では、学生さんにお願いしてレフリーをしていただきました。

ブータンや南アジアでは、このような重要な大会での審判というのはものすごくセンシティブです。というのも、例えば、私が教えているチームと地方のチームの選手が試合している時に私が審判をして、優勢なポイントで私のチームを勝利させた際にどんな公正な審判をしていてもその負けたチームのコーチ陣は納得がいかず、やや難しい状況になるということが予想されるため、この日は日本から来ていただいている学生の3人に公正な審判をお願いしました。

このセレクション大会は14-18歳という年齢の制限がある試合で出場者もあまり多くいませんでしたが、出場した選手それぞれ自信と覚悟を持って一生懸命試合に挑んでいました。今後この大会結果や普段の稽古の様子などを踏まえて柔道協会内で話し合って候補者を決定していきたいと思います。

 

Day7 ブータン柔道協会ハイキング

この日は日曜日で普段であればオフにしていましたが、せっかく日本から来てくれている学生さんたちがいるということで、希望者を募り、トレーニング兼観光、交流ということでブータンで一番といっていい観光地のタクツァン僧院へハイキングに行きました。

朝8:30に学校に集合して、学校のバスでタクツァン僧院のふもとまで1時間半程度向かい、その後僧院を目指してハイキングを開始しました。

この僧院に行くには、おおよそ2時間のハイキングをして2400mから約3200mまで登らなければいけません。全員で力を合わせて目的地の僧院に行きブータン式のお祈りをして、往復約1400段の階段を上り下りして下山しました。下の麓に着いたのは、ハイキング開始から約5時間の15:30で昼食をふもとで取る予定だったので、お腹がぺこぺこでしたが全員が下山するのを待って、麓の草むらの上に大きな円を作って座って昼食をとりました。昼食後は全員で片付けをして、バスに乗り込んで首都の学校がある場所まで1時間半かけて帰りました。ここで少し嬉しかったことがあったので皆さんにも共有させていただきます。昼食を食べていた場所にはいくつかの大きな岩がありました。その岩の影には以前にそこを利用していた人が捨てていったプラスチックのゴミが散乱していました。

全員がランチを食べ終えた後私は全員に自分で持ってきたゴミはきちんと持ち帰るようにという指示を出しました。しかし、何人かのシニアの選手たちが、どこからかビニール袋をいくつか持ってきて、その岩陰に捨ててあったゴミを全て回収して学校まで持ち帰ってきました。ブータンでは一般的にポイ捨ては当たり前です。しかし、柔道をしている私たちはそんなことをしてはいけませんし、そのような人がいたら注意できる人間を目指しています。まさに今回の行動をしてくれた選手たちは柔道家としても人間としてても素晴らしいと私は思いますし、そのような文化があるブータンでこの行動ができるのは、これまでブータンで指導に携わっていた先生方の指導の賜物だと思います。

今後もこのような大事なことをどんどん若い世代に伝えていってほしいと思います。

話はそれましたが、学校へ向かう帰りのバスの車内では、全員が疲れ果てて爆睡でした。

参加した子供達、日本から来た学生さんたちが少しでもこのハイキングを楽しんでくれたのであれば企画したコーチ陣の私たちは嬉しいです。

私も素敵な時間を過ごすことができました。

 

Day 8 of AJJF Camp

キャンプ8日目のこの日は選手たちの学校がスタートする日だったため午後からの稽古のみでした。14時に稽古を開始して、準備運動を終えた後、2つのカテゴリーに分かれての寝技の技術練習を行いました。

シニア選手は関節技の練習、ジュニア、ビギナーの選手は、亀の常態からの押さえ込み技の練習と横四方固めの状態で足を絡まれている状態から足の抜き方について練習をしました。

選手たちはこれまで挑戦したことのない関節技や寝技の練習に少し苦戦していましたが、新しい技の練習に心を躍らせながら真剣に稽古に励んでいました。

その後2分×5本の寝技乱取りを全員で行いました。

 

Last day of AJJF Camp

キャンプ9日目のこの日は最終日でした。この日も前日同様選手たちの学校が始まっているということから午後5時からの稽古でした。

全員で準備運動を行い、打ち込み等を終えた後に乱取り2分×5本×3セットの乱取りを行いました。その後20分の研究練習を行い、その研究練習では、選手たちがわからない疑問や質問を3人の学生さんに聞ける時間としました。この20分の研究の時間では、多くの選手たちが学生の3人に質問や技の指導を受けに行く様子が見られました。

その後全員で整列をしていた時に私からの無茶振りにはなりますが、3人の学生さんたちから子供達へのスピーチをしてもらいました。スピーチを聞いていた子どもたちはどこか寂しそうな様子でスピーチを聞いていました。

きっと3人の学生さんと行ったこの10日のキャンプは子供達にとってかけがえのない、とても貴重な時間になったのではないかと思います。

その後、全員での集合写真を撮りました。集合写真のあとは多くの子どもたちが3人のところに行き、記念撮影をお願いしに行っていました。写真を撮ってもらっていた選手たちはものすごく嬉しそうにしていました。

その後夜8時から3人の学生さんたち、協会運営陣、コーチ陣でのフェアウェルを行いました。最後になるブータン料理を前にこれまでの10日間の思い出を全員で語り合いました。

この10日間のプログラムが3人の学生さんたちにとって少しでもいい時間であったのなら運営メンバーの私も嬉しく思います。

Other Shot of BJA

今回も最近のブータン柔道協会のオフショットを少しばかりですが、ご紹介したいと思います。

〜さいごに〜

上記に記載したように2月8日から全日本柔道連盟のスポーツフォートゥモロープログラムによって3人の学生さんがブータンへ来てくださいました。

それに伴って10日から柔道キャンプを開催しました。このキャンプでは、首都ティンプーから2チームと南部ゲレフの柔道クラブが参加し、総勢50名のキャンプになりました。

このキャンプでは、3人の学生さんたちから柔道の動きを使ったエクササイズや立技、寝技の指導や引き出し、追い込みといった基本動作の練習、新国際試合審判規定、柔道に対しての精神面などについてそれぞれ指導していただきました。

参加した選手たちは日本から来てくれた3人に目を輝かせて連日の稽古に参加していました。

このキャンプの中盤では、10月に開催されるAsian Youth Gameのブータン柔道協会の代表選手を決めるセレクションも実施しました。このセレクションでは、3人の学生さんたちに審判をしてもらい試合を実施しました。

また、翌日の16日には、希望者全員による首都から少し離れたパロという地方にある有名なタクツァン僧院ハイキングを実施しました。このハイキングでは、下は8歳から大人まで総勢30名が参加しました。参加した全員が3人の学生さんたちとコミュニケーションを図り、とても楽しい時間を過ごすことができました。

キャンプ最終日まで全員が怪我をすることなく、とても良い柔道キャンプにすることができました。

選手たちにとっても、とても貴重で良い経験になったと思います。また、3人の学生さんたちにとっても貴重な時間になったのではないかと思います。そして、ブータンでの滞在が少しでも良い時間であったのであれば、運営した私もとても嬉しく思います。

また、この柔道キャンプがブータンの国営放送(Bhutan board cast Service)にて放送されました。この放送の様子について下にリンクを貼らせていただきますので、もしお時間がある方は是非見てみてください。

国営放送(Bhutan board cast Service)※英語インタビュー

記事(Bhutan Judo Association to select new national Judokas)

次回について

次回は、Offを終えて26日から再開した柔道の稽古、最近のブータン柔道協会についてお話しさせていただきたいと思います。

少しでもこの記事を見てブータン柔道について興味を持っていただいたり、応援してくださったりすると嬉しいです。

さいごまでご覧いただきいただきありがとうございます。

Kadrin Chhe la(現地語ゾンカ)ありがとうございました。

Lok jae ge la(現地語ゾンカ)また会いましょう☺️

各種SNS

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https://www.facebook.com/BhutanJudoAssociation?mibextid=LQQJ4d

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