ブータン🇧🇹より【カディンチェ柔道日記!No.17】

JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。

南アジアのブータン王国でJICA青年海外協力隊として活動をしている福井勇貴さんからの活動報告です!


カディンチェ柔道日記🇧🇹🥋

※Kadrin Chhe la(現地語 ゾンカ)ありがとう
ブータン柔道はこれまで多くの方々のご協力、支援があってここまで来ました。
そんな感謝の気持ちからタイトルコールはカディンチェとさせていただきました。

皆様、お世話になっております。JICA海外協力隊としてブータンナショナルコーチをしています。福井 勇貴(ふくい ゆうき)です。

前回の9月にはブータンでとても大きな仏教的なお祭りがあるというお話をしましたが、9月9日に日本の友人がブータンに遊びにきてくれたことから、三年越しに参加してきました。このイベントでは、多くのブータン人が前日の夜中から列を作って、そのお祭りに参加していてその人数にはものすごく驚きました。

さて今回のテーマは前回の最後にお伝えしたように、8月15日からブータンで初となるYouthの国際大会、フレンドシップ柔道キャンプを開催しましたので、そちらのイベントについてお話しさせていただきたいと思います。

 

フレンドリー柔道キャンプ

上記に記載のように、8月17日にブータンで初となるYouthの国際大会を開催しました。それに先立って15日から参加者全員によるフレンドリー柔道キャンプを実施しました。

今回のイベントでは、ブータンのチームが2つ、タイ・プーケットを拠点にしているフランスの先生が指導されている柔道クラブ、南インドの4チームが参加しました。

これまでブータン柔道協会では、Youth世代の国際大会の開催をずっと考えておりました。そんな中、昨年の秋ごろから、プーケットのクラブで指導されているフランスのAlex先生の全面的な協力があり、今回の大会・イベントの開催が実行することができました。

プログラム初日の15日は、参加者全員による稽古を行いました。

プーケットの柔道クラブの選手、インドの選手達は積極的に乱取りの相手を見つけに行ったりしていた様子に対してブータンの子達はものすごく人見知りを発揮していました。今回参加した選手たちのほとんどが、海外の選手と交流をするのが初めてなので、ブータンの選手たちはとても緊張した様子で練習を行なっていました。

私としては今後、ブータン柔道に在籍している全カテゴリーの選手たちがこのように定期的に、海外の選手と柔道を通じた交流を行い、身体的、精神的に柔道家として強くなってほしいですし、このような交流を通じて、さまざまなことを経験してほしいと思います。


合同稽古の様子

Day2 Bhutan Youth International Judo Program

2日目の16日は1日目同様に参加者全体による寝技と立技の合同稽古を行いました。

この日の稽古では、初日に人見知りを発揮していた、ブータンの選手たちも、少しずつ自分から相手を見つけて乱取りをしにいく様子を見ることができました。大会が翌日ということもあり、選手の全員がいい緊張をしつつ、とても激しく気合の入った稽古を行なっていて、たくましく感じました。

また、練習後には、翌日の試合のための計量とコーチ陣のテクニカルミーティングを実施しました。これまでブータンで開催した国際大会では、ネパール柔道協会のテクニカルダイレクターの方がブータンに来て、実際にさまざまな指導をしてくださったりしていましたが、今回は私たちブータン柔道協会のメンバーだけで国際大会を運営することなります。

国際大会の運営経験が少ないため、分らないことも多かったのですが、全体で協力しテクニカルミーティングを行いました。

このテクニカルミーティングでは、大会での注意事項、ルールについて、大会・イベント日程の共有、大会抽選を行いました。ミーティング中は、プーケット柔道クラブ、インドチーム、ブータンのチームときちんとコミュニケーションをとることができ、とても充実していたように感じました。

ミーティング後は、大会会場の設営でした。初めての自分たちだけでの運営ということもあり、終始トラブルが続きでしたが、なんと22:30には全ての設営が終了し、大会を開催できるようにすることができました。遅くまで一生懸命設営や準備をしてくれたコーチ陣やスタッフにはとても感謝しています。この大会のテクニカルダイレクターを担当したコーチの1人は自宅にパソコンを3台も持ち帰り急な問題に備えて、夜中までさまざまな対応をしてくれました。


テクニカルミーティングの様子


大会会場設営の様子

1st Bhutan Youth International Tournament 2024

17日に、ブータン柔道協会で初となるYouthの国際大会を開催しました。このYouthというのは、14歳以下という意味です。

ブータンはもちろん南アジアにも、このYouth世代の国際大会開催というのは決して多くはありません。今後のブータン柔道を引っ張ってく、次世代のYouth世代の国際大会経験が必須だと私たちは考えており、南アジア地域での大会が少なく、出場をすることができないのであれば、Youth世代の国際大会をブータンで開催したいと話していました。さまざまな方の協力があり、今回開催することができました。

今大会では、上記の記載のようにタイのプーケットを拠点に指導されているフランス人のAlex先生率いるプーケット柔道クラブ、インドのチーム、ブータン初代現地コーチで現在ブータンの南部で2つの柔道クラブを指導しているペマ先生を率いるゲレフ柔道クラブ、私達首都のペルキル柔道クラブ、ジロン柔道クラブが参加しました。

前日のテクニカルミーティングでは、各チームのコーチ陣と話合いを行い、今回の大会では、選手の勝利も重要だが、それ以上に、選手の一人一人がさまざまな選手との試合を多く経験することを一番の目的にしたいと決まり、多くのカテゴリーはノックアウト式ではなく、総当たり戦で行いました。総当たりにしたことで、試合数は当初の予定よりも多くはなりましたが、選手たちは白熱した試合を繰り広げていて、この大会が選手たちの貴重な経験になれば良いなと思いました。全試合としては、全選手が自分の持っている技、普段の練習の成果を精一杯試合で発揮していた様子でした。

また、格上の相手にも胸を張って戦っている選手たちには私も心を動かされました。

私が指導をしている首都の2つのチームの結果は、8,10,12歳以下カテゴリー、-35kg級では2位が1人、3位が1人で-40kg級3位1人、14歳以下カテゴリー、−43kg級(女子)3位1人-53kg級2位1人という結果でした。

結果以上に選手たちは持っている精一杯の力を見せてくれましたし、他国の選手たちは私たちの倍以上、何十倍もの試合経験があり、実力も何倍もある選手たちに向かっていった様子を私は見ることができてとても嬉しかったですし、彼らの今後がとても楽しみになりました。

以前にも私の活動報告で記載させていただいた私が指導している首都のチームに在籍している小学4年生の女の子チミちゃんには、1つ上のお兄ちゃんのキンガくんがいます。今回はその2人のYouth大会前での出来事について少し皆さんにお話しさせていただきたいと思います。

彼らは柔道を始めて約4年になります。私は2022年の5月から彼らを見ています。2022年の頃は特に妹のチミちゃんはとても泣き虫でお兄ちゃんの後ろをくっついて歩いていていました。とてもではありませんが柔道が好きな女の子ではありませんでした。しかし、以前の活動報告で取り上げさせていただいた頃から、彼らは大きく変わり柔道にとても前向きに取り組むようになりました。

今回のYouth大会前でもそれを垣間見ることが出来ました。

私は、技術練習を行う前に全員を集めて、今後大会の選手選考を行なっていくこと、普段の練習での様子をきちんと判断して選考をするということを、話しました。その後打ち込みや乱取り等の稽古を行い、その日の全体の練習を終えました。練習を終えて初心者の幼稚園生と遊んでいたところ、キンガ、チミ兄妹が私を呼び、誰もいないところへ引っ張っていきました。何事かと思ったら、その内容は、「先生、この大会で私たちを選んでください、出たいです」というです。

その瞬間、私は驚きと共に嬉しい気持ちでいっぱいになりました。

約2年前はあんなにシャイで口数も少なく、柔道が好きで来ているようには決して見えなかった2人が自分の口から試合に出たいですという言葉を発してくれたことにとても嬉しく感じました。

このことがあったというわけではなく、普段の練習での様子、出席数を鑑みて、コーチ陣で話し合い、この2人の出場を決定しました。

実際に大会では、格上の相手に一歩も引かず、自分の持っている技を精一杯かけて試合をしていました。そして、兄のキンガは-10歳以下カテゴリー−40kg級3位、妹のチミは-10歳以下カテゴリー-35kg級2位を獲得することができました。

今回1つのエピソードとしてこの兄妹のお話をさせていただきましたが、私たちのナショナル選手からYouthの選手、初心者の選手全員が日々自分たちの課題を達成すべく一生懸命に稽古を行なっています。また、柔道が好きだと言って継続して来ている子どもたちも最近ではとても増えてきました。この背景には、アシスタントコーチやサポートメンバーがきちんと選手たちと向き合って指導をしているからだと感じます。

今後の彼らの成長に期待していきたいと思います。


試合後に対戦相手とハグをかわす

試合後のプーケット柔道クラブの様子

Last Day of 1st Bhutan Youth Judo program

大会から一日休日を挟んだ19日のプログラム最終日のこの日は、プーケット柔道クラブを指導しているAlex先生が参加者全体へ向けた稽古をしてくださいました。この日の練習では、普段プーケット柔道クラブの選手たちが行なっているドリルトレーニングから、基礎的な運動、柔道衣を使ったペアで行えるトレーニングサーキット、乱取りを行いました。

私のこの日の稽古の所見は、Alex先生の稽古は短い時間で効率よく無駄な時間を作らない稽古だと感じました。私自身ブータンで指導する際に、選手たちの集中できる時間を考えて毎回の練習の時間を1時間30~45分にしています。私も学生時代、稽古時間が長いのは、どうしても集中が持たずきつい思い出でした。そんなことから基本的にはそのような稽古時間にしています。Alex先生の稽古は、私にとってもとても貴重な時間になりましたし、勉強になる稽古でした。

Alex先生の稽古が約1時間半後に終了しました。その後、このYouth国際プログラムを締めくくる最後のイベントを行いました。それは、全選手、コーチをミックスにして、くじ引きでチームを作る男女混合団体戦の練習試合の開催です。これは、選手たちのさまざまな経験を培うために、大会前日のテクニカルミーティングでコーチ陣と話をして決めました。6人1チームで4つのチームを作り、総当たりの団体戦にしました。

時間的制約から、試合時間1分で判定が決まらなければ、引き分けというルールで、団体戦を4試合ずつ行いました。

選手たちは、1分間という短い時間の中で普段練習している技を果敢にかけていました。今回のこの試みは、私たちにとっても初めての試みでしたが、今後普段の稽古でも実施していきたいと思います。

この全チームミックスによる男女混合団体戦では、アレックス先生がコーチを務めたAチームが総合優勝を飾りました。勝敗は重視せず、選手たちがさまざまな選手との練習試合を経験するということに重きをおいて実施しましたが、優勝チームには少しですが、ブータン柔道協会からギフトを用意しました。選手たちの交流という面でも、全員にとって有意義な時間になっていた様子を見ることができて私もとてもよかったです。

Other Shot of BJA

今回も最近のブータン柔道協会のオフショットを少しばかりですが、ご紹介したいと思います。


大会前のアップの様子


大会期間中観戦に来ていた保護者の方々

チームThimphu Bhutanの出場選手とコーチ陣の集合写真

さいごに

今回は、8月15日に開催しましたYouth国際プログラム「Bhutan Youth International Judo tournament 2024」についてお話しさせていただきました。

この大会の開催は、これまで私たちブータン柔道協会の中でも思い入れが強かったイベントの1つでした。そんな中アレックス先生が私たちの活動に興味を持ってくださり、協力をしていただいて今回の開催に至りました。この大会では、Youth世代(-8歳-10歳-12歳-14歳)による国際男女個人戦を行いました。私たちがこの大会を開催した大きな理由の1つとしては、ブータンのYouth世代の選手は国内だけの大会しかなく、南アジアをはじめとしてYouth世代の大会があまりなく、国際大会、海外選手との柔道を通じた交流が極めて少ないということがあり、この大会を運営することになりました。そこから、プーケット柔道チーム、インドチーム、ゲレフ(ブータンの地方チーム)が興味を持ってくれて、大会を開催することができました。

大会のスケジュール
14日参加者がブータンへ到着
15日午後から合同稽古
16日合同稽古
17日Bhutan 1st Youth Judo Tournament開催
18日Off
19日最終合同稽古
20日参加者が帰国

全日程を振り返って参加した全選手が怪我なく、有意義に時間を過ごしていた様子を見ることができました。特に、私たちのブータンチームは、初日は人見知りをしていて全く他の出場者と会話ができなかった選手たちが、日が過ぎるたびに自分たちで色々な人たちと会話をして、柔道を通じた海外交流をしていた様子を遠くから見ていた私たちはとても嬉しくなりました。

また、今回のYouthプログラムの全日程を通じて、ブータンの選手たちは柔道家としても人間としても大きく成長をしていたと思いますし、このプログラムを通じて多くのことを吸収していたと思います。

今後このプログラムで得た経験や技術等を今後の稽古に役立てていきたいと思いますし、今後更なる成長に期待していきたいと思います。

また、今回の大会運営では、私たちのコーチ陣やシニアメンバーが全勢力を上げて運営のサポートをしてくれました。この大会運営で得た経験値を次回の大会運営に活かしていきたいですし、定期的にこのように国際大会をブータンで開催できるように日頃から準備をしていきたいと思います。

次回について

次回は9月21日からタイで開催されましたThailand International Judo Tournament 2024にブータン柔道チームが出場しました。そちらの大会までの様子、大会での様子についてお話しさせていただきたいと思います。

少しでもこの記事を見てブータン柔道について興味を持っていただいたり、応援してくださったりすると嬉しいです。

さいごまでご覧いただきいただきありがとうございます。

Kadrin Chhe la(現地語ゾンカ)ありがとうございました。

Lok jae ge la(現地語ゾンカ)また会いましょう☺️

各種SNS

☆Bhutan Judo Association official Facebook
https://www.facebook.com/BhutanJudoAssociation?mibextid=LQQJ4d

☆福井勇貴 活動アップロード Instagram
https://instagram.com/jocv_fukui_yuki?igshid=MjEwN2IyYWYwYw==


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