JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。
南アジアのブータン王国でJICA青年海外協力隊として活動をしている福井勇貴さんからの活動報告です!
カディンチェ柔道日記
※Kadrin Chhe la(現地語 ゾンカ)ありがとう
ブータン柔道はこれまで多くの方々のご協力、支援があってここまで来ました。
そんな感謝の気持ちからタイトルコールはカディンチェとさせていただきました。
皆様、お世話になっております。
JICA海外協力隊としてブータンナショナルコーチをしています。福井 勇貴(ふくい ゆうき)です。
ついに4年に一度のスポーツの祭典オリンピックが開催されましたね。
世界的なCovid-19の大流行によって東京五輪の開催が一年延期され、それから約三年目となる今年のパリ五輪ですが、東京五輪が開催されたのが、つい最近のような気分です。
柔道ももちろんですが、全ての競技がとても楽しみですね。
さて今回のテーマは前回お伝えしたように、6月28日から私たちブータン柔道協会で開催したSummer Judo Campについてです。今回はそのCampの初日の28 日に開催しましたPDCAサイクルについてのセミナーとアスリートミーティングの様子についてお話しさせていただきたいと思います。
PDCA サイクルセミナー
私たちブータン柔道協会では毎年夏と冬の長期休みには柔道キャンプという(夏合宿)を実施しています。今年も6月28日から7月13日までの14日間開催しました。このSummer Judo Campでは、午前中から全員が集まってウエイトトレーニング、ランニングトレーニング、道場トレーニングを毎日日替わりで行っていて、午後は全員で立技や寝技の稽古を行うという日程です。今回、このサマーキャンプの初日に私は、全体でのアスリートミーティングを行いたいと考えていました。ミーティングを実施した目的は、これから始まるサマーキャンプへの勢いづけ、選手間のモチベーションの向上です。
実際に私が話した内容というものは大きく分けて3つの内容になります。
1つずつ章を分けてお話しさせていただきたいと思います。
まず、1つ目はPDCAサイクルについてパワーポイントを用いて説明を行いました。
さて、皆さんはPDCAサイクルとは何かご存じでしょうか?
前回の私の活動報告を読んでくださった方は少しご存じかと思いますが、PDCAサイクルについて簡単に説明しますと、継続的なプロセス改善を目指す手法管理です。このサイクルでは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(確認・反省)、Action(改善策の実行)を1つのサイクルとして、プロセスや業務の継続的な改善を促進します。同じサイクルを計画的に繰り返すことによって、問題点を繰り返し見直し、改善することで、アスリートのパフォーマンスの継続的な向上や具体的な目標設定や内容計画が見込めます。きっとこのサイクルを日本人の多くの皆さんは自然と行なっていて、日々の生活・業務の効率の向上や成績の向上に役立てていることだと思います。
私もきちんとこのサイクルについて勉強をしたのは、最近ですが、この勉強をしていたときに学生時代にこのサイクルを独自に行なっていたなと思い出しました。
前回のNo13号でもお話しさせていただきましたが、ブータンの人々は計画を立て、その計画に基づいて長期的に行動するということが非常に苦手だと私は感じます。そんな背景から今回のPDCAサイクルの内容を聞いて今後客観的、具体的に自分について考えられる1つの手法にしてほしい、そしてその手法を利用して今後柔道の稽古やトレーニングで活かして更なるパフォーマンスの向上に努めてほしいという気持ちで実施しました。
選手たちはこれまで聞いたことない内容だったようで、パワーポイントのスライドごとにスマホで写真に収めたり、ノートにメモしたりしていました。
一回のミーティングだけでこの手法がブータンの選手たちに浸透はしないと思っていますので、今後も継続的にこのようなアスリートにも役立てることができる手法などを彼らに伝え続けていけたらと思います。
少しですが、今回私が作成し、使用したパワーポイントを添付させていただきますので、こんな感じで行ったのだなと想像していただけると嬉しいです。
アスリートにおけるモチベーション・コンディションについて
2つ目は、アスリートにおけるモチベーション・コンディションについて話をしました。
ここでは、前回のNo,13でも記載しましたが、ブータンでは文化的な背景などから日本とは違い、長期間継続的に競争心を持ち続けるということが難しい選手がほとんどです。
そのような文化的背景の中でも、彼らは今後世界と戦い勝負していく必要があります。そんな中、アスリートとして自分がどのようにしてモチベーションを高く維持し、稽古やトレーニングに向き合っていく必要があるのか、コンディションを向上していく方法を知るという意味を込めて今回実施しました。
今回は初回ということもあり、具体的にはアスリートに必要なことはどんなことがあるのか?
いくら稽古などをしてもあまり成長を感じることができない行動、そしてその行動を継続していくとどんなことが起こるのか?それを避けるにはどのようにしていく必要があるのか?など具体的な例を用いて説明をしました。
アスリートにおける必要なことでは、もちろんアスリートとしての体づくり、稽古をあげました。それに加えて、準備する力、予測力、観察力、考える力というものをあげそれぞれを1つ1つ具体的にパワーポイントを使用して説明をしました。
そして、どんなに稽古をしてもあまり成長を感じることができない行動として、メリハリがなくただ時間を過ごす稽古をしている状況、打ち込みの際にただの運動になっている状況を例として説明しました。
そしてその行動にどんな悪影響が生じるのか?というところでは、貴重な時間を捨ててしまう、自分の成長の機会を自分で潰してしまう、その良くない状況が習慣になり、本気で成し遂げたい時に本気が出せなくなってしまう。という説明をしました。
そんな状況を避けるにはどんなことが必要なのか?については、PDCAサイクルなどを利用して、明確な目標をきちんと設定し、きちんとしたサイクルの元で稽古やトレーニングに計画的に取り組む、何事にも全力で与えられた時間に取り組んでみる、悔しいという気持ちを忘れずに持ち続けて反骨心を持って取り組むなどを説明しました。
ここでも使用したスライドを添付させていただくので、こんな感じで行ったと想像していただけると嬉しいです。
ミーティングのまとめ
3つ目は、このミーティングでのまとめを話しました。
ここでは、上記の2つのトピックの話し合いを踏まえて、選手一人一人がきちんと自分に向き合って明確な目標をもち、それに伴って行動、反省して、選手としての能力の向上、人間力の向上を目指してほしいという話をしました。また、私たちは柔道選手で、もちろん柔道の稽古やトレーニングも重要ですが、それと同様もしくはそれ以上に柔道を通じた人間形成を重要視していくという話もしました。
ここでは、「何かを成し遂げたいなら楽な道を選ばないで、きつくて辛い道を選びなさい。」「そうすれば、いつか結果はついてくる」という話を選手たちに今回のまとめとして話しました。
私としては、このきつくて辛い道を選びなさいというのはアスリートとしてはもちろんですが、その道を通った先には、柔道以外の場面でもきっと人間的に1回りも2回りも成長できるという意味を込めて彼らには今回話をしました。
同じく口頭にはなりますが、柔道を通じた人間教育を今後も力を入れていくという話をしました。私も、柔道を始めて20年以上が経ちました。そして現在ブータンで指導者という立場になりつくづく感じるのは、柔道を続けて来て本当によかったということです。
これは、技が上達したとか体が大きくなったとかという話ではありません。
柔道を続けてきたことによって、嘉納先生の教えであります「精力善用」「自他共栄」(柔道を通じて身につけた力や能力を世の為人のために使い、互いに助け合う)という気持ちや人々に対する尊敬の気持ち、きちんとした挨拶などを身につけることができました。そして、そんな柔道を通じて現在ではブータンという国で指導者ができています。ブータンの選手たちにも柔道を通じた教育、人間形成に役立てていってほしいですし、柔道を通じてどんな形でも世界に羽ばたいてほしいと思います。
ここでも使用したパワーポイントを添付させていただくので、こんな感じで行ったのだなと感じていただけたら嬉しいです。
Other shot of BJA
今回も最近のブータン柔道協会のオフショットを少しばかりですが、載せさせていただきたいと思います。
初心者クラスの稽古の様子
シニアクラスのウエイトトレーニングの様子
シニアクラスのウエイトトレーニングの様子
ジュニア、シニアクラスの道場トレーニングの様子
おわりに
今回は、Summer Judo Campの初日に行った、PDCAサイクルに関するミーティング、アスリートミーティングについてお話しさせていただきました。このミーティングでは、上記のように業務サイクルの手法である、PDCAサイクルについてパワーポイントを用いて説明をしました。
このミーティングを行った所感としては、選手がそれぞれパワーポイントのスライドをスマホで写真に収めたり、メモを取ったりといった様子を見ることができて、意欲的にミーティングに参加してくれてとてもよかったと思います。
しかし、たった1回きりのミーティングでは理解や手法が浸透するのが難しいと思うので、今後も継続的に実施して行きたいと思います。
また、このPDCAサイクルのミーティングの後に行ったアスリートミーティングでは、いくつかのトピックに分けて話をしました。上記に説明したように、アスリートに必要な力・重要なこと、モチベーション維持する方法等についてパワーポイントを使用して説明をしました。
このミーティングを実施した背景として、ブータンの選手たちに自分を成長させるいくつかの手法や方法を知る機会にしてほしい、この手法を使用して今後モチベーションを上げ、パフォーマンスを向上していってほしい、コーチ陣にも指導方法の1つとして知識をつけてほしいという意味を込めて実施しました。
今回のミーティングを通じて、選手たちがそれぞれ自分たちの成し遂げたいこと、目指す目標に向き合えるきっかけにつながれば良いと思います。
今後も柔道の稽古やトレーニング以外にもこのような勉強会や自分たちについて考える時間を設けて行きたいと思います。
次回について〜
次回は、7月13日に開催しましたSummer Judo Campの様子やNational Summer Judo Tournament 2024、27日に開催しましたSummer Color Belt test 2024についてお話しさせていただきたいと思います。
次回の投稿も楽しみして待っていただけたら嬉しいです。
少しでもこの記事を見てブータン柔道について興味を持っていただいたり、応援してくださったりすると嬉しいです。
何かブータン柔道などについてご質問等がございましたら下記の私のインスタグラムへご連絡ください。
今回も最後までご覧いただきいただきありがとうございます。
Kadrin Chhe la(現地語ゾンカ)ありがとうございました。
Lok jae ge la(現地語ゾンカ)また会いましょう☺️
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