ブータン🇧🇹より【カディンチェ柔道日記!No.12】

JUDOsでは、海外で柔道指導者として活躍されている方々の声をお届けする「海外からの柔道指導だより」を掲載しています。

南アジアのブータン王国でJICA青年海外協力隊として活動をしている福井勇貴さんからの活動報告です!


カディンチェ柔道日記🇧🇹🥋

※Kadrin Chhe la(現地語 ゾンカ)ありがとう
ブータン柔道はこれまで多くの方々のご協力、支援があってここまで来ました。
そんな感謝の気持ちからタイトルコールはカディンチェとさせていただきました。

皆様、お世話になっております。

JICA海外協力隊としてブータンナショナルコーチをしています。福井 勇貴(ふくい ゆうき)です。

先日の5月19日から24日までアラブ首長国連邦のアブダビにて、アブダビ世界選手権大会が開催されていましたね。私もブータンから観戦していました。

男女混合団体戦の日本代表チームの優勝と7連覇にはとても感動しました。この勢いでパリオリンピックでも優勝を飾って欲しいですね。また、―90kg級で優勝された田嶋選手は同い年で同じ茨城県の大学出身ということで、田嶋選手のご活躍に私も勇気をもらうことができました。

今後、田嶋選手の赤ゼッケンでのご活躍を期待しています。

さて今回のテーマは前回の最後にお伝えしたように、4月30日に首都の柔道場から近隣の学校へ行き、柔道普及活動として、柔道デモンストレーションを実施させていただきました。今回はそちらのデモンストレーションについて裏側も含めてお話しさせて頂こうと思います。

柔道デモンストレーションAt Loselling School①

 

4月30日に首都の柔道場から徒歩10-15分程度のLoselling スクールにて柔道普及活動として、柔道デモンストレーションを実施しました。

以前にも、記載をさせていただきましたが、ブータンでは「柔道」はメジャーな競技ではありません。むしろマイナーな競技です。ブータンでは、サッカーがとても多くの人々に親しまれています。また、警察や軍隊などの公務員では、空手やテコンドー、ボクシングなどの格闘技が取り入れています。ということで、ただ柔道の練習を行なっていても、新規の競技者は増えません。

ですので、私たちは、定期的に柔道デモンストレーションを行なって、ブータンの人々に「柔道」を知ってもらい、興味を持ってもらおうと思い、普及活動を行っています。

今回、私たちがデモンストレーションを実施したのは、生徒数1000人以上が在籍する学校です。校庭に柔道マットを持参し全校生徒の皆さんがマットを囲むように座ってもらいました。

今回のデモンストレーションの練習期間が、Asian Judo Championships 2024と被っていたこともあり、アシスタントコーチがメインとなってデモンストレーションの内容構成、メンバー選出、練習の実施をしてくれました。

今回のデモンストレーションを行うにあたって、メンバーがなかなか全員揃わない、人数が揃わないことで練習が順調に進んでいないなどと色々問題がありましたが、アシスタントコーチの働きかけもあり、完璧な内容を作り上げることができました。

当日にもいくつかの問題は起こり、実際に現場に予定時間に到着すると、私たちがデモンストレーションできる時間はマットを準備する時間と合わせて約15分しかありませんでした。当初の予定では、演舞が20分弱で準備片付けで10分と合計約30分を用意すると聞いていましたがそれが当日に変わっていたようです。スケジュールが当日変更されるのは、ブータンでは日常茶飯事なので、焦ることはありませんでしたが、「The ブータンだなー」と思わず突っ込んでしまいました。

また、校庭の場所も平らでマットも問題なく敷けると聞いていましたが、その場を訪れると、ぼこぼこで大きな石が転がっている状況でとてもデモンストレーションに万全な状況とは言えない中でしたが、メンバー全員は、これまで用意してきた内容以上に完璧な内容を披露してくれました。

私たちのデモンストレーションを見ていた生徒の皆さんも大歓声と拍手喝采を演舞の最後に送ってくれました。参加したメンバーも大歓声と拍手喝采を目の前に少し照れくさそうに笑っている様子を遠くから見ることができて、私自身もとても嬉しくなりました。


倒立前転の様子

立技のセッションの様子

投げ技のセッションの様子

アクロバティックセッションの様子



セルフディフェンスセッションの様子


デモンストレーションに夢中の子供たち

柔道デモンストレーションAt Loselling School②

今回の私たちが実施したデモンストレーションの内容は、回転運動、受け身、アクロバティックな動きの披露、投げ技の披露、セルフディフェンスを行いました。

私たちがデモンストレーションを行う時に、いつもただデモンストレーションを行うのではなく、いくつかの意味を込めて行なわせていただいています。それは、柔道のデモンストレーションを通じて、ブータンの人々に少しでも「柔道」について知ってもらいたいと思うからです。

例えば、デモンストレーションでは、いつもセルフディフェンスを取り入れています。このセルフディフェンスも一人の女子柔道メンバーが大柄な男子選手を相手の力を利用して豪快に投げるという内容にしています。

その背景として伝えたいことは、小柄な女性でも鍛錬を重ねることで、大きな相手にも屈しないという意味を込めて行なっています。まさに、「柔よく剛を制す」ですね。

また、演舞の合間には、毎回必ず礼法を入れています。柔道にはリスペクトの精神が非常に重要で、技を覚えることと同じように、心を自分自身でコントロールする必要があります。そして、柔道は相手がいなければ練習することができません。相手のことを大切に思い、「ありがとう」「尊敬」の気持ちで、勝っても負けても丁寧に「礼」をする必要があるという意味を込めて行なっています。

約デモンストレーションを実施して1ヶ月がたちますが、約10人程度の新規柔道メンバーが加入してくれました。

Other Shot of BJA

今回もデモンストレーションでのブータン柔道協会のメンバーのオフショットを載せさせていただきたいと思います。

楽しんでいただけると嬉しいです。


ビデオ撮影をしてくれているナショナルアスリート


デモンストレーションに夢中の子供達


シニアメンバーのデモンストレーションの様子


投げ技のセッションの様子


柔道協会アシスタントコーチと事務員


セルフディフェンス演舞の様子

おわりに

今回は4月30日に近隣の学校で実施しました柔道デモンストレーションについてお話しさせていただきました。

私たちは、年に数回このような普及活動をさせていただいております。

その中でも力を入れて行なっているのが、今回実施したような近隣の学校へ行き柔道マットを持参して行うデモンストレーションです。今回も1000人を超える生徒が在籍する学校へ行きデモンストレーションをさせていただきました。

今回のデモンストレーションはナショナルチームのAsian Judo Championships2024の練習期間とかぶっていたこともあり、アシスタントコーチが1からデモンストレーションの内容作成、メンバー構成、その他諸々のマネジメント等を行なってくれました。

実際にデモンストレーション会場に到着すると、校庭がぼこぼこで石がたくさん転がっていたり、マットがきちんと敷けなかったりと色々な問題はありましたが、アシスタントコーチを含めたメンバーのみんなが全力でデモンストレーションを行い、120パーセントの出来を見せてくれました。約1000人の生徒の皆さんもデモンストレーションに夢中の様子でアクロバティックや投げ技のセッションの際には、大きな歓声と拍手をくれて参加したメンバーにとってもとても貴重な時間、経験になったことと思います。

また、今回のデモンストレーションを見た学校の生徒がデモンストレーション終了後の初心者クラスに約10人新規柔道メンバーとして加入してくれました。

現在では、通常の初心者クラスの練習参加人数が日に日に増加していき、平均で50人程度の大人数のクラスになってきていてとても賑わいを見せています。

その中でも、約15-20人が幼稚園生、小学1.2年生という割合になってきていて、ブータンでも低学年における柔道への需要が増えてきており、保護者の方々も周囲の口コミから子供たちの参加を後押しをしていただいています。

また、現在並行して、柔道場が併設されていています。私立学校のPelkhil Schoolで保健体育の時間に小学生から中学生対象に柔道も取り入れてくださっています。

その保健体育の時間で先日私は少し驚いたことがありました。

それは、その保健体育の柔道クラスが始まる少し前に初心者クラスに姉弟で参加を始めた幼稚園生の男の子が1人いるのですが(ブブ君)、ブブ君は柔道を始めて間もなかった時は、そこら辺をうろうろしていて、前転、後転もうまくできなくてすぐに泣いてしまういかにも幼稚園生という可愛らしい男の子でした。先日保健体育の柔道の時間にその男の子が在籍している幼稚園児クラスの授業があった際に、周りの子がうろうろしている中、一人きちんと整列をしていて、それだけではなく、他の子たちにも整列をするように声がけを先生と一緒になってしていました。また、それだけではなく、後転がうまくできなくて泣いていた彼が、その時には、後転をすらすらと4,5回連続でできるようになっていました。

それを見ていた私は、驚いたと同時に彼の頑張りを褒めたくて彼に、「後転できるようになってるじゃん!!すごいじゃん!頑張ったね!」と話すと、彼は「お姉ちゃんと一緒に実は家で後転の練習をしているんだ」と教えてくれました。

それを聞いて私は、とても嬉しくなったと共に、彼の今後の成長がより楽しみになりました。

以前にもお話しさせていただいたかと思いますが、ブータンの子供達や保護者の方々はとても柔道に興味を示してくれるのですが、その分その熱が冷めるのもとても早いのが現状です。

デモンストレーションや普及活動を実施した直後には、かなりの人数の生徒が柔道に参加してくれますが、3-4ヶ月後には半分程度の人数になるという大きな問題があります。私たちは、今後そのような文化の中でも子供達に継続的に柔道に興味を持ってもらい、継続的に柔道を続けてもらうような策や内容をコーチ陣で話し合って考えていきたいと思います。

また、ブータン柔道では「教育としての柔道」という面に重点を置いて指導をしています。まさに、先ほどお話しさせていただいた幼稚園生の彼のようなことですね。柔道を通じて規律や礼儀作法、思いやりを学べるということです。

まだ6歳程度の幼稚園生の彼が自らそれを体現してくれて、これこそが私たちが目指す「教育としての柔道」だなと改めて感じることができました。今後も、人数や技の技術はもちろんですが、「柔道としての教育」というものに重点を置きながら指導を続けていきたいと思います。

最後の章が今回少し長くなってしまったのですが、皆さんに私たちが目指すものというものをお伝えできたらと思い、長くなってしまいました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回は、先日5月20日に香港で開催されたAsian Judo Championships2024のフィードバックをシニアメンバー全員で行いました。そのフィードバックの様子と先日ブータン柔道メンバーのカテゴリーごとにミーティングを実施し、シニアメンバーに対して新たなことを実施しましたので、そちらについてお話しさせていただきたいと思います。

今後もブータン柔道を引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

次回について

次回は上記に記載のように、香港で開催されたAJCのフィードバック会の様子とカテゴリーごとに実施したミーティング等についてお話しさせていただきたいと思います。

次回の投稿も楽しみして待っていただけたら嬉しいです。

しでもこの記事を見てブータン柔道について興味を持っていただいたり、応援してくださったりすると嬉しいです。

何かブータン柔道などについてご質問等がございましたら下記の私のインスタグラムへご連絡ください。

今回も最後までご覧いただきいただきありがとうございます。

Kadrin Chhe la(現地語ゾンカ)ありがとうございました。

Lok jae ge la(現地語ゾンカ)また会いましょう☺️

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