10月22日、神奈川県立平塚ろう学校(平塚市)で柔道交流授業を行いました。
今回の授業は、来年11月に行われるデフリンピック東京大会を契機に、ろう学校に通う子どもたちに柔道を知ってもらおうと本法人が企画。2024年デフ柔道世界選手権優勝の佐藤正樹選手(ケイアイスター不動産)をゲスト講師に招き、志茂柔道クラブ(東京都北区)、NPO法人judo3.0の協力を得て開催しました。
平塚ろう学校から参加したのは中学部に通う12人(男子7、女子5)。
いずれも柔道は未経験でした。
授業は全部で2時間(2コマ)行い、1時間目を佐藤正樹選手が、2時間目を本法人がそれぞれ担当。東海大学の学生4人、国際柔道コーチングセミナーのため日本に滞在していた海外からの研修生6人とアシスタントコーチ1人も講師兼サポート役として参加しました。
1時間目。佐藤正樹選手が行ったのは、講話と技のデモンストレーション、アイスブレイクのための柔道衣綱引きでした。
講話では、佐藤選手が「柔道衣を着ればヒーローになれる」と思い、5歳のときに柔道を始めたことや、小学生のとき、地元の柔道大会で優勝したことをきっかけに友だちが増えたこと、柔道によって世界中に友だちができたことなど、子どもの頃から柔道とともにあった生活を紹介。
また、聞こえないことでつらいことを乗り越えた経験や、座右の銘の「不撓不屈」という言葉のこと、ポジティブにものごとをとらえる方法など、たくさんのエピソードを交えて、手話で伝えました。
柔道との出会いや魅力、困難を乗り越えてきた経験を語る佐藤正樹選手。生徒たちは真剣なまなざしで見つめていました
デフ柔道家の水掫瑞紀さん(東海大1年)と衣川暁さん(志茂柔道クラブ)も自己紹介
技のデモンストレーションでは衣川さんが受を担当。背負投や体落が披露されました
2時間目は国際交流と柔道体験タイムです。
研修生たちが手話とネームボードを使って自己紹介したのち、鈴木事務局長が本法人が行う柔道を通した国際交流について紹介。
その後、生徒の皆さんに柔道衣を着て、柔道体験をしてもらいました。
国際柔道コーチングセミナーに参加していた海外からの研修生も手話で自己紹介
得意技を披露するバルテックさん(ポーランド)。受はクキさん(コソボ)が担当しました
生徒の皆さんには柔道衣を着てもらいました。佐藤選手も帯を結ぶのをお手伝い
研修生たちの国はどーこだ? 地球儀ボールを使ってクイズを出すと生徒たちは即答! 事前学習でしっかり勉強していてくれました!(日本にも日の丸シールをつけておきました。JUDOsのロゴの隣にあるのは学校と東海大のある平塚市の市章)
生徒たちは柔道をするのは全員初めてでしたが、研修生や佐藤選手がお手本を見せると、すぐに要点を見抜き、見よう見まねで技をかけることができます。
その見る力の高さに、研修生たちも感心しきりでした。
その後は質問タイムで交流し、佐藤選手、生徒代表、本法人からあいさつをして終了となりました。
平塚ろう学校の皆さん、ありがとうございました!!
平塚ろう学校の皆さんの感想
・外国人が多くてびっくりしましたが、外国人とコミュニケーションができてうれしかったです。柔道は難しかったけど楽しかったです。
・佐藤選手の講演を聞いて、デフ柔道を知ることができました。受け身をしっかりできてよかったです。今回の柔道の授業はとても楽しかったです。
・初めて柔道をやりました。いろいろ体験できてとても楽しかったです。またやりたいです。
・友達が強かったです。佐藤選手を中心に写真も撮れてよかったです。楽しかったです。
・初めて柔道を体験して、技を教えてもらいました。少し成功できました。でも、技の種類が100以上あると聞いてとてもおどろきました。
・講師の先生たちがとてもわかりやすく教えてくださって、やり方がわかってよかったです。柔道の礼儀なども身につけられたら良いなと思いました。
・柔道をやるのが始めてなので緊張しましたが、やり方などを覚えることができて、なかなかできない経験ができて楽しかったです。
教員
1時間半という短い時間でしたが、デフリンピック日本代表の佐藤選手の講演、デフ選手、外国人選手との交流、柔道体験など、普段の授業では経験できない貴重な時間となりました。柔道と聞いて、はじめは「怖い」「痛そう」という印象を持っている生徒も多かったですが、講師の方々の温かい雰囲気作りで、皆集中しながらも笑顔で授業を受けることができました。お忙しい中、準備段階から内容を練っていただき感謝申しあげます。ぜひ来年度も実施していただきたいです。
サポート柔道家の感想
■衣川暁(志茂柔道クラブ)
子どもが好きで、今まで子どもに関わることはたくさんしてきましたが、柔道を通しては初めての経験でした。恥ずかしそうにしながら興味津々な目で柔道をする子どもたちの姿、佐藤選手のパワーある技の披露に驚く姿がとてもかわいかったです。自分も学生のときにもこういう機会があったら良かったのに、と思いました。貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。
■岩本莉樹(東海大学法律学科4年)
自分がいままで参加してきた柔道体験教室のボランティアとは違い、耳が不自由な子どもたちが対象だったため不安もありましたが、言葉を交わさずともジェスチャーを用いて技を教えることができる柔道は素晴らしいと改めて感じました。また、生徒のみなさんは、見たものを模倣したり、吸収・再現する力がとても高く、多くの可能性を秘めていると感じました。この体験は、私たちにとっても、子どもたちにとっても新鮮な体験であったと思います。
■野地鴻介(東海大教養学部4年)
平塚ろう学校の生徒が柔道を体験して、笑顔になってくれるのを見てとてもうれしい気持ちになりました。柔道を通していろんな人とふれあえる環境がもっと増えるといいなと思いました。
■桃園愛華(東海大体育学部2年)
今回参加してみて、柔道は音が聞こえなくても、楽しむことができるんだと感じました。パラ柔道やID柔道も見たことがありますが、デフ柔道は健常者柔道に近いと感じました。柔道衣の擦れる音や審判の声などは聞こえませんが、視覚的に情報を得ていることがわかりました。デフ柔道やID柔道の普及を願っています!
■水掫瑞紀(東海大体育学部1年)
今回の交流授業に参加したことで、ろう学校の授業の様子を知ることができたうえ、生徒たちとのやり取りを体験することができました。また、柔道の技を1から上手く伝えるのはすごく難しくて、自分はまだまだ柔道の技術が足りないと実感しました。教える側に立ったことで、教師や監督の役割の大変さとやりがいを体験することができました。