NPO法人JUDOsでは、2020年2月20日〜3月13日、アメリカに中矢力氏(ALSOK/2011、2014年世界選手権73kg級優勝)を派遣いたしました。中矢氏は、主にメリーランド州・アナポリスにあるアメリカ海軍士官学校と、ワシントンD.C.のジョージタウン大学ワシントン柔道クラブで指導を行いました。
この派遣事業は、NPO法人柔道教育ソリダリティー(2019年5月解散)が、2011年の東日本大震災の際のアメリカ軍による災害救助・復興支援活動「トモダチ作戦」への返礼としてスタートし、本法人が引き継いだものです。
(新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、中矢氏は帰国後、2週間の自宅待機を行いました)
中矢氏からの報告書を掲載いたします。
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今回、私が柔道指導を行ったのはメリーランド州・アナポリスにあるアメリカ海軍士官学校とワシントン柔道クラブの2つの道場です。
海軍士官学校のほとんどの学生が初心者で、柔道の技術はそれほど上手ではありませんでしたが、生徒たちの柔道に取り組む姿勢、強くなりたい、うまくなりたいという意欲がすごく伝わりってきました。技術指導の際も積極的に質問する姿があり、指導するたびにうまくなっていることがとても嬉しく、夢中で指導しました。
ワシントン柔道クラブには多国籍の選手が在籍しています。中には母国のナショナルチームで試合に出ていた経験のある人もいてレベルが少し高かったので、より実戦的な指導を行うことにしました。私のことを知っている選手もいて試合で使っていた技を紹介してほしいなど、リクエストもたくさんあり、とても積極的だったので私も教えることのできる範囲で応えました。印象に残ったのは、基礎がしっかりできている分、指導した技をすぐに吸収し、実戦稽古で試している選手がたくさんいたことです。日本でも技の指導をすることがありますが、実践稽古ですぐに技を使うな姿をほとんど見たことがなく、そのアグレッシブさはすごいと思いました。
このように、どちらもとても積極的で柔道への関心の高さを感じましたが、ともに道場には畳が無く、レスリング用のようなマットを代用していたことがとても気になりました。マットとマットの間にも隙間が空いているような状態で安全性が欠けているとも思ったのですが、金銭的なこともあり畳を敷くことができないとのことでした。私は、このような状態でも柔道を一生懸命やっている選手たちがいることを目の当たりにし、日本はとても恵まれているということ、今後は環境の素晴らしさをかみしめながら、練習を行っていかなければといけないと考えさせられました。
滞在中は、アメリカの歴史や文化を積極的に学んできました。航空宇宙博物館や国立自然博物館などを訪れましたが、私が最も心に残ったのはホロコースト記念博物館でした。ナチスが行った残酷な行為が写真やムービーで展示されており、心が痛くなるものばかりでしたが、私たち現代人はこの様な歴史があったことを忘れてはいけない、再び繰り返してはいけないと強く感じました。
今回、3週間という限られた時間でしたが、たくさんのことを勉強することができ、指導者としての幅が広がったと思います。この経験を生かし、今後の柔道人生に活かして行けるように日々精進して行きたいと考えております。
最後に、アメリカ柔道指導において古森先生、スーザンさん、小野さんにはとてもお世話になり、大変ありがとうございました。指導方法やアメリカの歴史や文化など私が知らないことやわからないことを事細かく教えていただき、充実した3週間でした。今後、アメリカで柔道指導をする機会があれば、またご一緒させていただけたら幸いです。
中矢 力
【海軍士官学校での指導の様子】
【ワシントン柔道クラブの皆さんと】